第三作目 女囚さそり けもの部屋
- 黒のトレンチコート
この作品においては、さそりルックは一瞬しか登場しない。変わりに、前半は、オリーブ(カーキ)色のショート・トレンチシャツの上から太い黒ベルト。70年代風の襟の白シャツにオリーブ色のパンタロンとブラックブーツ。
そして、ストーンカラーのトレンチコート(エポレット付き)にパンタロン、下には、インディゴのシャツ。しかし、昔の新宿南口で売春に励む渡辺やよいが強烈です(李礼仙のエリマキトカゲ・ルックについては言及不要)。
第四作目 女囚さそり 701号怨み節
- 細身でかなりモード色の強いトレンチコート。ドレープがハンパない
- ウエスタン風ブラックハット
- ブラックハイヒールブーツ
そして、最後に首吊り台での死闘での貞子風白装束も印象的であったことを言及しておこう。
1972年から73年にかけてのこの作品が、コムデギャルソンの川久保玲やヨージ・ヤマモトからどのような影響を受け、または与えたのかは非常に興味深いことです。しかし、それ以上に何よりも興味深いのは、全身黒づくめがここまで似合う梶芽衣子という類まれなるファッション・アイコンの存在であり、この4部作の世界観は、今ではある種のモードの領域にまで到達しているという点です。
それは特に、新宿南口にたむろする売春婦達の存在といい、今は失われた多くの毒々しいものがその中には、見事に純粋培養されており、「温室育ちのファストファッションに操られたプチプラ族」に対する目覚ましとなる強烈なさそりの一刺しがそこにあることは間違いありません。
つまりファッションの本質とは、半分程度は非常にいかがわしい要素が<ちらり>と見えてこそなのであり、それは虚栄や肉欲や毒々しさなどといったものなのだからということを再認識させてくれる作品なのです。