ヘッドハンター達の暗躍
2020年の東京オリンピックに向けて、全国主要都市の百貨店において、ラグジュアリーブランドの店舗拡張及び新設工事が行われております。
ますます洗練され豪華になる販売スペース。しかし、私たちは一つ大切なことを忘れています。中で働く販売員たちに対するバージョンアップです。
外面だけ豪華で中身は薄っぺらというのは大変惨めなものです。現状においてそれを強く感じるブランドの御三家は、
- グッチ
- エルメス
- シャネル
です。恐らく販売員が不足しているのでしょう。ルイ・ヴィトンもかなり危ないラインに今立たされています。
そして、そういった環境の中で、益々ヘッドハンティング・エージェント達が、暗躍しています。彼らは今では、直接営業中の店舗に店長指名で電話をして引き抜き交渉の電話をしたり、ミステリー・ショッパー方式で販売員の実力を見定めて後日引き抜き交渉を行ったりしています。そして、そういったエージェントからの紹介にどのラグジュアリー・ブランドも依存しているので、実質無法地帯になっています。
理想と現実の狭間で・・・・
しかし、ほとんどの販売員たちが、エージェントを経由し、転職した果てに、理想の現実を見出すことはありません。ほぼ90%の販売員は、失望感とあきらめの感情の中で生きています。
販売員が転々とする状況に対して、多くのラグジュアリー・ブランドがひとつの明確なる対策を打ち出しています。それは、自社の製品について、本質的な部分は教えないようにするという姿勢です。どうしてこの商品は、この価格で販売するだけの価値があるのか?という理由を今ではほとんどの販売員は知りません。それもこれも、全ては、他ブランドに流れていく販売員に対する対策なのです。
だからこそどれだけ良質な商品を作っていようとも、多くの販売員の感情の根底には、「よくこんな高いものを購入するな」という思いが存在するのです。この感情が、豪華な売り場での冷めた販売員の空気(もしくは空元気)を生み出しているのです。
つまり、驚異的な人員不足の中、ラグジュアリー・ブランドの商品を販売するだけのレベルに達していない多くの人々が店頭に立ち、更に、彼らは、ろくな研修も受けておらず、商品に対する知識もおろそかな中で、日々店頭に立っているのです。そして、そんな後輩たちをケアしていかないといけないベテラン販売員たちは、彼らの仕事に対する姿勢の幼稚さを目の当たりにして、
「私は、こういう仕事をしたいために、ラグジュアリー・ブランドの販売員になったのだろうか?」
という挫折感に苛まれるのです。
しかし、私たちは重要なことを忘れてやしないだろうか?ブランド力がそもそも高まったのは、上質な商品を作っているからであり、だからこそブランド料金を乗せることも許されるのです。その流れを販売員が正確に理解しておくことは、この稼業に従事するものにとってマストなことではないでしょうか?
もし、以下の三点を知らずに、そのラグジュアリー・ブランドの商品を販売することが出来たならば、それは詐欺に等しい行為ではないでしょうか?
- ブランドの歴史
- ファッション史
- モノつくりの工程
だからこそ、ラグジュアリー・ブランドは、店舗の内装にお金をかける前に、販売員の内装にお金をかけるべきなのです。それは、販売員に対して、明るい未来を提示していくことが必要だということです。
これは、ほとんど表立って言わないことなのですが、ラグジュアリー・ブランドで販売員として働く人々の間での常識がひとつあります。
ラグジュアリー・ファッション・ブランドの男性販売員の多くが、未来がないと考え、20代半ばから30代前半にかけて、ハイジュエリーか高級時計ブランドへと転職していくという流れです。つまりは、アパレルやブランド小物の知識が豊富な優秀な販売員ほど、早々にこの業界を見限り転職していくのです。