エタニティ
原名:Eternity
種類:オード・パルファム
ブランド:カルバン・クライン
調香師:ソフィア・グロスマン
発表年:1988年
対象性別:女性
価格:30ml/8,250円、50ml/11,770円、100ml/15,400円
販売代理店ホームページ:ラトリエ デ パルファム
永遠のカルバン・クライン
70年代のジーンズ、80年代のアンダーウェア、90年代のフレグランスと、アメリカのファッション・シーンのみならず、世界のファッション・シーンに影響を与えた人がいました。その人の名をカルバン・クライン(1942-)と申します。
1978年に娘マーシ・クライン(1967-)が自身のベビーシッターに誘拐されたときに、10万ドルの身代金を払い解放されたことに関して、捏造疑惑まで生まれた(世間の同情によりカルバン・クラインは爆発的な売り上げを上げたため)この御方は、ビジネスを軌道に乗せるためなら、どんな手段でも講じるというイメージの人でもありました。
そんなカルバン・クラインが「シーケーワン」(1994)でフレグランス業界に革命を起こす前夜の、1988年に発売したのが「エタニティ」でした。〝永遠〟の意味を持つこの香りは、アン・ゴットリーブによりディレクトされ、ソフィア・グロスマンが調香しました。
まず最初に、1985年に発売された「オブセッション」との違いを生み出すために、オリエンタルに対してフローラルブーケの香りを作ることが決められました。
そして、カルバン・クライン自身もこのプロジェクトに介入し、かなりの回数の試作を求めました。アンにとって、ブランドのトップが、ここまでフレグランスの販売に心血を注ぐ姿を見るのは、はじめてに等しいと驚くほどでした。
カルバン・クラインイズム爆発!
ケリーとは当時まだ結婚はしていなかったけれど、すでに熱愛中だった。そんなとき、ウィンザー公爵夫人が亡くなって、彼女の宝石がサザビーズのオークションに出されたんだ。カタログが手元にあったから、ぱらぱら見ていたら、お察しのとおり、公爵が夫人に送ったという指輪が載ってたんだ。環の部分にダイアモンドが並んでいて、エタニティ・リングと呼ばれてた。あれはそこから名前を取ったんだ。
カルバン・クライン
1986年9月26日、ローマでカルバン・クラインは、敏腕アシスタントのケリー・レクターと結婚式を挙げました(この女性が、80年代のCKの衰退を救った)。
この時、彼女の左手の薬指につけられたのが、ウィンザー公爵夫人(ウォリス・シンプソン)がエドワード8世から送られたダイアモンドとゴールドのリング(1962年頃にダルデ エ フィスにより製作された)でした。
そして、このリングに公爵夫人が〝エタニティ〟という刻印を入れていたということからこの香りの名がつけられたのでした(実際は、〝エタニティ〟の刻印は入っていなかったという所もまたカルバン・クラインらしくてとても良いです)。
本物以上にあざやかで美しい人工的な大自然の香り
結局、2006年に二人は離婚するのですが、ブランド自体は、2017年にラフ・シモンズをチーフ・クリエイティブ・オフィサーに就任させ、ファッション・ブランドとしての〝永遠〟の輝きを手にすることに成功しています。
〝永遠の輝き〟を生むこの香りは、カーネーションに幸せのバラードを歌わせるトップノートからはじまります。それは青空の下で弾けるフレッシュなオレンジに、フレッシュグリーンなフリージアの花が咲き、小鳥の囀りのようにはじまるカーネーションの歌声です。
この香りの不滅性は、世界で最も美しいカーネーションが、束の間の美しさを生み出すところにあります。このクローブのようなスパイシーさが、大自然を謳歌させる草と花の香りに柔らかさよりもある種の厳かさを生み出しているのです。しかもこの大自然とは、本物ではなく明らかに偽物であるところがまたとてつもなく素晴らしいのです。
それはまさに本物以上にあざやかで美しい人工的な大自然なのです。偽物も混じり合うからこそ生み出される永遠の輝きです。
やがて、金管楽器のように冷たく甘いスズランと、弦鳴楽器のように柔らかく甘いヴァイオレットが、フローラルシンフォニーのファンファーレを鳴らしてゆきます。
みずみずしい百合と水仙、緑をより豊かにするマリゴールドが、グリーンとフローラルの境界線上でうっとりするほどにソーピィーな清涼感で満たしてくれます。何よりも、溢れんばかりのローズとインドールの効いたジャスミンが、〝永遠の愛〟の象徴のように凛々と静かに佇むように香り立ちます。
そして、パウダリーなヘリオトロープとクリーミーなサンダルウッド(高濃度のイソEスーパー)、ムスク(トナリドとガラキソリド)が、グリーン・フローラルの残香に、母性本能を強烈にくすぐるような温かさで包み込んでゆきます。
1989年に、キャンペーン広告が、スーパーモデルのクリスティー・ターリントン(1969-)をミューズとして、ブルース・ウェーバーにより撮影されました(男性モデルは、マーク・ヴァンダールーだった)。
さらに、25年ぶりのキャンペーンにもクリスティーは再登場し、実際の夫である『プライベート・ライアン』などで有名な俳優兼映画監督のエドワード・バーンズ(1968-)と競演しました。ちなみにこの香りのボトル・デザインはピエール・ディナンによるものです。
ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「エタニティ」を「けばけばしいローズ」と呼び、「いつも思うのだが、エタニティはコピーする価値もないような「ジャルダン バガーテル」のコピーだ。比べてみると、なぜジャルダン バガーテルが失敗作(もう少しましだとの異論はあるが)で、エタニティが成功したのか分かる。どちらもキーキーいう石鹸っぽいところが不快だが、少なくともエタニティは上品ぶっていない。」と3つ星(5段階評価)の評価をつけています。
香水データ
香水名:エタニティ
原名:Eternity
種類:オード・パルファム
ブランド:カルバン・クライン
調香師:ソフィア・グロスマン
発表年:1988年
対象性別:女性
価格:30ml/8,250円、50ml/11,770円、100ml/15,400円
販売代理店ホームページ:ラトリエ デ パルファム
トップノート:グリーンノート、フリージア、セージ、マンダリン・オレンジ
ミドルノート:カーネーション、リリー、スズラン、水仙、マリゴールド、ヴァイオレット、ローズ、ジャスミン
ラストノート:ヘリオトロープ、ムスク、サンダルウッド、アンバー、パチョリ