ハリウッドのニュールック
1950年代において、よほどのお金持ちでない限り、『VOGUE』や『ハーパース・バザー』は読みませんでした。つまり1947年のクリスチャン・ディオールによるニュールックは、一部の上流階級の中でのセンセーショナルであって、第二次世界大戦(1939~1945年)後の復興の中で生きる一般大衆の女性にとって、全く知らないことでした。砂時計のような、なだらかな肩のラインと絞りに絞ったウエストライン。そして、ゆるやかに広がる長いスカートというこのルックをハリウッド風に解釈したのが、パラマウント映画の主任コスチュームデザイナーであり、本作の衣装デザインを担当したイーディス・ヘッドでした。
このガウンのシルエットは、ディオールのニュールック・シルエットであり、グレース・ケリーのスタイルを通じて、改めて、ニュールックが世間に浸透することになったのです。ファッション誌は読まなくとも、ハリウッド映画を見る人口は、比較にならないほど多く、娯楽が殆どなかったこの時代に、テクニカラーのワイドスクリーンから現れたグレースのこのドレス姿は、もう衝撃以外の何者でもなかったことでしょう。こうしてパリモードはハリウッド映画という大衆のためのメディアを通じて、より大きな影響力を持つことになったのです。
グレース・ケリー・ルック2 美神ルック
- アイシー・ブルー・ギリシャ風ガウン。グレースの小麦肌を強調。ブルーシフォンスカーフ。スパゲッティ・ストラップ。ギャザースカート
- 水色のクラッチバッグ
- オープントゥサンダル
ドレスにおいて一切のアクセサリーを付けない。グレース・ケリーの隠し味です。
エレガンスとは、健康な肉付きの良さに宿る
男性から見た女性の魅力と、女性自身が考える女性の魅力は違います。女性が考える以上に男性は、肉付きの良さを気にしません。むしろ、肉付きの良いほうが良いという人もいます。性別逆転して考えて見ましょう。「ボクはサンローランが似合うように細身をキープしてるんだよ」と、右目にかかった髪をかき上げる花輪君のような男子を見て、多くの女性は、「運動しなよ」と言いたくなります。その感覚と同じなのです。
モード界において、2007年よりファッション・モデルの拒食症が問題になりました。最初のきっかけは、2006年12月ミラノコレクションにおいての、IMC値が18以下のモデルの出演を禁止する借置からでした。2007年9月、ミラノコレクションの最中にフォトグラファー、オリビエーロ・トスカーニ(1942-。センセーショナルなベネトンの広告キャンペーンで有名。)が、拒食症の25才の女性モデル・イザベル・カロ(1982-2010)をモデルに起用した反拒食症キャンペーンのポスターは世の中に衝撃を与えました。
2016年に入り、痩せているということへの美徳は、失われつつあります。寧ろ引き締まった肉体、もしくは程良い肉付きに対しての愛着が生まれています。これは女性のアンドロギュヌス性の高まりとも言えます。今では、女性の価値に対して、痩せすぎよりも、若すぎの問題の方が深刻化しています。
グレース・ケリー・ルック3 キモノルック
- ペールイエローの白のパイピング・フローラル・ラップドレス。ロング。ショートスリーブ。白ベルト
- 白のウェッジソール・サンダル