浪速
原名:Naniwa
種類:オード・パルファム
ブランド:破天荒
調香師:清水 篤
発表年:2026年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/23,650円
公式ホームページ:破天荒

新選組の土方歳三が、鳥羽・伏見の戦いに敗れ、落ち延びた場所。

©株式会社キャライノベイト

『浪花名所 八けん屋着船之図』歌川広重、1834~35年。
浪速の昼を支えてきた町、八けん屋。
市岡新田で育った西瓜が、舟に揺られながらこの地へと運ばれてくる。
歌川広重《八けん屋着船之図》に漂う、水と光に満ちた午後の情景を香りで表現しました。公式サイトより
日本文化や日本の魅力を、香りを通じて世界へ発信するキャライノベイト(青山フラワーマーケットなどの人気フレグランスも創造しています)が、満を持して2025年4月14日に発表した国産フレグランス・ブランド『破天荒』。
日本人には「破天荒な性格」と誤用されやすいこの言葉の真の意味は「前人のなしえなかったことを初めてすること。また、そのさま。前代未聞。未曾有」です。
日本人の琴線に響く前人未到の香りを創造するために、日本の伝統文化を継承しながら、現代の価値観を未来へ受け継いでゆく〝新たな日本らしさ〟を表現する『破天荒』の〝お披露目フレグランス〟として、浮世絵を題材に『和の美学』を香りに投影した五作品が、総合ディレクター兼調香師の清水 篤氏により発表されました。
2026年4月29日から5月4日まで、阪急うめだ本店で開催された「HANKYU BEAUTY FRAGRANCE FESTIVAL 2026」から先行販売された、限定フレグランス「浪速」は、歌川広重の浮世絵『浪花名所 八けん屋着船之図』からインスピレーションを受けた香りです。
この浮世絵の中で、空と川の色が、ヒロシゲブルーで生き生きと表現されています。大坂・天満橋にある八軒家船着場は、伏見と大坂を結ぶ定期客船「三十石船」の発着場として、明治時代まで栄えました(「三十石船」の約40キロの旅は、京都から大阪は片道約6時間、大阪から京都は川の流れに逆らうことから約12時間かかりました)。
幕末には、八軒屋の船宿のひとつ京屋は、大坂での新選組の定宿となっていたといわれています。さらには、新選組の土方歳三が、鳥羽・伏見の戦いの敗走後に淀川を船で下り、この地に落ち延びました。
スイカのようなメロンソーダの香り

©株式会社キャライノベイト
江戸時代の大坂沿岸最大の新田・市岡新田(1698年開墾)で育てられたスイカ(日本全国に広まったのは江戸時代後期)は、新田スイカという名で「種まで真っ赤」と好評を得るほど、甘くておいしく、京の都でも特産品として有名でした。そんな甘いスイカの香りからこの香りははじまります。
心からビックリしたのは、潔いまでにリアルなスイカの香りがするところです。すぐにだんだんと、どこか、メロンソーダーとも感じられる、ポップに弾ける感覚に満たされてゆきます。
とてもシンプルな香りですが、日本の夏にピッタリな、スイカのようであり、メロンソーダのようでもあるひとつで二度おいしい香りに包まれてゆきます。
やがてみずみずしいロータスと沈丁花のまったりとした甘さが漂い、メロンソーダは、スイカジュースのような自然な甘い余韻を残して素肌に溶け込んでゆきます。
「浪速」の魅力を調香師・清水 篤さんに聞いてみました。

