『007/サンダーボール作戦』Vol.8|元祖・峰不二子 ルチアナ・パルッツィ

ボンド ガール
ボンド ガール
この記事は約8分で読めます。

ルチアナ・パルッツィが本当はドミノ役だった。

当初メインのボンド・ガールのドミノ役には無名時代のラクエル・ウェルチにほぼ内定していました。しかし、ハリウッド大作の『ミクロの決死圏』(1966)の主役に抜擢され降板しました。

そこでドミノ役に選ばれたのが、ルチアナ・パルッツィ(1937-)でした。しかし、クランクイン寸前にミス・フランスのクローディーヌ・オージェがドミノ役となり、ルチアナは、スペクターNo.12のフィオナというボンドの敵役を演じることになりました。

1937年にイタリア・ローマで生まれたルチアナ・パルッツィは、本作の後、深作欣二監督の『ガンマー第3号 宇宙大作戦』(1968年、日米合作)に出演します。この頃付き合っていたのが、『暁の用心棒』(1968)のトニー・アンソニーで、彼はこの時のルチアナの日本滞在の話を元に実に奇妙なマカロニ・ウエスタン『サイレント・ストレンジャー』(1968)を作りました。

しかし、あまりにもひどいその内容にMGMはこの作品をお蔵入りにしてしまい、結局日の目を見たのは、1975年でした。

ルチアナとクローディーヌ・オージェ。

ちなみに、クエンティン・タランティーノが『レザボア・ドッグス』(1992)の宣伝キャンペーンのために来日したとき、タランティーノは深作欣二との面会を切望し、京都まで行き、面会を果たしたときに持ってきたのが、この作品のアメリカ公開版「グリーン・スライム」のレーザーディスクでした。

『ガンマー第3号 宇宙大作戦』

『ガンマー第3号 宇宙大作戦』

スポンサーリンク

オープニング・ボンドガール。その名もミツコ。

本作においてジェットパックを着たボンドをサポートし、アストンマーティンDB5と共に去っていったミツコ。

本作以外ほとんど知られていない謎の存在。


次の作品の『007は二度死ぬ』(1967)でジェームズ・ボンドは日本初上陸を果たし、当時の日本列島は空前の007フィーバーに包まれます。

そんな西洋と東洋の融合を予感させるオープニングに登場する謎のボンド・ガール〝ミツコ〟。スペリングからみて、ゲランの名香〝ミツコ〟を連想させます。

ボンドムービーの魅力のひとつ。それはあらゆる人種をカラーコーディネイターが配置しているかのように、映像の中で、見事に配置している点にあります。

このシーンの東洋人には何色の服を着せようやら、バハマの黒人男性には、赤のシャツを着せようなどといったカラーバランスの妙が、常にスクリーン上から漂ってきます。それが、ケン・アダムのセット・デザインと見事に融合して、ボンドムービーに他にはない品格とカラーを生み出していることは言うまでもありません。

スポンサーリンク

オープニング・ボンドガール。その名もミツコ。

珍しいミツコが笑顔のビーチ写真、1964年。

本作のイメージとはまったく違います。

ボンドガールとして撮影した宣材写真。

彼女の名前をMaryse Guy(マリース・ギー)と申します。1943年に当時フランス租界であった中国の天津で生まれたのですが、1948年、毛沢東の革命から逃れるため、日本人の母親(父はアメリカ人)は彼女を連れて船でフランスへ逃れ、フランス本土に到着すると孤児院に預けられました。

ストリッパーとヌードモデルをしていた頃、1960年4月に起きたフランスの自動車王プジョーの孫が誘拐された事件に関与したということで、警察から事情聴取を受けたこともありました。

かなり際どい交友関係を通してB級映画でのセクシーな端役を経て、ボンドガールとなります。そして映画が公開された1965年にサザビーズ・フランスの会長と恋に落ち、一男もうけたのですが、90年代初めに別れ、精神病院に入れられた老母の行く末と自身の将来に不安を感じ、1995年に拳銃自殺しました。

スポンサーリンク

ボンドガール・ルック1

ベージュコート・スタイル
  • 白のシフォンスカーフを頭に巻く
  • 今でもかなりお洒落なベージュの膝丈のウールのチェスターコート
  • ダークグレーの手袋
  • ブラック・パンティストッキング
  • ブラウンのローヒール・ローファー

黒柳徹子のようなヘアスタイルで登場する東洋美女。

その名も<ミツコ>。元々はパリのストリッパーでした。

スポンサーリンク

妙に印象に残る〝ミンク・マッサージ女〟

ミンク・グローブで全身マッサージしてもらうボンド。

もちろん最終的には、彼女が、逆にボンドにミンク・グローブでマッサージされることになるのです。

スクリーン上で衣服を脱ぐ姿が映された初のボンドガールでした。

女性看護士パトリシアを演じたモーリー・ピータース

まさに英国の三原葉子。


療養中のジェームズ・ボンドをミンク・グローブでマッサージする看護士パトリシアを演じるのは、モーリー・ピータース(1942-2017)です。

英国の三原葉子様と形容したくなるほどの存在感の持ち主なのですが、元々ヌードモデルだったのですが、この作品によって契約した悪徳エージェントに騙され、芸能界にうんざりして60年代後半には引退してしまいました。

スポンサーリンク

フィオナ・ルック1

スカイブルー・ネグリジェ
  • スカイブルーのネグリジェ、スパゲッティストラップ
  • 同色のハイヒールパンプス

当初は主役のボンドガールに決まっていたルチアナ・パルッツィ。

ネグリジェを着るために生まれてきたようなボディラインです。

しかし、スペクターNo.12のフィオナを演じることになる。

同色のパンプスがカッコいい。

スポンサーリンク

元祖峰不二子の誕生

女がレーシングスーツ(革ツナギ)に身を固めるカッコよさ。

このイメージがマリアンヌ・フェイスフルの『あの胸にもういちど』(1968)を経て、『ルパン三世』の峰不二子のイメージに繋がり、更には、ファッションにおけるオールブラックが生み出すクール・ビューティの教本となったのでした。

そして、我らが不二子ちゃんのレーシングスーツ姿が誕生します。

スポンサーリンク

フィオナ・ルック2

レーシングスーツ
  • ルチアナ・パルッツィ
  • オールレザーのブラック・レーシングスーツ
  • レザーグローブとブーツ
  • ミサイル4基付きバイク・BSA・A65ライトニング

1967年にモンキーパンチによるルパン三世が連載されます。

作品データ

作品名:007/サンダーボール作戦 Thunderball(1965)
監督:テレンス・ヤング
衣装:ジョン・ブレイディ
出演者:ショーン・コネリー/クローディーヌ・オージェ/アドルフォ・チェリ/ルチアナ・パルッツィ/マルティーヌ・ベズウィック