ブルー ノッテ
原名:BLV Notte Pour Femme
種類:オード・パルファム
ブランド:ブルガリ
調香師:アルベルト・モリヤス
発表年:2004年(現在廃盤)
対象性別:女性
価格:不明
ノクターン(夜想曲)を連想させる大人の世界の香り
2000年に、ブルガリとアルベルト・モリヤスがはじめてランデブーを果たした香り「ブルガリ ブルー」のフランカーとして2004年に発売されたのが「ブルー ノッテ」でした。〝ノッテ〟とはイタリア語で夜の意味です。
ブルーのテーマである「予期せぬコントラスト」を〝夜〟を通して表現したこの香りは、21世紀の〝お酒の香り〟というトレンドを先駆けした香りでした(発売当時「オムニア」と同様、早すぎた香りでした)。
ただ〝甘い〟だけではなく、〝深み〟があって少しミステリアスであり、ノクターン(夜想曲)という言葉が脳裏を掠める〝大人の世界の香り〟でした。
ウォッカ × ダークチョコ × アイリスの香り
官能的なブルガリのブルー・ナイトは、キンキンに冷えたウォッカと二種類のジンジャーを中心にはじまります。そのうちのひとつガランガルは、タイでトムヤンクンやグリーンカレーに使われるものです。
スプレーをプッシュすると、夕陽のようなベルガモットとジューシーなマンダリンオレンジが現れ、すぐに夜の帳に消えてゆきます。そして、酔わせるような冷えたウォッカが、ジンジャーに温められながら登場するのです。
やがて、ウォッカは蒸発するように消えてゆき、代わりに芳醇なカカオが香るダークチョコレートの苦みが、気品溢れるパウダリーなアイリスと共に現れます。そこにアニスとラブダナムによる独特な甘さと、タバコフラワーのスモーキーなアクセントも加わってゆきます。
至福のミドルノートです。そして、だんだんとクリーミーなサンダルウッドとミステリアスなアンバーの甘い芳香に全体が包み込まれてゆき、夜に肌が上気して、汗ばみ光沢を持つように、温かくも官能的な余韻を残してくれるのです。
この香りの誕生により、ブルガリの香水は、遂にブルガリの宝石が生み出す官能性に到達することが出来たと言い切っても差し支えないでしょう。ウォッカ、ダークチョコレート、アイリスという組み合わせでありながらソーピィーさもしっかりと感じさせる、廃盤となった今では唯一無二の幻の名香です。
もしかしたら2005年に発売されたオリヴィエ・ポルジュによるアイリスとカカオの香り「ディオール オム」は、この香りの影響を受けたのかもしれません。
キャンペーン・モデルは、アメリカのファッションモデルであるミッシー・レイダー(1978-)が起用されました。
カカオつながりで『アトラップ レーヴ』との比較
テーマは夜。そして、カカオが使用されているという共通点を持つルイ・ヴィトンの「アトラップ レーヴ」と比較してみましょう。
「ブルー ノッテ」は、パーティ会場からこっそりと抜け出し、男性と女性が二人っきりで月夜の下で逢引きするような香りです。
それはまるで夜に燃える灯火(ともしび)やキャンドルの灯り、月明かりというイメージがピッタリで、色でたとえるとパープル(情熱のレッドと冷静のブルーの間の色)です。
一方、「アトラップ レーヴ」は〝大人だけに許された香り〟的な要素はなく、むしろ夢を捨てずに星に願いをかけるピュアな女性の心を表現したような香りです。
こちらは色でたとえると深みのあるピンクです。一見すると、どちらも同じような色に見えるのですが、香りの生み出す世界観が全く違うというのが非常に興味深いです。
香水データ
香水名:ブルー ノッテ
原名:BLV Notte Pour Femme
種類:オード・パルファム
ブランド:ブルガリ
調香師:アルベルト・モリヤス
発表年:2004年(現在廃盤)
対象性別:女性
価格:不明
トップノート:ジンジャー、ガランガル、アニス、ベルガモット、マンダリンオレンジ
ミドルノート:ウォッカ、アイリス、ニセアカシア、亜麻(タバコフラワー)
ラストノート:ダークチョコレート、インセンス、ムスク、サンダルウッド、アンバー、ラブダナム