エゴイスト プラチナム
原名:Egoiste Platinum
種類:オード・トワレ
ブランド:シャネル
調香師:ジャック・ポルジュ、フランソワ・ドゥマシー
発表年:1993年
対象性別:男性
価格:50ml/12,650円、100ml/16,940円
公式ホームページ:シャネル
エゴイストであることを反省した饒舌すぎる男の香り
1990年にシャネルから発売された「エゴイスト」は、史上初のメンズのためのサンダルウッドの香りでした。そのニュー・ヴァージョンとして1993年に発売されたのが「エゴイスト プラチナム」でした。
ウッディ・フローラル・ムスクの香りはシャネルの三代目調香師ジャック・ポルジュとフランソワ・ドゥマシーにより調香されました。
1991年に、「エゴイスト」によって北米のメンズ・フレグランス市場の頂点に駆け上ってやろうというシャネル帝国の野望は、当時北米で売れていたラルフ・ローレン「ポロ」やカルバン・クライン「オブセッション フォーメン」といった人気メンズ・フレグランスに見事に阻まれました。
15ヶ月間で予測より35%~40%の売り上げを達成したというシャネルの公式発表に対して、実際は、予測を遥かに下回る売り上げしか上げることが出来ませんでした。
その理由は、あまりにも斬新過ぎる香りに、保守的な北米市場がついてこれなかったという一点につきるのですが、そのことを踏まえて、シャネルは自社史上はじめて、消費者テストを敢行し、その結果生み出されたというのがこの香りの誕生の経緯でした。
ある種のフレグランスは二度生まれる
男性にとって、ある種のフレグランスは二度生まれます。一度目は、若き日に背伸びするために使用されることによって。そして、二度目は、ある程度、香りを飼いならすことが出来る男性に成長し、本当の魅力を引き出せるようになり、使用されることによって。
この香りは、その代表格といえます。
〝エゴイストであることを反省した饒舌すぎる男(華やかで弁舌さわやかな人を、フランスでは「プラチナのような人」と表現するという)〟とも言えるこの香りは、プチグレンの苦み走った輝きの中に、(ジヒドロミルセノールによる)ハーバルなラベンダーとローズマリー、ゼラニウムがひとまとめになった、ひんやりとしたアロマティックな芳香が満ち広がるようにしてはじまります。
心の奥深くから円やかに溶け合うように、オークモスがこの香りにフゼアの渋みを与えながらも、アーシィーなベチバーとシダーウッドがフットワークの軽さを漂わせてゆきます。とにかく饒舌な香りです。
クラリセージによりプチグレンと結び付けられたネロリがソーピィーに香り立ちながらも、(グリコール酸アリルアミルによる)パイナップルのようなフルーティーな側面を持つグリーンなガルバナムとコントラストを放つことにより、フゼアノートにきらめくような優しい輝きを与えていきます。
そして、この饒舌な香りは、フゼアノートが、スモーキーなアンバーとクリーミーなサンダルウッドにより円やかに温かく包み込まれていく中で、女性の白魚のような細くてしなやかな人差し指が、男性の口元にそっと添えられるように、安らぎに満ちた甘い官能の余韻を残しながら、だんだんと消えていきます。
ちなみこの香りが発売された当時、「プラティナム・コレクション」というマーヴィン・ゲイやロッド・スチュワートの名曲が入ったオムニバスCDが購入特典として付属されていました。
ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「エゴイスト プラチナム」を「淋しげなフゼア」と呼び、「けちなおじさま連中がもっているクレジットカードのような名前だ。よい香水には到底なれそうもない。実際、シャネルにしてはかなりひどいできだ。」
「トップまでの、つかの間の興味深いフローラル調のレザーノートは別にして、悲しげな男とまったく同じ匂いを放つ。そのつもりで作ったわけだが。まともなホテルに宿泊すれば、おそらくこの程度の香水は無料でバスルームの棚に備えられているだろう。」と2つ星(5段階評価)の評価をつけています。
香水データ
香水名:エゴイスト プラチナム
原名:Egoiste Platinum
種類:オード・トワレ
ブランド:シャネル
調香師:ジャック・ポルジュ、フランソワ・ドゥマシー
発表年:1993年
対象性別:男性
価格:50ml/12,650円、100ml/16,940円
公式ホームページ:シャネル
トップノート:ラベンダー、ローズマリー、ネロリ、プチグレン
ミドルノート:ガルバナム、クラリセージ、ジャスミン、ゼラニウム
ラストノート:アンバー、サンダルウッド、オークモス、ベチバー、シダー