ディートリッヒの〝金粉〟伝説
フォン・スタンバーグ自身が、若い頃、婦人帽子店やレースの卸売り店、宝石店で働いていた経験があり、女優のファッションに対しては当時のどの監督よりも敏感でした。
上海リリー・ルック6 フェザー・ガウン
- シースルー・ブラック・フェザー・ガウン、刈り込んで余分の羽毛を取り除いたオーストリッチ(ダチョウ)の羽根で飾った黒いシフォンのガウン
ディートリッヒは、髪に特別の光沢を出すために、毎日50ドル(現在の約30万円)分もの金を粉にして髪に振りかけていると噂されていました。そして、1930年代に、ディートリッヒ風の細いペンシルで描いたような眉が流行りました。
しかし、何よりも、この作品が、ディートリッヒの最高の美を映し出したと言わしめる所以は、アンナ・メイ・ウォンの衣裳を担当したイーディス・ヘッドに対する(スタンバーグの)指示がそうなのだが、この作品のための「〝黒〟はマレーネの衣裳にだけ使用してください」の一言に尽きるのでした。そう、この作品の中で、唯一〝黒〟を着ることが許されていたディートリッヒ。だからこそ、彼女は完全に漆黒の世界を支配し、ライトの輝きも一身に受けることが出来たのでした。
2009年、カール・ラガーフェルド、シャネル