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【グッチ】グッチ プールオム(ミシェル・アルメラック)

グッチ
©GUCCI
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グッチ プールオム

原名:Gucci pour Homme
種類:オード・トワレ
ブランド:グッチ
調香師:ミシェル・アルメラック
発表年:2003年
対象性別:男性
価格:不明

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1976年の名香に挑んだトム・フォードの最後の挑戦。

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1921年に創業されたグッチが初めて生み出したメンズ・フレグランスは、1976年にギ・ロベールにより調香された「グッチ プールオム」でした。皮革製品からはじまったグッチを象徴するレザーシプレの名香です。

この香りを創造した7年後の1983年にギ・ロベールはオマーンのカーブース・ビン・サイード国王(1940-2020)に招かれ、オマーンの香りの伝統を反映した独自の香りの創造を依頼され、「アムアージュ(現在のアムアージュ ゴールド)」を生み出しました。

そんなグッチのメンズ・フレグランスの名香が、当時のグッチのクリエイティブ・ディレクターのトム・フォードの指揮の下、2003年に発売された「グッチ プールオム」により、21世紀に新たに蘇りました。ミシェル・アルメラックにより調香されました(日本では2004年1月23日より発売)。

ちなみに2007年に「グッチ プールオム2」が、カリン・デュブルイユ・セレーニにより調香され、「グッチ プールオム」は廃盤となりました。こちらは2005年に、トム・フォードからクリエイティブ・ディレクターを引き継いだフリーダ・ジャンニーニの精神が注ぎ込まれた香りです。

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『トム フォード期グッチ帝国』の〝ポルノシック〟を体現する香り

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フランス人が「プルミエ・ドゥグレ(premier degré)」と呼ぶ、〝当たり前でありながら美しい〟香りです。アルメラックは、ボンド・ナンバーナインのポストモダニズム「セント オブ ピース」から、グッチのゴージャスでジェット燃料のような傑作「ラッシュ」まで、あらゆる香りを調合する多作なフランス人である。

しかし、「グッチ プールオム」で彼が作ったのは……シダーです。それだ。「グッチ プールオム」は、肌の上で持続し、きれいに拡散し、ホームセンターのような狡猾さで誘惑する、優れたシダーである。

もしレストレーション・ハードウェア(アメリカの大手ホームセンター)が賢ければ、「グッチ プールオム」をエアダクトに設置し、すべての店舗が魅惑的な生きた香りを放つことでしょう。このようなシンプルさを生み出すには、才能が必要です。「グッチ プールオム」は完璧なプルミエ・ドゥグレです。

チャンドラー・バール(ニューヨーク・タイムズ)

2003年版の「グッチ プールオム」は、1990年にグッチのレディースウェアのデザインスタッフからはじまり、1994年にクリエイティブ・ディレクターに昇格したトム・フォードが、2004年4月に退任する寸前に発表した香りです。

それはまさにトム・フォード自身がこの香りについて宣言しているように〝洗練されたテーラードスーツに身を包み、時代を越えた自信に満ち溢れている紳士のためのエッセンス〟が凝縮されており、『トム・フォード期グッチ帝国』のメンズ・スタイルの集大成である〝ポルノシック〟が体現されています。

だからこそ、この香りから、ブラック&ホワイト、黄金の輝き、女性への絶対的な崇拝、グラマラス、ルキノ・ヴィスコンティへの愛、イタリアン・オペラ、『ゴッドファーザー』的な世界観、モニカ・ベルッチの隣に立つに相応しい男、涼しい顔で難関を切り抜けるカッコよさ、抑え切れない官能性。そういった〝イタリア男にとっての栄光〟のすべてを感じ取ることが出来るのです。

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流行に流されることのない時代を越えた男の香り

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パピルス ウード」は、私の父が作った「グッチ プールオム」を連想させるかもしれませんね。でも、これは全く違うフォーミュラです。

多くの人々が今も「グッチ プールオム」をまるで宗教のように崇拝してくれていることを私も父も常に感じています。

ベンジャミン・アルメラック(ミシェルの息子でありパルル モア ドゥ パルファムの創設者)

イタリアの太陽に愛された柑橘類(ベルガモット、レモン、プチグレン)とハーブ類(ミント、アルテミシア、バジル、ラベンダー)がホワイトペッパーとジンジャーの渦巻く星雲から弾き出されるように、華やかに広がる酸味からこの香りははじまります。

そして、あいつはやって来るのです。シダーウッドとインセンスの到来です。この二つの香りを軸に、スパイシー(ピンクペッパー、カーネーション)、ウッディ(サンダルウッド、パピルスウッド)、ハーバル(パチョリ、オリスルート、ゼラニウム)といった男を輝かせるそれぞれの要素に、インドールの効いたジャスミンが、抗し難い男の色気を〝静かに〟解き放つのです。

やがて、スモーキーなラブダナムとアンバリーバニラの絶妙なブレンドが生み出す酔わせるようなラム酒と樹脂とレザーの余韻に、オークモスとトンカビーンがうっとりするようなシプレとオリエンタルのよろめきを加えてくれるのです。

スモーキーウッディスパイシーでありながら、強い自己愛で生きている男ではないこの香り。それは太陽に愛されてきた男が、あなたに手を差し伸べた時、その温かな男の優雅さに、あなたはうっとりするように吸い込まれていく…そんな包容力を与えてくれる〝優雅なる男たちの香り〟です。

実は、父は3つの「グッチ プールオム」を作っていて、1つ目はグッチのために作ったもの、2つ目はベントレーのために作った「ベントレー フォーメン アブソリュ」、そして3つ目は「パピルス ウード」です。

最初の2つは今では廃盤です。私たちのフォーミュラでは、「パピルス ウード」はインセンスの量が少し少なく、ウッディムスキーで、より暖かく、心地よい香りです。

ベンジャミン・アルメラック

ちなみに2020年に、ベンジャミンが、ミシェルに再確認したところ「グッチ プールオム」と「ベントレー フォーメン アブソリュ」は、まったく同じフォーミュラであると言われたと言っています。

ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「グッチ プールオム」を「インセンス アンバー」と呼び、「まずは、いいお知らせ。香りはすばらしいし、瓶も素敵だ。次に悲しいお知らせ。香りも瓶も独創性に欠けている。あのすばらしい「ヨージオム」の処方に、不愉快なほど似ている。冷たさと温かさのバランスも、ラムとミント、アニス風の香りの存在も似ている。」

「瓶は馬車メーカーのピニンファリーナのデザインだが、露骨なほど「ディオールオム」にそっくり。それに加えてこの名前だ、誰もが疑問に思わずにはいられない。」と4つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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香水データ

香水名:グッチ プールオム
原名:Gucci pour Homme
種類:オード・トワレ
ブランド:グッチ
調香師:ミシェル・アルメラック
発表年:2003年
対象性別:男性
価格:不明


トップノート:パピルス、ジンジャー、アルテミシア、バジル、ベルガモット、ラベンダー、レモン、プチグレン
ミドルノート:シダー、ピンクペッパー、サンダルウッド、パチョリ、オリスルート、カーネーション、ゼラニウム、ジャスミン
ラストノート:インセンス、レザー、アンバー、ベチバー、バニラ、ラブダナム、オークモス、トンカビーン、ムスク、セージ