こうして、ダニエル・クレイグ時代は本格化しました。
下のスーツは、作中カットされたトム・フォードのグレイのウールスーツ(リージェンシー・モデル)です。小さな白ドットのネイビータイをウィンザーノットで締めています。
この作品により、ダニエル・クレイグは、21世紀のメンズ・ファッションのスタイル・アイコンとして、ブラッド・ピットと双璧をなす存在となりました。そして、何よりも、メンズ・ファッションにとって、スーツ・スタイルは絶対に避けては通れない〝マスト〟であるということを再認識させてくれたのでした。
ジェームズ・ボンドのファッション7
もうひとつのアイコニック・スーツ
- トム・フォードの(高級感溢れるブラックに見える)ミッドナイトブルーのシャイニー・モヘアトニック・スーツ、ノッチドラペル、段返りの3つボタン
- ホワイト・ポプリン・ドレスシャツ
- トム・フォードのブルーとホワイトのバスケット織りのタイ
- チャーチのフィリップ、ブラックカーフレザー、カップトゥ・オックスフォード
- オメガのシーマスター・プラネット・オーシャン・600mコーアクシャル・クロノメーター
このボンドスーツで、プラダのドレスを着たカミーユ(オルガ・キュリレンコ)と、まるでパーティーの余興のような感覚で、飛行機に飛び乗り、戦闘機と戦闘ヘリ相手にスカイ・アクションを繰り広げてゆきます。
今回のボンドがよりカッコ良く見えるのは、秘密諜報員のカミーユが、まるでボンドの相棒のように堂々と敵に立ち向かっていく姿に説得力があったからでした。
そして、最後には、スカイダイビング、ボリビアの砂漠を放浪、荒野のバスに乗り、高級ホテルにボロボロのスーツとドレス姿で戻ってくるのです。ボンドスーツとドレスで戦う二人を鑑賞する、これぞボンドムービーの醍醐味なのです。
そして、最高にカッコいいファイティング・スタイル
ボンドは、当時流行していたセブン・フォー・オール・マンカインドのジーンズを履いています。通称〝セブン〟と言われたこのブランドは、2000年にロサンゼルスで創業された美脚ジーンズ・ブランドです。2009年3月に代官山に旗艦店がオープンしましたが、2011年4月に閉店しました。
このボンドのファイティング・スタイルは、21世紀の〝メンズ・スタイルの永久欠番〟と言っても良いほど素敵です。特に、バラクータではなく、それを更にトム・フォードのデザイナーとしての力量を発揮し、モードにしたジャケットのクールネスは半端ありません。
野暮ったいブルゾンと、モードなブルゾンの違いを知る絶好の教科書とも言えます。
ジェームズ・ボンドファッション8
ファイティング・スタイル
- バラクータのG4ハリントン・ナイロン・ジャケットをモチーフにした、トム・フォードのダークブルー・コットンジャケット、ジップアップ
- サンスペルのダークネイビーのリヴィエラ・ポロシャツ
- セブン・フォー・オール・マンカインドのダークブルー・ブーツカットジーンズ
- プラダのブラック・サフィアーノ・レザーベルト
- チャーチのダークブラウン・スウェードのライダーⅢ、ラバーソール
- トム・フォードのサングラス、TF108アビエーター
- オメガのシーマスター・プラネット・オーシャン・600mコーアクシャル・クロノメーター
ジェームズ・ボンドファッション9
ダブルのコート
- トム・フォードの10ボタン・ブラックヘリンボーン・ウールコート、ダブル
- トム・フォードの黒×茶のグレン・プレイド・シルクスカーフ
- トム・フォードの楕円形のパターンのブラック×シルバータイ
- レザーグローブ
- チャーチのフィリップ、ブラックカーフレザー、カップトゥ・オックスフォード
宿敵が着ているクールなレザーコート
作品データ
作品名:007 慰めの報酬 Quantum of Solace(2008)
監督:マーク・フォースター
衣装:ルイーズ・フログリー
出演者:ダニエル・クレイグ/オルガ・キュリレンコ/ジェマ・アータートン/マチュー・アマルリック