作品名:バーバレラ Barbarella(1968)
監督:ロジェ・ヴァディム
衣装:パコ・ラバンヌ/ジャック・フォントレー
出演者:ジェーン・フォンダ/アニタ・パレンバーグ/ジョン・フィリップ・ロー/マルセル・マルソー/デヴィッド・ヘミングス
何を隠そう身長173cmのジェーン・フォンダ。
「何事にも真剣になりすぎるな」というヴァディムの哲学は、それが女性に関する事柄に向けられた場合、女には残酷なものとなった。
ジェーン・フォンダ
30歳を迎える記念も兼ねて、妻ジェーン・フォンダの裸体をカメラに収めておこうという単純な発想から生まれた作品であっても、ロジェ・ヴァディムのすごさは、それを文芸作品の中にではなく、ファッション・アイコンとして永遠に記録した所にあるのです。映画監督としては極めて凡庸だったこの男が、もし現在の世に生きていたならば、ファッション・ブランドのために超一流のキャンペン・ムービーを撮影する人になっていたことでしょう。
1960年代後半、ロジェ・ヴァディムには、同時代のチャールズ・マンソン並みに、女性を口車に乗せる才能がありました。しかし、彼は女性にとって、未来の男ではなく、つねに過去の男でした。そして、それがこの男の限界でもあり、不幸でした。
ここに、もう一人の男ジョン・フィリップ・ロー(1937-2008)を紹介します。彼こそが、ジェーン・フォンダの70年代の快進撃のきっかけになった人でした。天使パイガーを演じたアメリカ人の彼が当時付き合っていた女性の名をジョーン・バエズと言いいます。ジェーン・フォンダは、彼女によって、アーティストとしての姿勢、女性の誇り、ベトナムに対する反戦運動に目覚めていくのでした。
もうひとつのバーバレラのアイコニック・ファッション
バーバレラ・ルック8 ピーター・パン・スタイル
- グリーンのモザイクタイルを散りばめたボディスーツ
- グリーンのピーターパンブーツ
最後の最後にもうひとつパコ・ラバンヌにとって象徴的なタイルを散りばめたようなボディスーツが登場します。〝緑の妖精〟の如く、全身グリーンのレオタードとピーターパンブーツに、ライオンのたてがみのようなヘアスタイルのジェーン・フォンダ。明らかに、ブリジット・バルドーのコピーであるそのスタイルをただのコピーで終わらせない所に、ジェーン・フォンダという女優の恐ろしさがあります。
私は宝石やファッションにはあまり興味がないが、巨木が大好きで、これからは大きな木にお金をかけようと思っているくらいなのだ。
そんなことを抜けぬけと言う彼女の生き様を見ていると、ロジェ・ヴァディムも案外彼女の手のひらで転がされていたのかもしれません。そして、彼の中に残る最後の生命力を吸い尽くし、ジェーン・フォンダは、70年代の快進撃に向けて去っていったのでした。