清水 篤さん © 株式会社キャライノベイト
Q.大阪の八軒家船着場を描いた浮世絵からインスピレーションを得られたこの香りは、破天荒さんにとってはじめて関東以外を主題にした浮世絵をテーマにした香りなのですが、今までの香りとは違う方向性などが、調香においてございましたでしょうか?
A.関東以外を初めて題材にするということで、これまでの破天荒とは少し違う表情を出したいと思っていました。
大阪の八軒家船着場を描いた浮世絵を見た時に感じたのは、水辺の明るさと、人が行き交う街の活気です。船が着き、人が降り、物が運ばれ、商いが生まれる。大阪という街そのものにも、人が集まることで生まれるエネルギーがあります。
そこで今回は、香りもあまり静かに整えすぎず、明るく、開放的で、人間の熱量を感じるものにしたいと思いました。破天荒では浮世絵に描かれた情景や、その時代に流れていた時間を香りにしていますが、場所が変われば、そこに暮らす人や街の空気も変わる。浪速では、そんな大阪の明るさや人の生命力が、香りから伝わるように意識して調香しています。
Q.スイカのようであり、メロンソーダのようであり、スイカジュースのようでもある香りというのが、私の印象なのですが、この香りは、Z世代の人たちに好評だったのではないでしょうか?「桜吹雪」と全く違う香りなのですが、キラキラと輝くような感じが、謎めいた共通点を感じさせます。
A.若い世代にも破天荒を使ってもらいたい、という意識はありました。破天荒は浮世絵や日本文化を背景にしていますが、それを難しいものとして見せたいわけではありません。若い人が香りを聞いた瞬間に、「これ、面白い」と感じてもらえる入口も必要だと思っています。
その意味で、スイカはとても分かりやすい素材でした。瑞々しくて、明るくて、どこか楽しい。スイカジュースやメロンソーダのように感じるというのも、すごく面白い捉え方だと思います。
「桜吹雪」も方向性はまったく違いますが、若い世代にも破天荒を楽しんでもらいたいという考えは共通しています。日本文化を背景に持ちながら、最初の一聞きで気持ちが少し弾むような香り。そのキラキラした感覚が、二つの香りに共通して感じられるのかもしれません。
Q.大阪の香りを作る時、どうしてスイカを選ばれたのか教えていただければ幸いです。また、大阪の香りとして別の香りの候補もございましたでしょうか?
A.大阪を香りにする時に考えたことの一つが、「食い倒れの街」だから、食べ物の要素を香りに入れたいということでした。実際、スイカ以外の食べ物もいろいろ考えました。
ただ、大阪らしい食べ物をそのまま香りにしようとすると、フレグランスとしてはどうしても下品な方向へ行ってしまう可能性があったんです。大阪の食文化を感じさせながら、香水として纏いたくなるものにしたい。そこで選んだのがスイカでした。
スイカなら食べ物でありながら、瑞々しさがあり、水辺の情景にも自然につながります。そして日本人にとっては、夏の記憶を呼び起こすものでもある。大阪の「食」と、八軒家船着場の「水」、そして夏の明るさ。それらを一つにつなげられる素材として、スイカが一番しっくりきました。
Q.とても興味深いのが、ミドルの蓮(ロータス)と沈丁花です。以前「花火」は梅の代わりにロータスを中心に創作することも考えていたと仰られたのが強く印象に残っているのですが、ロータスと沈丁花をチョイスされた理由などお聞かせ頂けますでしょうか?
A.ロータスを選んだ一番の理由は、浪速を「水のフレグランス」にしたかったからです。今回モチーフにした八軒家船着場は、水と人の往来がある場所です。大阪という街自体も、水運とともに発展してきた歴史があります。そこで、水の透明感だけではなく、水辺に花が咲いているような情景を作りたくてロータスを使いました。
一方、沈丁花はまったく違う発想です。これは、スイカを割った時に現れる、中身の赤さを香りで表現するために使っています。スイカの瑞々しさだけを追うと、どうしても瓜の青さや透明感に寄っていきます。でも私が表現したかったスイカには、あの鮮やかな赤も必要でした。
香りには色がありませんが、沈丁花の華やかさを重ねることで、瑞々しい瓜の中に「赤」を感じてもらえないかと考えました。ロータスで水を描き、沈丁花でスイカの赤を描く。香りから色や情景まで想像してもらえたらと思っています。
Q.日本人にとって瓜系の香りは、「ロー ドゥ イッセイ」などのカロンを使った香水が馴染み深いのですが、この香りは、系統で言うとオゾン系でしょうか?それとも全く新しい形の瓜系の香りでしょうか?
A.香調として分類するのであれば、オゾン系の要素を使ってまとめています。
ただ、「新しいオゾン系を作ろう」と考えて調香を始めたわけではありません。出発点にあったのは、先ほどの大阪の「食」と、八軒家船着場の「水」です。
大阪は食い倒れの街なので、食べ物を香りに入れたい。一方で八軒家船着場を描くのであれば、水の存在も欠かせない。そこでスイカの瑞々しさと、水辺の透明感を一つの香りの中でつないでいきました。結果としてオゾン系の要素を使っていますが、一般的な水や空気の透明感だけを描いた香りとは少し違います。水の中に、食べ物としての瑞々しさや甘さ、人のいる街の温度がある。
ですから「オゾン系ですか?」と聞かれれば、構成としてはそう言えると思います。ただ、自分の中ではカテゴリーから作ったというより、大阪の水と食を香りにしていった結果、この形になったという感覚の方が近いです。
2種の香りを重ねて、物語をひらく「聞き重ね」
日本の伝統芸道・香道では、香りを「嗅ぐ」のではなく「聞く」もの──。『破天荒』では、香道の文化にならい、2種の香りを重ねて、物語をひらく「聞き重ね」が提案されています。
それぞれの「聞き重ね」について総合ディレクター兼調香師の清水 篤さんに質問させて頂きました。
①『昼光(ひるひかり)』浪速 1プッシュ × 魁 1プッシュ

