ハイヤー
原名:Higher
種類:オード・トワレ
ブランド:クリスチャン・ディオール
調香師:オリビエ・ギロティン、オリヴィエ・ペシュー
発表年:2001年
対象性別:男性
価格:100ml/17,490円
公式ホームページ:ディオール
知られざるエディ・スリマンの処女作
(1995年から2004年にかけて)ディオールのパルファム部門のグローバル・マーケティング・ディレクター、サビーナ・ベッリは、1999年に「ジャドール」により見事アメリカ市場を再度席巻することに成功しました。その勢いの中、1997年に「デューン プールオム」が果たせなかった、メンズ・フレグランス市場へ再挑戦したのが、2001年に発売された「ハイヤー」でした。
あまり知られていないのですが、2001年(2001-2002秋冬のパリコレクションから)にディオールオムをスタートさせたエディ・スリマンがこの香りに深く関わっています。彼は元々1997年にイヴ・サンローラン・リヴ・ゴーシュのメンズラインのクリエイティブディレクターに抜擢されるも、2000年にイヴ・サンローランがグッチ・グループに買収され、ディオールに移籍することになりました。
そして2000年から2001年の間に、サビーナにより彼はこの香りの責任者に任命されたのでした。ファッション・デザイナーとフレグランス開発が密接に結びついたのは、ディオールの歴史の中で、ムッシュ・ディオール以来の出来事でした。かくしてこの作品により、エディは人生で初めてフレグランスの世界に関わることになるのでした。
私たちは、エディのスタイルを捉えたボトルのデザインに、活気と若々しさの感覚を表現しようと試みました。
サビーナ・ベッリ
〝ハイヤー=もっと高く〟と名付けられたこの香りは、新世紀を迎え、都会に生きる青年が、夢に向かって、気高く進んでいく姿を応援する、アーバン・エッセンスを解き放つ香りです。オリビエ・ギロティンとオリヴィエ・ペシューによって調香されました。
結果的には、ディオールのメンズ・フレグランスを〝もっと高い〟領域へと引き上げることは出来なかった(ヒットはしなかった)のですが、〝フルーティだけどマニッシュ〟という独特な香りの展開により、一定層の固定ファンを獲得し、今も現役で発売されています。
ディオールスーツを脱ぎ捨てた、都会の若者たちの香り
ジボダン社の二人の調香師による洋ナシの香りからこの香りははじまります。天然の精油を抽出することが出来ない洋ナシ(ペア)の香りをヘッドスペース法で生み出しています。この透き通るような都会の空気を思わせる洋ナシがシャーベットのように全身に広がり、太陽に温められ溶けていく中、スーっと心に差し込むようにバジルが注ぎ込まれてゆきます。
そんな果実とハーブのマリアージュの中に、ジューシーなピーチと酸味の効いたレモンが加わり、都会のアスファルトと空気のような軽やかさの対比は完成いたします(どこかメロンを思わせます)。
すぐにうっとりするようなムスクと涼しげなシダーの風に乗って、水蒸気蒸留法で抽出されたカルダモンを中心に、ローズマリー、サイプレスといったスパイスが、洗練されたエネルギーを解き放ってゆくのです。爽やかさの中に潜む妖しさの絶妙なバランス。若い青年の色香が滲み出ていきます。
まるで全身に、洋ナシシャーベットとレモンとピーチ、そしてスパイスをひとつまみで作られたアイスウォーターが注ぎ込まれていくような、〝健やかさ〟と〝漲るパワーを解放する衝動〟をチャージしてくれる香りです。
キャンペーン・フォトは、エディ・スリマンがプロデュースしました。2001年にリチャード・アヴェドン、2002年に、マリオ・テスティーノにより撮影されました。その写真は、この香りのコンセプトを伝えてくれています。スーツを脱ぎ捨てた、都会の若者たちの新世紀の香りというイメージです。
タニア・サンチェスは『世界香水ガイド』で、「ハイヤー」を「フルーツの軽快さ」と呼び、「そう、お願いだから次にはもっとハイアー(高い)ところをねらって、スポーティなフゼアに、機嫌のわるい洋梨のトップノート。」と2つ星(5段階評価)の評価をつけています。
香水データ
香水名:ハイヤー
原名:Higher
種類:オード・トワレ
ブランド:クリスチャン・ディオール
調香師:オリビエ・ギロティン、オリヴィエ・ペシュー
発表年:2001年
対象性別:男性
価格:100ml/17,490円
公式ホームページ:ディオール
トップノート:ピーチ、バジル、レモン、洋ナシ
ミドルノート:ローズマリー、サイプレス、ペッパー、カルダモン
ラストノート:ムスク、ペアウッド、シダー