コロマンデル|ホワイトチョコとパチョリに素肌が磨き上げられ、絶世の美を手にする香り

シャネル
©CHANEL
シャネル
この記事は約6分で読めます。

コロマンデル

原名:Coromandel
種類:オード・パルファム
ブランド:シャネル
調香師:ジャック・ポルジュクリストファー・シェルドレイク
発表年:2007年
対象性別:ユニセックス
価格:75ml/37,400円、200ml/66,000円
公式ホームページ:シャネル

スポンサーリンク

ココ・シャネルが愛したコロマンデル屏風

シャネルはコロマンデル屏風のコレクションを32双収集していました。©CHANEL

ココ・シャネルが最も愛した室内装飾品。それがコロマンデル屏風でした。©CHANEL

©CHANEL

2007年にシャネルのプレステージ・コレクションとして「レ ゼクスクルジフ ドゥ シャネル」がスタートしました。その最初の10種類の香りのひとつとして「コロマンデル」(オード・トワレ)が、シャネルの3代目専属調香師ジャック・ポルジュクリストファー・シェルドレイクによって調香されました。

ココ・シャネル(1883-1971)は、生前にオテル・リッツ・パリの3階のスイートと、そこから数十メートル離れたカンボン通りのアパルトマンの二箇所に住居を構えていました。

自身がデザインする洋服においては、派手な装飾を嫌い、慎み深いエレガンスの創造を標榜していた彼女が、最も愛していたインテリア・デザインのひとつがコロマンデル屏風(中国風のラッカー塗装された屏風。その漆技法は明朝(1368-1644)末期に中国内陸部の湖南省で生まれたもの。ヨーロッパに初めて流れてきたのは1571年と考えられている)でした。

スポンサーリンク

こころもからだも、うつくしく磨き上げられていく至福の香り

©CHANEL

私は18歳のころから、中国の屏風(スクリーン)を愛していました。はじめて中国の美術品を扱っているお店で、コロマンデル屏風を見たとき、失神してしまいそうなほど幸せいっぱいな気分に満たされました。そして、何も考えずに即決で購入しました。

ココ・シャネル

彼女は、コロマンデル屏風のコレクションを32双収集していました。そして、カンボン通りのアパルトマンには、そのうちの8双のコロマンデル屏風が部屋一面に飾られていました。

その豪華絢爛たる、一見するとシャネルの精神とは、かけ離れた芸術様式からインスパイアされた、ピリッとしたフルーツの皮、アンバー、磨かれた木の香りが混ざり合った、分類不能な豊かな香りそれが「コロマンデル」です。

ジャック・ポルジュがシャネルの専属調香師になり、カンボン通りのシャネル本店の三階にあるココ・シャネルのアパルトマンを訪れた時に、コロマンデル屏風に圧倒され、1984年に「ココ」が誕生しました。そのアイデアを更に進化させたのがこの香りです。

スポンサーリンク

素肌から鼻の間で、十変化する〝魅惑のパチョリ〟

4枚の写真全てが1937年のココ・シャネルです。©CHANEL

つまり54歳のココ・シャネル。ナチス・ドイツによりパリが陥落する3年前の写真です。©CHANEL

この香りが乗る自分の肌から花に到達する短い道のりの間に、十人のパチョリを見ることが出来ると言うくらいに、「コロマンデル」はパチョリの香料としての魅力を最大限に引き出すことに成功した、力強くもリッチなオリエンタルの香りです。ここにあるパチョリからは、濃厚でオリエンタル、そして芳醇な香りに、木、湿った土、そしてカビの香りがほのかに感じることが出来ます。

そんな飼いならせないからこそ、最も美しいパチョリは、太陽のように輝き、暗黒のようにダークな、まさにココ・シャネルの存在そのものとも言えます。

この香りは、実に華やかにビター・オレンジとベルガモットが爆発する中、落下傘のような砂糖の雨に降られ、差し込むセージのきらめきと共に、ラッカーのような香りからはじまります。

パチョリは早くも存在を示し、甘いシトラスシャワーの中に、ベチバーとサンダルウッド、アンバーを呼び込んでゆきます。それはどこかモーニングコーヒーを浴びているようでもあります。

キャラメルのようにコクがあり甘く酔わせるアンバーは、甘く燃えるフランキンセンスと濃厚で樹脂のようなバニラの甘さを湛えたベンゾインと、繊細なる甘やかさの三重奏を奏でてゆきます。

そこにまるで絶えず琥珀色の輝きで照らされるように、爽やかで優しいパウダリーなアイリスを中心に、ローズとジャスミンといったフローラルが、アーシィーなパチョリとしっとりと溶け合いホワイト・チョコレートのような香ばしさを引き立たせていきます。

パチョリは、だんだんとコロマンデル屏風の色彩と同じように、スパイシーでドライかつ、極めてシックでエレガントでありながら、温かみのある官能性を感じさせる、息を呑むほどに魅惑的な、言葉では形容しがたい領域の〝年を重ねたもののみが生み出せるエレガンス〟を香りにより体現してゆきます。

そして、アンバーとパチョリが、ビタースイートなリッチな温かさを生み出していく中で、〝神の国がもし甘かったなら、こんな香りがするのかしら〟と言わんばかりに、浮遊感を与えるバニラパウダーにより、天に向かって昇華するような感覚と共にパチョリは真っ白に燃え尽きてゆくのです。限りなくグルマンに近いシャネルの香りとも言えます。

2016年9月には、オード・パルファム・ヴァージョンが発売され、これが現行品となっています。

ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「コロマンデル」を「パウダリーパチョリ」と呼び、「2007年初頭にシャネルが発表した6つの新作の中で、クリストファー・シェルドレイクの特徴が明らかにいちばん多く感じられるのがこれ。20年間をクエスト社で過ごし、主にセルジュ・ルタンスの画期的な作品群を作り出した後、母校のシャネルに最近戻ってきた」

「ゲランを初めとして誰もが彼に足並みをそろえ、模倣という最高の賛辞を贈ったことは、たいそう楽しかったに違いない。私の中ではこのコロマンデルは、「ボルネオ1834」をシャネルの規範の中で再解釈したものと思われる」

「控えめで、より豊かで、飽和してしまわず、オリエンタル調が抑えられている。パチョリがふんだんに使われているので、「インドの蛾」が一マイル以内には寄りつけないようになっているが、どんな調香師でもまねしたいと思うような方法で、奔放な土臭さに陥らないよう作られている。粉のホワイトチョコレートがあれば、コロマンデルのような香りだろう。すばらしい」と4つ星(5段階評価)の評価をつけています。

スポンサーリンク

香水データ

香水名:コロマンデル
原名:Coromandel
種類:オード・パルファム
ブランド:シャネル
調香師:ジャック・ポルジュクリストファー・シェルドレイク
発表年:2007年
対象性別:ユニセックス
価格:75ml/37,400円、200ml/66,000円
公式ホームページ:シャネル


トップノート:シトラス類、ネロリ、ビター・オレンジ
ミドルノート:ジャスミン、ローズ、パチョリ、ニオイイリスの根茎
ラストノート:フランキンセンス、ベンゾイン、アンバー、ウッディ・ノーツ、ムスク、オリバナム(フランキンセンス)、ホワイト・チョコレート