©株式会社キャライノベイト
午後の光がいっそう鋭くなり、
町の輪郭が明確に立ち上がる組み合わせ。
Q.なぜ「浪速」と「魁」を重ねようと思われたのでしょうか?
A.「浪速」を作る時に意識したのが、明るく開放的で、人の熱量を感じる大阪でした。大阪を歩いていると、知らない人同士でも自然に会話が始まることがあります。店の人とお客さんが話していたはずなのに、いつの間にか隣にいる人まで会話に入っている。
そういう人と人との距離の近さも、大阪の魅力だと思っています。「魁」は月下香を中心に、人を惹きつける艶を持った香りです。でも「浪速」と重ねてみると、その艶が夜の色気とは違う、人を引き寄せる明るさに変わって感じられました。
人が人を呼び、そこから会話が生まれ、街そのものが賑やかになっていく。大阪の昼にある、そんな人間の生命力を聞いてみたいと思いました。
Q.『昼光』という名前には、どのような意味が込められていますか?
A.「昼光」という名前には、もちろん昼の強い光があります。でも、この聞き重ねで表現したかった「光」は、太陽だけではありません。商いをしている人、働いている人、笑っている人、誰かと話している人。
大阪を歩いていると、そこにいる人自身が街を明るくしているように感じることがあります。「魁」が持っている華やかさも、浪速の中では一人だけが輝くのではなく、その人をきっかけに周りへ広がっていく。そんな人から生まれる昼の光を「昼光」と名付けました。
Q.それぞれを単体で香った場合と、どのように印象が変わりますか?
A.「浪速」は、スイカやロータスによる瑞々しさがあり、水辺の明るさや開放感を感じる香りです。「魁」は月下香を中心に、華やかさや艶、人を惹きつける存在感があります。
二つを聞き重ねると、「魁」の艶が少し外へ開いていくように感じます。誰か一人が美しく佇んでいるというより、その人をきっかけに会話が生まれ、笑いが起こり、周りまで明るくなっていく。人が働き、人が笑い、人が集まる。「昼光」は、そんな浪速の生命力が馨る聞き重ねなんです。
②『川潮(かわしお)』浪速 1プッシュ × 磯波 1プッシュ

