サルバドール ダリ
原名:Salvador Dali
種類:オード・トワレ
ブランド:サルバドール・ダリ
調香師:アルベルト・モリヤス
発表年:1983年
対象性別:女性
価格:日本発売終了
皇帝は生まれながらにして皇帝なのだ!
アルベルト・モリヤス(1950-)を知らずして、フレグランスを語ることは何一つ許されないと言っても過言ではありません。それくらいモリヤス様は、あらゆるブランドのフレグランスを調香しています。そんな彼の香りの特色を一言で表わすと、〝今流行している香り〟を作り出すことが出来るところにあります。
つまりは、90年代以降のモリヤス様の香りを追いかけていけば、時代ごとの香調のトレンドが分かるのです。まさにカメレオンのように彼は変幻自在にその時流行しているフレグランスを、最低ランクから最高ランクのものまで、生み出し続けてきた人なのです。
そして、いまだに第一線で活躍する歴戦の兵です。だからこそ、業界人は彼のことを敬意を込めて〝皇帝〟と呼ぶのです。
そして、フレグランスに興味を持ったばかりの人は「またモリヤスか」とうんざりし、フレグランスをより深く知るにつれてその偉大さを知るようになり「モリヤス巡礼の旅」へとはまり込むようになるのです。
モリヤスを語るときに最も相応しい言葉は、「本気のモリヤス」と「本気ではないモリヤス」という表現です。そして、1983年に生み出されたこの「サルバドール ダリ」は、彼の出世作であり、間違いなく最初の「本気のモリヤス」を体感することが出来る香りなのです。
サルバドール・ダリの最初の香り
五感の中で、嗅覚こそが不滅を伝える最良の感覚であることは疑う余地がない。
サルバドール・ダリ
1982年に最愛の女性ガラ・エリュアールを失ったサルバドール・ダリ(1904-1989)は、もはや何も創造する意欲を失い、スペインの自分の城に引き篭もるようになりました。
コフィンラグゼ社は、そんなダリに目をつけ、1983年に、5000本限定の香水(クリスタルボトル)を出してみないかと持ちかけたのでした。かくして生み出されたこの香りは、アルベルト・モリヤスにより調香され、大いに話題を呼びました。
そして、ダリは同年5月に最後の絵を描き筆を置きました。その2年後の1985年にガラス・ボトルでこの香りは一般販売され、大成功を収めました。最愛の女性ガラに捧げたフレグランスであり、彼女が最も好んだジャスミンとローズがふんだんに使用されたオリエンタルシプレーの香りです。
シャネルの香水のように、アルデハイドの爆発と共にはじまるこの香りは、とても良くブレンドされた(個々の香料を判別できなくなるほど)フローラルの魔術を体感することが出来る香りです。
オリエンタルの死刑執行人が生み出したオリエンタル香水
ダリの妻でありミューズでもあったガラのことをダリは狂おしいほど愛していました。そんな彼女をイメージした香りを生み出すために1941年から1970年の間に作られたダリのジュエリー・コレクションからアイデアを紡ぎ出してゆきました。
私は、ダリの豪華で卓越した作品を、彼の魂を探求する貴重な香りに変換するために、特別な宝石のように、香水で最も希少な原料を選びました。
アルベルト・モリヤス
ベルガモットの苦味と、バジルとクローブのスパイシーさ、さらにはグリーンノートがアルデハイドによって温かみのあるフレッシュスパイシーな高級石鹸のような香りで包まれていくようにしてこの香りははじまります。ここにオークモスが香り全体に魔法をかけるように浸透してゆきます。
やがて、クリーミーなアルデハイドにチューベローズが遭遇し、オレンジ・ブロッサム、百合、スズランといった華やかなフローラルの中から、インドールの効いたジャスミンとローズ、そして、水仙とミモザの香りが突出して現われます。
何よりも恐ろしいのは、アルデハイドを凌駕するフローラルブーケのブレンドの美しさです。
時が経つごとに、クリーミーなサンダルウッドとバルサミックなミルラとインセンス、パウダリーなバニラとベンゾインが、イエローフローラル(水仙とミモザ)を太陽に変えていくように、うっとりと昇天させるようなミステリアスなオリエンタル・シプレの余韻で包み込んでくれます。
この香りを嗅ぐとアルベルト・モリヤスという調香師が、しっかりとしたオリエンタルの香りを生み出せることが良く分かります。そして、そんな〝完璧なオリエンタル〟を作ることが出来る人だったからこそ、カルバン・クラインの「シーケーワン」(1994)という、オリエンタル香水の死刑執行人を生み出すことが出来たのでした。
パロマ・ピカソの「パロマ ピカソ」とよく比較される香りです。
ボトル・デザインは、ダリが1981年に描いた絵画「クニドスのアフロディテの出現」の女神アフロディテの肉感的な唇と立派な鼻からインスパイアされたものでした。
以後、五感を代表する身体のパーツである唇と鼻はダリの香水のシンボルになりました。
ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「サルバドール ダリ」を「過敏なフローラル」と呼び、「1983年、偉大なるアルベルト・モリヤスが初期に作ったこの作品は、大柄でハンサムな、がっちりしたフローラルシプレ。アムアージュの「ゴールド」と「バラ ベルサイユ」の間にあるようなものだが、前者の洗練された豊かな風合いや後者の印象的な構造は、この香水にはない。それでもとてもいい。」と4つ星(5段階評価)の評価をつけています。
香水データ
香水名:サルバドール ダリ
原名:Salvador Dali
種類:オード・トワレ
ブランド:サルバドール・ダリ
調香師:アルベルト・モリヤス
発表年:1983年
対象性別:女性
価格:日本発売終了
トップノート:アルデハイド、フルーツノート、グリーンノート、マンダリン・オレンジ、バジル、ベルガモット、インセンス、クローブ
ミドルノート:チューベローズ、オレンジ・ブロッサム、百合、オリスルート、ジャスミン、スズラン、ローズ、水仙、ミモザ
ラストノート:サンダルウッド、アンバー、ムスク、ベンゾイン、バニラ、シダー、ミルラ、パチョリ、オークモス