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【グッチ】グッチ ブルーム(アルベルト・モリヤス)

グッチ
©GUCCI
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グッチ ブルーム

原名:Gucci Bloom
種類:オード・パルファム
ブランド:グッチ
調香師:アルベルト・モリヤス
発表年:2017年
対象性別:女性
価格:50ml/15,400円、100ml/21,670円
販売代理店ホームページ:ラトリエ デ パルファム

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アレッサンドロ・ミケーレ初のウィメンズ・フレグランス

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私は何よりもグリーン・フレグランスが欲しかった。たくさんの花や植物で埋め尽くされた広大な庭園、白い花々が芳醇に勇ましく香る、そんな香りが欲しかったのです。

庭園とは、女性の美しさと同じく、カラフルで、ワイルド、多様性に富む場所です。「グッチ・ブルーム」は、そのような庭園が、実際に目の前に広がっているかのように、貴女を誘う香りなのです。

アレッサンドロ・ミケーレ

ローマで生まれ育った一人の天才ファッション・デザイナーが、2015年に「新生グッチ旋風」を巻き起こしました。その人の名をアレッサンドロ・ミケーレ(1972-)と申します。

1997年から2002年にかけて、フェンディでハンドバッグをデザインし、2002年にトム・フォードにより、グッチのハンドバッグのデザインチームに引き抜かれ、ミケーレのグッチ人生がはじまるのでした。

そして、2004年以降は、新たなるクリエイティブ・ディレクターとなったフリーダ・ジャンニーニの下で黙々とレザーのアクセサリー・デザイナーをしていたのでした。そんな42歳の男性が2015年に突然脚光を浴びることになるのでした。

2年の歳月を経て、グッチに匂いを与えることができた。

アレッサンドロ・ミケーレ

ミケーレが初めてプロデュースしたウィメンズ・フレグランス「グッチ ブルーム」が、日本で発売されたのは、2017年8月9日のことでした。グッチのフレグランスを2017年まで一度も手がけたことのなかったアルベルト・モリヤスにより調香されました。

ちなみにグッチのフレグランス・ライセンスを保有しているのはコティ社です。

ミケーレから突然、プライベート・フォンに電話を貰ったモリヤスは、「明日ローマでお会いできますか?」という問いかけに、二つ返事でYESと答えたのでした。それはモリヤスにとって非常に現実離れした体験でした。

「なんと次の日に彼と会ったローマの場所は、とんでもなく大きなスタジオで、グッチのファッション・デザイナーの圧倒的な存在感を感じ取りました!」とのこと。そして、二人三脚で4ヶ月かけて「グッチ ブルーム」を生み出したのでした。

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フラワーパワーに包まれてトリップする香り

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最近では、手がけるフレグランスを厳選するようになりました。私は人と密接に連絡を取り合いながら、仕事をするのが好きです。そして、それが創作へのエネルギーになります。一方、ブランドの一方的な要望によってアイデアが希薄になるのは好きではありません。

ブルガリとは20年近く前から素晴らしい関係を築いており、そのおかげで、彼らが何を望んでいるのか、すぐに理解できます。「グッチ ブルーム」では、クリエイティブ・ディレクターのアレッサンドロ・ミケーレと非常に密接に仕事をし、彼は最初から最後までフレグランスのデザインに深く関わってくれました。

ブルガリでは石が、グッチではファッションが重要です。でも、肝心なことは昔のように、10本のフレグランスを同時に手掛けたくないということです。疲れていたら、ハッピーではないし、ハッピーでなければ、クリエイションもできない。

アルベルト・モリヤス

まず最初に、ミケーレとモリヤスは「ギルティ アブソルート プールオム」に取り掛かり、相互理解を深めた上で、この香りに取り掛かりました。ミケーレのはじめてのウィメンズ・フレグランスに対する要望は、「フェミニンでハッピー」な香りでした。

それは70年代から80年代に多く生み出されたパワフルなシプレ、そのために多用されていたジャスミン、チューベローズ、アイリスといった花々を、モダン・フレグランスとして蘇らせるという試みでもありました。

さらに言うと、この香りは明らかに、ミケーレが、60年代後半から70年代前半にかけてのフラワーパワージェネレーションを念頭においてプロデュースした香りです。それは万華鏡のように美しい花々が咲き乱れるようなトリップ感を、香りによって再現したものです。何か入れてはいけない成分が調香されているのではないかと勘繰らせるほどに、吸い込まれるような多幸感を与えてくれます。

当初、この香りが完成した時、グッチの社内において、「このようなエクストリームなフローラルを人々が求めているとは思えない!」と総反発されたのですが、ミケーレはそういった声を振り切って発売を英断したのでした。

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謎が謎を呼ぶ不思議な花ラングーンクリーパー


「グッチブルーム」の中で聞きなれないラングーンクリーパーという花の名が出てきます。この花は、アルベルト・モリヤスがインド旅行中に出会い、衝撃を受けたという花です。

それは東南アジア原産の蔓性植物であり、別名チャイニーズ・ハニーサックルと呼ばれ、太陽の光を浴びると、白から徐々にピンクに変化しながら開花し、最後には深紅に変わるという不思議な花です。この花の香りがフレグランスに使用されたのは初めてのことです。

焼いたココナッツのような独特な香りは、実際に抽出することは出来ないのでヘッドスペース法を活用し再現されています。

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チューベローズから、研ぎ澄まされた刃を削ぎ落とした香り

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アレッサンドロに〝空想の庭〟を作って欲しいと言われたので、フランス、イギリス、イタリアの庭の香りをイメージして作業しました。頭の中に不思議な花々を咲かせました。そこにはちょっと毒があるようなミステリアスな面もありました。

