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セリーヌ

【セリーヌ】サン ジェルマン デ プレ(エディ・スリマン)

セリーヌ
©Celine
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サン ジェルマン デ プレ

原名:Saint-Germain-Des-Pres
種類:オード・パルファム
ブランド:セリーヌ
調香師:不明
発表年:2019年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/39,600円、200ml/60,500円
公式ホームページ:セリーヌ

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懐かしさと新鮮さが見事に同居する香り

私が20代の頃愛したリュクサンブール公園の香りをボトルに詰め込みました。

エディ・スリマン

2019年11月15日に、セリーヌはエディ・スリマン体制に入り、はじめてのフレグランス・コレクション「セリーヌ オート パフューマリー コレクション」として、9種類の新作フレグランスを発表しました。

そのうちのひとつが「サン ジェルマン デ プレ」です。〝サン ジェルマン デ プレ〟とは、パリで最古の教会であるサンジェルマン・デ・プレ教会を中心にサンジェルマン大通りに沿って、かつて文豪、哲学者、歌手、俳優が集まるカフェやナイトクラブが点在し、文化的教養の高さを示す聖地として崇められた地区でした。

今では、ラグジュアリー・ブランドの店舗が並ぶようになり、古さと新しさを同時に感じることが出来る、ファッション感度と文化的教養の高さが見事に同居した〝パリの真髄〟と呼ぶべき場所になっています。

エディ・スリマン(1968-)にとって、パリ政治学院とエコール・ド・ルーブル(ルーブル美術学校)に通っていた80年代後半から90年代前半の20代において、サンジェルマン・デ・プレはお気に入りの場所でした。特にカフェに座りながら、近くのソルボンヌやグランゼコールから出てくる学生たちの人間模様をぼんやり眺める時間の過ごすことを好んでいました。

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ひと吹きで『憧れのパリ』を呼び覚ます香り

そして、私はこの香りからマルセル・カルネの映画『危険な曲り角(Les tricheurs)』(1958)の中で、サンジェルマン・デ・プレを舞台に酒とセックスとパーティに明け暮れる10代後半の若者たち(パリの太陽族)を思い浮かべるのです。

エディ・スリマン

『危険な曲り角』とは、50年代後半に、フランスの裕福な家庭に生まれた若者たちの非行の現状を、軽妙なモダンジャズと共に描いた作品です。

本当はお互いのことが好きなのに、正直になれず、嘘が嘘を呼び、結果的には、良からぬことをして手に入れた憧れの白いジャガーのオープンカーに乗って、衝突事故を起こし死んでしまう10代のパリっ娘の物語。

そんな不幸な物語でさえも美しく感じてしまうのが、パリという街の魔力なのです。エレガントで、生意気で儚い不滅の青春時代の香りそれが「サン ジェルマン デ プレ」です。

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ヘリオトロープとアイリスが生み出す『モードなパリ』

オリス・ルートがパウダリーに、バニラとアーモンドがデリシャスに、プチグレンとネロリがシトラスの輝きを与えてゆく、ひとつの香りのカテゴリーに収まりきらない香りです。

つまりは頭を悩ませるほど贅沢な香りであり、何よりもフランスの魅力を確かに体現している凄い香りなのです。

チャンドラー・バール

さあ、50年代、60年代、80年代、そして、2020年代のパリを生きましょう。そんなパリの石畳、屋根のジンク、ファサードを一瞬にして思い起こさせるような力強いプチグレンの爆発からこの香りははじまります。弾けだすシトラスとウッドの芳香にすぐにネロリが加わり、きらめきを与えながら、はかなくも消えてゆきます。

一瞬、無臭の静寂のひとときがあります。

そして、パリのグレイの空が落ちてくるように、ヘリオトロープとオリス・バターのうっとりするようなパウダリーな甘さがやって来るのです。この懐かしさに浸してくれるようなヘリオトロープの香りが実に素晴らしく、本当に控えめなアーモンドの香りがする花の香りなのです。

そこに、オリス・バターが溶け込むことによって、パウダリーバターのしっとりした甘さが生み出されてゆくのです。

やがて、だんだんと存在を表すマシュマロが、あらゆる人の心に潜む〝理想のパリ〟を蘇らせるようにすべての香料に、羽根を与え、〝ふんわりで満たしてくれる〟のです。

パリを訪れたことのない人には〝エレガンスと夢〟を、パリを訪れたことのある人には〝パリの空気〟を感じさせてくれる香りです。

『花の都パリ』を感じさせながらも『モードなパリ』に終始するこの香りは、懐かしさと新鮮さが見事に同居した、それでいてパリの空気も感じさせてくれるこのコレクションの中でも出色の香りです。

この香りは、かつてエディ・スリマンがディオールオムにおいてプロデュースした「コロン ブランシュ」の延長線上にある香りと言えます。ほぼ間違いなく、フランシス・クルジャンによる作品でしょう。

この香りについてチャンドラー・バールは、「フランスの印象派の絵画をイメージさせる香り」「代々、パリの高級住宅地で生まれ育ってきたファミリーの生まれながらの特別感とシックさを感じさせる香り」「取り澄ましたお金持ちの香り」と表現しています。

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香水データ

香水名:サン ジェルマン デ プレ
原名:Saint-Germain-Des-Pres
種類:オード・パルファム
ブランド:セリーヌ
調香師:不明
発表年:2019年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/39,600円、200ml/60,500円
公式ホームページ:セリーヌ


シングルノート:ネロリ、プチグレン、オリス・バター、ヘリオトロープ、バニラ