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ジャン=ポール・ゴルチエ

【ジャン=ポール ゴルチエ】フルール ド マル(フランシス・クルジャン)

ジャン=ポール・ゴルチエ
©JeanPaul Gaultier
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フルール ド マル

原名:Fleur du Mâle
種類:オード・トワレ
ブランド:ジャン=ポール・ゴルチエ
調香師:フランシス・クルジャン
発表年:2007年
対象性別:男性
価格:日本未発売

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オレンジ・ブロッサムの爆発から生み出された新しいフゼア。

アンドレス・ベレンコソ ©JeanPaul Gaultier

1995年に、ジャン=ポール・ゴルチエの「ル マル」により、鮮烈なデビューを果たしたフランシス・クルジャンが、ゴルチエの二番目のメンズ・フレグランスとして調香した「フルール ド マル」は、2007年4月に発売されました。

この香りは、1999年1月から2006年12月にかけてゴルチエのパルファム部門の最高責任者だったレア・ヴィニャル・ケネディ(2013年7月からカルティエのフレグランス部門の最高責任者となる)の指揮により、「男性が女性のように美容やファッションを楽しんで悪いわけがない」という意図のもと生み出されました。

香水名を日本語に訳すと〝男の花〟。その香水名はボードレールの「悪の華(Les Fleurs du mal)」から着想を得ました。

メンズ・フレグランスの従来の常識を打ち破るこの香りは、伝統的なフゼアの定番であるゼラニウムやラベンダーではなく、オレンジ・ブロッサムのオーバードーズにより生み出されたアロマティック・フゼアの香りです。それは男らしさではなく、男にしか持ち得ない優雅さと淫靡さを立ち上らせる香りです。

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〝どんなに騙されてもあなたを信じたい〟と思わせる『惡の華の香り』

アンドレス・ベレンコソ

これが朝倉という男だ。こんな男に女が惚れたら、最後に待っているのは恐ろしいほどの不幸だ。

『蘇える金狼』大藪春彦

恐らく世界中の女たちが、〝どんなに騙されてもあなたを信じたい〟と思わせる男たちを生み出してきたため、〝世の中から抹殺されてしまった〟この香りは、男性的な魅力で女性を虜にするのではなく、タカラヅカの男役のような、女性の持つ男性的な華やかな魅力を突き詰めた先にある、しなやかな獣のようなアニマリックさに包まれていく香りです。

明るく華やかに輝くオレンジ・ブロッサムとネロリが、苦みを泡立たせるグリーンなプチグレンと溶け合いながら、野獣の咆哮のように素肌に向かって好き進んでいくような感覚からこの香りははじまります。その圧倒的な破壊力の前に、このまま打ち滅ぼされていもいいと覆ってしまう程に、淫靡なる白い花の酔わせるクリーミーな甘さに身も心も溺れていくようです。

やがて、だんだんとキリっとした涼しげなカモミールとバジルの甘い石鹸のようなハーブが、絶妙な塩梅に、獣のような白い花と、決してひとまとめになることなく、サンダルウッドとホイップクリームを加えてゆきながら、物憂げで中毒性のある官能的なハーモニーを奏でてくれます。

通常、ネロリとカモミールを混ぜるととんでもない悪臭になるのですが、一流の魔導士(=クルジャン)にかかれば、どれだけ〝恐るべき香り〟を生み出してしまうか、身をもって知ることが出来るでしょう。

世界でもっとも女性の理性を奪い、男性が男性への愛に目覚める現象を生み出した〝抑えきれない性への欲望を掻き立てる香り=エクスタシーを求める香り〟です。恐らく、この香りの廃盤は、〝地球を滅ぼしかねない水〟として国連の総会により全会一致で決定されたことなのでしょう。

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白い服の男ほど、真っ黒な男はいない。

『アメリカン・ビューティー』(1999)のミーナ・スヴァーリ。

大理石のようなアンドロギュヌスな男性の上半身のボディーラインを模った白一色のボトル・デザインは、当時メンズ・フレグランスとしてはかなり珍しいカラーチョイスでした。

白い花がぎっしり詰まったミルク色のバスタブに浸かる夢のように美しい男性の広告キャンペーンは、映画『アメリカン・ビューティー』(1999)でミーナ・スヴァーリがバラのバスタブに浸かるシーンから、ゴルチエがインスパイアされました。

スペイン出身のファッション・モデル、アンドレス・ベレンコソ(1978-、カイリー・ミノーグの元カレ)をモデルに、ジャン・バプティスト・モンディーノにより撮影されました。

タニア・サンチェスは『世界香水ガイド』で、「フルール ド マル」を「パウダリーフゼア」と呼び、「陽気で清潔なパウダリーの男性用香水。「アイリッシュ スプリング」の石鹸や赤ちゃんのお尻、シェービングクリームの匂いがする。バスルームの儀式がまざまざと蘇ってきそうな香りで、今にも白いタイルや曇ったミラーが見えてきそう。パロディーみたいに感じるけれど、まあまあうまくいっている。オリジナルの「ル マル」同様に、男性のトルソーを模したボトル。見るからにゲイか、腰の据わったストレート、どちらかに客層を絞るつもりらしい。」と3つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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香水データ

香水名:フルール ド マル
原名:Fleur du Mâle
種類:オード・トワレ
ブランド:ジャン=ポール・ゴルチエ
調香師:フランシス・クルジャン
発表年:2007年
対象性別:男性
価格:日本未発売


トップノート:プチグレン、オレンジ・ブロッサム
ミドルノート:ネロリ
ラストノート:カモミール、バジル、シダーウッド、クマリン