「グッチ ブルーム」は、魔法のような空想の世界に入り込んだような感覚を与えてくれるはずです。

アルベルト・モリヤス

アルベルト・モリヤスは「グッチブルーム」について、「多様性に満ちた、活力みなぎる香り」と言い表しています。そんなこの香りの特徴は、トップからミドル、そして、ベース(ラスト)へと移り変わる香りの流れはなく、最初から3種類の花々が香りを躍らせるところにあります。

  1. クリーミーでバターのように甘いインド産チューベローズ・アブソリュート
  2. ジャスミン・サンバック・アブソリュートと、ジャスミンの芽から「共抽出」という業界初の特別な方法で取り出したグリーン調の爽やかな花びらの香りを放つジャスミンバッド・エッセンス(1kgの精油を得るために700本の花が必要になる)
  3. 世界で初めて使用された、ヘッドスペース技術により再現された(南インドで特別に栽培された)蔓性植物ラングーンクリーパーのほんのりとパウダリーな香り

アレッサンドロ・ミケーレが求めている新生グッチの香水の世界をイメージしてみようと、ジャスミン・サンバックの収穫のためにインドに行きました。

その花の香りを嗅いでいるうちに、閉じた花と満開の花とでは、まったく違う香りがすることに気づきました。そこで2パターンの抽出法で抽出したものをミックスしてこのフェミニンな香りをつくりました。

アルベルト・モリヤス

正確にこの香りについて説明すると、重厚な甘さが諸刃の刃となるチューベローズから、研ぎ澄まされた刃を削ぎ落とした香りからはじまります。つまりは、夜の世界に生きる銀座や北新地のホステスに、真昼の太陽の下で、その溢れんばかりの美しさを謳わせているようです。

夜に咲く花の濃厚な香りを、日差しに溶け込む亜麻色の誘惑でいっぱいに満たしてゆくのです。

そんなクリーミーなチューベローズの他を圧倒する妖艶さをなだめすかすように、綺麗なグリーン・ジャスミンと、煌くようなスズランが注ぎ込まれてゆきます。

「さあ、愛の言葉を語る前に、花の美しさを開花させなさい」と言わんばかりに、華やかな開花の時を共に迎える瞬間、未知の香りであるラングーンクリーパーが加わります。

そのココナッツのようなフルーティーなハニーサックルに似た甘さを、イリスのパウダリーさが包み込むように静止するのです。一分一秒でも開花の瞬間を肌の上に残しておくために、サンダルウッドとムスクが紳士同盟を結び、チューベローズを真昼の太陽の輝きの下で、〝誰からも愛される甘い花〟の香りへと変えてゆくのです。

この香りのハイライト、それは、甘くミルキーなホワイトフローラルの余韻の陰で、ほくそ笑む悪女の赤い口紅の間に光る白い歯のドラマティックな輝き、それを最後に感じる瞬間にあります。つまりは、フレッシュな庭園の香りではないのです。

ああ・・・その白い歯は、どんな神秘的な苦痛を、噛んで生み出してくれるのでしょうか?チューベローズの爽やかな余韻に浸りながら、その戦慄の本性を肌で予感することが出来るのです。

悪い女が身に纏えば、「清らかな顔をした悪女」を生み出し、清らかな女が身に纏えば、「少し危険な空気を漂わせた天使」を生み出してゆくのです。

それは丸の内のオフィス街で働く女性に届けられた、マンハッタンで最も美しい花束を見つけることが出来る23丁目と8丁目の角から送られてきた香りとも言えます。

ちなみにこの香りには、1年かけてフィルメニッヒで作られた非常に高価な二つの天然香料が使用されています。ひとつは、特製パチョリ、そして、もうひとつは新しいガルバナム・エッセンスです。

ディプティックの「ドソン」とマイケル・コースの「マイケル」とよく比較される香りです。

一度私はマドンナと一緒に香水を作ろうとしたことがある。結局上手くはいかなかったが、彼女は、母親がロベール・ピゲの「フラカ」を愛用していたので、チューベローズの香りを希望していました。

そして、この時マドンナは、運動して体臭が少しきつくなったときに、チューベローズの香水は効果を発揮すると教えてくれたのでした。

アルベルト・モリヤス

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キャンペーンモデルにトランスジェンダーを起用

真ん中がアレッサンドロ・ミケーレ、そして、その右にハリ・ネフ。©GUCCI

トランスジェンダー・モデル・ハリ・ネフ。©GUCCI

キャンペーンモデルに女優のダコタ・ジョンソン、アーティストのペトラ・コリンズ、そして、トランスジェンダー・モデル・ハリ・ネフが起用されました。

日本ではハリ・ネフについて彼女がトランスジェンダーであることを一切言及しませんでした。しかし、ミケーレがこの香りで示したかったテーマは、「多種多様な女性のために作られた香り」であることを考えると、その事実はとても重要なことでした。

ダコタのこの香りに対する印象は「気まぐれで、とても甘くミステリアス」でした。一方、ハリ・ネフは「なにかいにしえのような、クールで不吉な感じがする。一方で、フローラルが可愛らしさを引き立てている」と、ずばり本音で答えた不思議コメントが、逆にこの香りらしくて素敵でした。

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香水データ

香水名:グッチ ブルーム
原名:Gucci Bloom
種類:オード・パルファム
ブランド:グッチ
調香師:アルベルト・モリヤス
発表年:2017年
対象性別:女性
価格:50ml/15,400円、100ml/21,670円
販売代理店ホームページ:ラトリエ デ パルファム


シングルノート:チューベローズ、ジャスミン・サンバック、ラングーンクリーパー、スズラン、イリス、サンダルウッド、ムスク