©株式会社キャライノベイト
川と海をつなぐ水の記憶。
Q.なぜ「浪速」と「磯波」を重ねようと思われたのでしょうか?
A.「浪速」は八軒家船着場から生まれた、水のフレグランスでもあります。そこに「磯波」を重ねるなら、単純に水の香りを強くするのではなく、大阪という街と水の関係そのものを描きたいと思いました。
大阪には川があり、その先には海がある。川を流れてきた水と、海から入ってくる潮が出会う場所には、どちらとも言い切れない汽水の世界があります。川なのか、海なのか。二つの水が混ざりながら一つの風景を作っている。その境界の水を香りで聞いてみたかったんです。
Q.『川潮』という名前には、どのような意味が込められていますか?
A.そのまま『川』と『潮』、二つの水を重ねた名前です。でも面白いのは、川と海の境界には一本の線が引かれているわけではないこと。川を下っているうちに、少しずつ潮の気配が混ざってくる。どこまでが川で、どこからが海なのか、はっきりとは分からない。
香りも同じように、浪速の水と磯波の海が少しずつ混ざり合い、どちらとも言えない場所が生まれます。川が海へ変わるのではありません。川と海が出会う、その境界を聞き重ねた作品なんです。
Q.それぞれを単体で香った場合と、どのように印象が変わりますか?
A.「浪速」には、スイカやロータスを使った、明るく瑞々しい水辺があります。「磯波」は、日本的な海の情景を描きながら、アッサムティーなどを重ねた少し深さのある香りです。
二つを重ねると、浪速の明るい水に、磯波の潮の気配が入り込んできます。ただ、水と海を強く主張するというより、瑞々しさの奥に少しずつ潮を感じるような変化です。川の水を聞いていたはずなのに、いつの間にか海の気配がする。その変わり目がどこだったのか分からない。そんな水の境界を辿っていくような聞き重ねです。
③『水華(すいか)』浪速 2プッシュ × 花火 1プッシュ

©株式会社キャライノベイト
水の町に一瞬だけ灯る赤。
昼の静けさに、微かな熱を添える。
Q.なぜ「浪速」と「花火」を重ねようと思われたのでしょうか?
A.この二つを重ねた時に浮かんだのは、日本の夏の一日でした。「浪速」にはスイカの瑞々しさや、水辺の明るさがあります。一方の「花火」には、梅の赤や火薬、土手の空気など、日本の夏の夜の記憶があります。
花火というと夜空に上がる瞬間を思い浮かべますが、花火大会の日って、昼からすでにいつもと空気が違うんですよね。強い日差し、蝉の声、風鈴、冷えたスイカ、水辺を抜ける風。まだ花火は上がっていないのに、どこか落ち着かない。街には、夕暮れを待つような、どこか弾んだ空気が流れていました。
その「始まる前の夏」を香りにしてみたいと思い、この二つを重ねました。
Q.『水華』という名前には、どのような意味が込められていますか?
A.「水」は、浪速の水辺やスイカの瑞々しさ。「華」には、水面に反射する夏の光と、このあと夜空に咲く花火の両方を込めています。
昼の水辺を見ると、強い日差しが水面に反射して、無数の小さな光が咲いているように見える。そして日が暮れれば、今度は空に花火が咲く。昼は水に華が咲き、夜は空に華が咲く。その二つの間にある時間を『水華』と名付けました。
Q.それぞれを単体で香った場合と、どのように印象が変わりますか?
A.「浪速」単体では、スイカやロータスによる瑞々しさと、明るく開放的な水辺を感じます。「花火」単体では、梅の赤や土手の空気、そして少し乾いた火薬の気配があり、夏の夜の記憶を感じる香りです。
二つを聞き重ねると、「花火」の夜が少し手前へ戻って、花火が始まる前の夏の昼から夕暮れが現れてくる。西瓜を食べ、蝉や風鈴の音を聞きながら、少しずつ日が傾いていく。まだ何も始まっていないのに、心はもうこの先の夜へ向かっている。
花火そのものではなく、花火を待っていた時間までが夏の記憶として残っている。『水華』は、そんな日本の夏の記憶が馨る聞き重ねです。
香水データ
香水名:浪速
原名:Naniwa
種類:オード・パルファム
ブランド:破天荒
調香師:清水 篤
発表年:2026年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/23,650円
公式ホームページ:破天荒

トップノート:西瓜(ウォーターメロン)、檸檬(レモン)、香檸檬(ベルガモット)
ミドルノート:蓮(ロータス)、沈丁花(ダフネ)
ラストノート:白檀(サンダルウッド)、麝香(ムスク)、龍涎香(アンバー)
