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作品データ
作品名:オーシャンズ11 Ocean’s Eleven (2001)
監督:スティーブン・ソダーバーグ
衣装:ジェフリー・カーランド
出演者:ジョージ・クルーニー/ブラッド・ピット/マット・デイモン/ジュリア・ロバーツ/アンディ・ガルシア/ドン・チードル/スコット・カーン/エリオット・グールド/カール・ライナー
ANTOビバリーヒルズ=ハリウッド・シャツの帝王
ラスティ・ライアン・スタイル8 ダークグレースーツ&パープルシャツ
- ダークグレー・セミソリッド・スーツ。シルクとウール混合、スプリット・ラペル(70年代前半のトレンド)、シングル
- パープル・コットン・ドレスシャツ。Antoビバリーヒルズ、ロングポイントカラー
- オプアート的なイエロー・サテン・シルク・タイ。Antoビバリーヒルズ
- ブラックレザー・ダービー・シューズ
本作でブラッド・ピットが着用しているシャツとネクタイのほとんどは、ロデオ・ドライブのすぐ近くにあるAntoビバリーヒルズのものです。ここは、1990年代以降のハリウッド映画及びTVドラマのオシャレ・シャツの60%以上を提供しており、「ハリウッド・シャツの帝王」と呼ばれています。
『カジノ』『ヒート』『ファイトクラブ』『マトリックス』『タイタニック』『ブロウ』『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』『ラスト・サムライ』『Mr.&Mrs. スミス』『アメリカン・ギャングスター』『オーシャンズ13』『ミルク』『パブリック・エネミーズ』『ソルト』『ツーリスト』『MIB3』『ジャンゴ 繋がれざる者』『ハンガー・ゲーム』『ホワイトハウス・ダウン』『ゴーン・ガール』『アメリカン・スナイパー』など提供作品を挙げればきりがありません。
オーシャンズ・シリーズの醍醐味は変装。
本作において、大学生のようなファッションに身を固めるライナス・コールドウェル(マット・デイモン)=通称〝ゴールド・フィンガー〟。こげ茶のローゲージのタートルネックに、こげ茶のライン入りの、ブラックレザーのジャンパー。
ここまでのライナスのファッションは、全てこの後のシーンの変装のためにありました。
そして、賭博委員会の調査員に変装するライナスと、変装のための演技指導をつけるラスティの掛け合いの面白さ。このパターンは以後のオーシャンズ・シリーズの醍醐味になっていきます。
「質問されて考える時の目線は?」「伏し目は嘘つき、上目は無知な証拠だ。答えは短く、体を揺らすな。目を見ろ、だがにらむな。明確に話せ。だが印象は薄く、気に入られろ。だが覚えられるな。」
ボストン型の眼鏡に、ノッチドラペルのダークグレーのスーツ。コートは、グレーのチェスターフィールドコート。中には、白地にブルーと赤のグラフチェックのシャツ。ネイビーのネクタイ。バーガンディーのベスト。そして、ブラックレザーシューズ。ファッションとラスティのアドバイスが、大学生ファッションのライナスを、大人の男へと変えた瞬間です。
そして、ラスティ自身も、ドクターに変装して現れます。それこそが、まさにアドバイスしたイメージ通りの人として。オースティン・パワーズのリハーサル用のかつらをつけて、ブラッド・ピットのスター性を見事に消し去っています。かけている眼鏡はポール・スミスのウッドリーです。
キモノ・スーツという新たな発想
テリー・ベネディクト・スタイル6
- カラーのないブラック・スーツ
- 胸ポケットにポケットチーフ
- 透けている東洋的なブラックベスト
- ウイングカラーの白シャツ、ダブルカフス
- シャンパン・ゴールド・タイ
最後のベネディクトのファッションこそが、モノトーンに様々な工夫を凝らした実に繊細かつノーブルなスタイルです。ダニー・オーシャンのシンプルなブラック・タキシードとは対照的なそのスタイルに、ほとんどの観客は、違和感を感じることでしょう。しかし、『オーシャンズ・シリーズ』のベネディクト・ルックには、これからのメンズ・ファッションに関わるものに対しての預言者的なヒントが散見されるのです。