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【イヴ サンローラン】ボディ クーロス(アニック・メナード)

イヴ・サンローラン
©YSL Beauté
イヴ・サンローラン
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ボディ クーロス

原名:Body Kouros
種類:オード・トワレ
ブランド:イヴ・サンローラン
調香師:アニック・メナード
発表年:2000年
対象性別:男性
価格:50ml/7,500円、100ml/10,500円

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大都会でクールに戦う、21世紀の剣闘士のための香り

©YSL Beauté

1981年に発売され大ヒットしていたイヴ・サンローランのメンズ・フレグランス「クーロス」(ピエール・ブルドンによる調香)のミレニアム・ヴァージョンとして、2000年に「ボディ クーロス」が発売されました。

ストイックな大人の男のほのかにスパイシーなオーラが、ゆっくりとウッディーな温かみと甘さで包まれていく、そんな渋い甘さをベンゾインで表現したオリエンタル・スパイシーの香りは、アニック・メナードにより調香されました。

〝クーロス(Kouros)〟とは古代ギリシア語において〝青年〟を意味します。そしてギリシア美術史においては、アルカイック期(紀元前650‐前500年)に創られた理想的な肉体を持つ青年裸体像を指します。つまりこの香りのテーマは、キャンペーン・フォトそのままに〝理想の男性の肉体〟なのです。

さらにより的確にこの香りについて形容するならば、当時流行していた総合格闘技をする男達の香りなのです。研ぎ澄まされた肉体で、対戦相手の隙を伺い、打撃を叩き込みつつ、関節技に持ち込むチャンスを待つ〝静かなる闘士たち〟。そんな男たちの肉体の躍動を見て、自らの肉体を研ぎ澄まし、ボディメイクする現代女性の価値観にもぴったりフィットする危険すぎる香りです。

今、この香りが日本のイヴ・サンローランで販売されていない理由が分かります。

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五感が冴えているように勘違いさせる、五感を騙す香り。

アルベール・エルバスとマリオ・ソレンティによる、1999年春のイヴ・サンローランのキャンペーン・フォト。

同上

同上

イヴ・サンローランの〝最も危険な遊戯〟は、良くも悪くも、着用者に対しても、周りの人に対しても、心とからだを解放する香りです。つまり五感が冴えているように勘違いさせる、五感を騙す香りであり、ブティックに置いてしまう訳にはいかない香りです。

そんな「ボディ クーロス」は、どこまでも澄み渡るようなユーカリの爽快な清涼感と、心の奥深くにまで染み込んでいきそうなスピリチュアルなフランキンセンスがひとまとめになったミステリアスな香りからはじまります。静かに佇んでいるが、存在感のある独特なフレッシュ感が広がっていきます。

すぐにスーッとキレのあるカンファーウッドが流星のように、素肌に降り注いでゆきます。この香りの〝危険な魅力〟は、このカンファーウッドがクラリセージと交じり合い、クールビューティーな魅力を発散させるところにあります。

さらに〝最も危険な魅力〟が純粋培養されてゆきます。それはやがて穏やかなベンゾインと熱っぽいスターアニスとクマリンと溶け込み、ロマンティックなエーゲの海に舞い落ちる流星のような、うっとりするような、辛くて苦い甘やかさで満たしてくれることによります。

磨き上げた肉体と肉体がぶつかり合う瞬間に生まれる、神話のようなうつくしさを、男性の肉体に立ち上るオーラとして、包み込んでゆく香り「ボディ クーロス」。

それは、ストイックな男性が勝利を掴んだ瞬間、敗者に対しても敬意を示し、ノーサイドの甘い微笑みを投げかける、そんな悩ましい色男でありながら、落ち着きのある理想の男性像を感じさせる穏やかなオーラを広がらせてゆきます。

このクールなユーカリと温かいベンゾインのハーモニーが織り成すミステリアスな官能性の中に存在する、何よりも恐ろしいものは、最初から最後まで、その存在を忘れてしまいそうになるほど、当たり前に存在しているスモーキーなフランキンセンスの存在の耐えられない軽さです。

今では、失われた王国の香りではありますが、間違いなく、アニック・メナードの偉大性を感じさせる、唯一無二の斬新さと、新しい素肌での親和性を教えてくれる〝幻の名香〟です。

ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「ボディ クーロス」を「リコリス・ラム」と呼び、「私の同僚で、知的で申し分のない学歴の男がそっと打ち明けてくれたのだが、ベッドでガールフレンドに香水を大量にふりかけるのが趣味だそうだ」

「製造を終了したジャン・ミッシェル・デュリエの「ヨージ オム」から、むしりとった要素が気になるが。おかしいのは、BKはアニック・メナードの調香で、彼女の「ロリータ レンピカ」は、そもそも「ヨージ オム」にインスピレーションを与えた。つまりこれで引き分けということになる」と4つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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香水データ

香水名:ボディクーロス
原名:Body Kouros
種類:オード・トワレ
ブランド:イヴ・サンローラン
調香師:アニック・メナード
発表年:2000年
対象性別:男性
価格:50ml/7,500円、100ml/10,500円


トップノート:ユーカリ、フランキンセンス
ミドルノート:チャイニーズ・シダー、クラリセージ、メース
ラストノート:ベンゾイン、カンファーウッド(クスノキ)