イブ(ニング)・サンローランの真骨頂
アルレット・スタイル7 イブニング・ドレス
- 白テンのストール
- 白シルクの美しいドレープのストラップドレス
- 白ベルト、バックルにビジュー
この作品におけるアニー・ドゥプレーの最高のアクセサリーは、豪華かつ個性的なルネ・ロンゲのジュエリーではなく、いつも隣にいるシャルル・ボワイエでした。
70代の老人でありながら、お洒落を忘れないファッション・センスの良さ。女性にとって、ケーリー・グラントもそうなのですが、50代以上の魅力的な男性の友人がいるということは、ダイヤモンドに匹敵するステイタスになります。そして、最近、そんな魅力的な年上の男性の存在が、少なくとも日本においては減ってきているように感じます。若さを武器にするのではなく、年を重ねた〝父性〟を醸し出せる男性こそ、本当の意味で魅力的な男性なのではないでしょうか?
そういう意味においては、本作のシャルル・ボワイエは、男性にとっては〝エイジング・アイコン〟なのかもしれません。もし、本作から、シャルル・ボワイエの存在が消えたならば、この作品はとてもつまらないものになったことでしょう。
シャルル・ボワイエというエイジング・アイコン
シャルル・ボワイエ(1899-1978)にとって、本作が最後に出演したフランス映画になりました。彼はフランスのソルボンヌ大学の哲学科を卒業した後、アニー・ドュプレーやジョン=ポール・ベルモンドも学んだフランス国立高等演劇学校で演劇を学び、1920年に舞台及び映画デビューし、1934年にハリウッド進出しました。代表作は、『歴史は夜作られる』(1937)、『邂逅』(1939)、イングリッド・バーグマンと共演した『ガス塔』(1944)です。
大女優との共演で力を発揮するアメリカ人にはないムードのある美男子スターとして人気を博しました。実生活においては、1934年にディナー・パーティーで初めて会ったイギリス人女優パット・パターソンと結婚し(会って二週間で婚約)、生涯を添い遂げます。
1978年に最愛の妻が癌で死去した2日後に、セコナールを大量に服用しシャルルも後追い自殺しました。それは彼の78歳の誕生日の2日前のことでした。ちなみに二人の唯一の息子ミシェルは、1965年にわずか21歳で、恋人と喧嘩してやけっぱちになり、ロシアンルーレットをして死亡しています。
未亡人ルックに真紅のハンドバッグ
アルレット・スタイル8 未亡人・ルック
- 黒のクローシュに、黒ドットのヴェール
- ブラックスカートスーツ、ダブル、くるみボタン、コンケーブドショルダー
- 黒のレザー手袋
- 赤のレザーのハンドバッグ