キャメルヘア・トレンチコート
ルチア・ルック6 トレンチコート
- キャメルヘア・トレンチコート。襟を立てて、かなりのクールさを演出
- 一連パール
- 白のハイゲージのセーター
- 黒のショルダーバッグ
- 黒のレザーのショートグローブ
- ロファーパンプス
マックスと再会してしまったルチアは、それ以後、ほとんど話さなくなります。心底、憎しみだけを抱いてきたあの男に対して、奇妙な親近感が、彼女に沸き起こってきます。それを払いのけようと、ウィーンの街並みを歩き、ふと立ち寄ったアンティークショップで、あの忌まわしい記憶が、鮮烈に蘇ってきました。マックスに与えられた服に似たピンクのワンピースがそこに在りました。この時、彼女は恐ろしい真実に気づいたのでした。私は彼を憎んでいるのではなく、愛しているのだという真実を。そして、躊躇なくそのワンピースを購入するルチア。彼女は、この日のために12年間生きてきたことを知るのでした。
しかし、この時に着ているトレンチコートの美しさは、ファッション誌ではあまり取り上げられていないのですが、この物語のもう一つのアイコニック・スタイルとも言えます。それはトレンチコート・アイコンとしての要素を100%満たしています。1.エレガントな女が、2.アップスタイルで、3.ヨーロッパ的な背景に、4.貴族的な物腰で、5.男性を隣に立たせず、独り歩くところにあります。
『元フランス外人部隊』フィリップ・ルロワ
本作において元SS将校の弁護士クラウスを演じたフィリップ・ルロワ(1930-)のファッションがかなり決まっています。片眼鏡で、基本的には、モノトーン・スタイルで登場する彼の、レザートレンチコートや、ダブルのチェスターフィールドコート、そして、ピンストライプのスーツは、その姿勢の良さもあって、今見ても違和感がないほどに、洗練されて見えます。
ちなみにこのフィリップ・ルロワという人は、『黄金の七人』(1965)の教授役でも有名なのですが、1954年にフランス外人部隊に入り、インドシナ、アルジェリアを転戦した本物の戦争の犬だったのです。そういう観点から見ると、この人の面構えが、本作中最も緊張感溢れているのも納得がいきます。