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【エルメス】アンブル ナルギレ(ジャン=クロード・エレナ)

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アンブル ナルギレ

原名:Ambre Narguile
種類:オード・トワレ
ブランド:エルメス
調香師:ジャン=クロード・エレナ
発表年:2004年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/41,360円
公式ホームページ:エルメス

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焼きたてアップルパイとラムレーズンの夢の競演

©Hermès

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東洋の香りを西洋で表現したアンバーは、温かく官能的で、包み込むような、ほとんど肉欲的な香りをもっています。私はこのアンバーに、人々がゆっくりとくゆらす水たばこの匂いに果物や蜂蜜、スパイスの香りが溶け合って鼻をくすぐります。揺らめく紫煙に甘い陶酔感が広がっていく活気ある場所の雰囲気を再現することによって、わたしの愛する東洋の思い出と結びつけたいと思いました。

ジャン=クロード・エレナ

地中海の庭」の成功により、2004年にジャン=クロード・エレナエルメスの初代専属調香師に就任することになりました。

そして、香水のインターナショナル・マーケティング・ディレクターのエレーヌ・デュブリュールと香水部門の責任者ヴェロニク・ゴティエ(現ロレアル・グループのアルマーニ・ビューティーの最高責任者)は、2004年の年間テーマである「ファンタジー」(La fantaisie)にあわせた〝香りのファンタジー〟を生み出そうと考えたのでした。

かくして三人で作り出したのが≪嗅覚の詩≫とも言える究極のフレグランス・コレクション『エルメッセンス』です。「アンブル ナルギレ」は、「ポワーブル サマルカンド」、「ローズ イケバナ」、「ベチバー トンカ」と共に同年に第一弾として発売されました。

「アンブル ナルギレ」とは、〝アンバー・フレーバーの水タバコ〟という意味です(水タバコには、コーヒー、フルーツ、フローラル等の様々なフレーバーがあります)。水タバコからインスパイアされたオリエンタルな香りです。

とても興味深いのは、この四つの香りは、それぞれ特定のファブリックを想起させることを意図して作られているところにあります。

  • 「ローズ イケバナ」→シルク
  • 「ポワーブル サマルカンド」→ベルベット
  • 「ベチバー トンカ」→ウール
  • 「アンブル ナルギレ」→カシミヤ
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いまだかつて存在しなかったグルマン


21世紀の抽象表現主義であり、まったく天才の成せる業としか言いようがない「アンブル ナルギレ」。このような甘美な完成度の高い香水は、熟練したバターキャラメルのように、肌の中に円やかに溶け込んでゆきます。フレンチ・レストランのお供にも最適です。

グルマンの中でも、最もつける人を選ぶ香りであり、いまだかつて存在しなかったグルマンである。

チャンドラー・バール

ジャン=クロード・エレナの恐ろしい所は、水彩画のような香りを生み出すことだけでなく、びっくりするような香料の組み合わせで、〝夢のような香り〟を生み出せるところにあります(「オ パフメ オーテヴェール」のヘディオンとイオノンがグリーンティーの香りを生み出したように)。

「アンブル ナルギレ」は、アンバー(アンバーグリスではなく)が、温かな太陽のように、オリエントの世界を照らす中、ハニーとシナモン、ジンジャーがホワイト・オーキッドに遭遇し、言い知れぬ風趣を添えてゆく甘くてスパイシーなオーキッドの香りからはじまります。

この香りが素晴らしいのは、焼きたてのアップルパイとご対面する至福のひと時の感覚を、全身で感じ取れるところにあります。それもどっしりとアップルパイではなく、ときおりそれを感じさせる所に、〝儚いグルマン〟という新しい感性のきらめきがあります。

すぐにキャラメルとバニラ、トンカビーンが加わり、これから先のオレンジ色の美しい世界を予感させる〝神秘のアンバー〟が、肌を透かして心を揺り動かすように広がってゆきます。

そして、煙渦巻く水たばこを連想させる燻したセサミ×ラブダナムと、豊潤なラムが注ぎ込まれてゆくのです。その瞬間、太陽が世界を包み込むような夕陽となり、すべてがオレンジ色に染まっていくのです。

まさにそれは酔わせるような、安らぎと戦慄を覚えさせる温かな甘やかさに身も心も征服されていくのです。あくまでメインは、オリエンタルなスパイシーラム、でありながら、ときおり感じさせるアップルパイの優しいグルマン、このコントラストがこの香りを〝常識にとらわれないグルマン〟へと昇華させているのです。

やがて世界が太陽に支配された後にやって来る、漆黒のラムレーズンに浸された、まろやかなアップルパイの余韻にすべてが染め上げられてゆくのです。

まさに表参道のエルメスにやってきた、青山のGRANNY SMITHのアップルパイとも言えます。つまりはカシミアの温もりに満たされた究極のラグジュアリー・アップルパイの香りなのです。

ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「アンブル ナルギレ」を「ドライフルーツ」と呼び、「私はアンバーに関してあまりはっきりした考えはない。いい香りなのは確かだが、一般的に重く単純、平板過ぎて、もう少しさりげない香りがほしくなってしまう。でもこの香水は例外だ。くせがなく、アンバーとはいえないほどだが、干したプラムと数種のウッディアンバーが心地いい。特に印象的ではないが、温かみを感じる。」と3つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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香水データ

香水名:アンブル ナルギレ
原名:Ambre Narguile
種類:オード・トワレ
ブランド:エルメス
調香師:ジャン=クロード・エレナ
発表年:2004年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/41,360円
公式ホームページ:エルメス


シングルノート:ハニー、ベンゾイン、ラブダナム、ムスク、バニラ、キャラメル、トンカビーン、セサミ、シナモン、ラム、クマリン、ホワイト・オーキッド