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オードリー・ヘプバーン

映画の中のオードリー・ヘプバーン・ファッションの全て④<ティファニーで朝食を>

オードリー・ヘプバーン
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ジバンシィのドレスとオリバー・ゴールドスミスのサングラス

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このドレスは、とても60年代風だ。フロントは簡素で、エレガントで、クリーンで、しかし、バックは首のラインを強調させる。エスニックとパリジャンの間にあるどこにもなかった女性的なやわらかさがある。

リカルド・ティッシ(現バーバリーのクリエイティヴ・ディレクター)

オードリー・ヘプバーンは、30歳を越えたときに、色々な役柄を演じることに挑戦したいと考えました。自分の年に相応しい、その時にしか出来ない役柄があるはずだと考えました。彼女にとって、ホリーという19歳の娘の役柄(原作にはホリーについて「十六歳から三十歳のどの年齢と言われても不思議ではない」と書かれている)こそ、30過ぎの女性の洗練によって、「新しい女性像」に光と影を生み出すことが出来るだろうと考えたのでした。光と影の存在が、その役柄に生命力を与え、60年代を超越したアンチエイジングなファッション・アイコンを生み出したのでした。

ホリー・ゴライトリーは、夜通し遊んで気分が沈んだ朝、人気のない五番街五十七丁目のティファニーのショーウィンドーを眺めながら、朝食のデニッシュを食べながら、コーヒーを飲むことが大好きです。オープニングシーンは、ブラック・イブニングドレス姿で彼女がそのようにして朝食を食べるシーンから始まります。原作にないこのオープニングシーンが、オードリー・ヘプバーンの60年代のイメージを作りました。

ユベール・ド・ジバンシィは、オードリーの長い首が生かせるように襟元にゆるやかな丸みを持たせました。これはまた平板なバストを巧みにカバーする効果も生みます。背中をオープンにすることにより前面のクールさと背面のセクシーさのギャップを生み出します。ハイウエストに絞った腰周りにギャザーを入れ、流線形のラインを構築しつつ裾をしぼりました。そして、黒のオペラグローブで全体のシルエットを黒一色が生み出すクールさで引き締めます。そして、最後に、オリバー・ゴールドスミスのサングラス「マンハッタン」を持ってきました。エレガントでセクシーな洗練された女性の誕生です。

『ティファニーで朝食を』のオードリー・ファッションについては、『ティファニーで朝食を』1(オードリー・ヘプバーンとブラックドレスについて)をご覧ください。

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4度目のジバンシィのリトルブラックドレス

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4度目にして最高傑作と言われるリトル・ブラック・ドレスが本作において登場します(黒のアリゲーターローヒール・パンプスは、ロジェ・ヴィヴィエ)。そして、オープニングのブラックドレスとの相乗効果により、60年代にブラックドレスが大流行するきっかけを作ることになりました。

リトルブラックドレスは元々は、1926年に、ココ・シャネルが43歳の時、発明したドレスでした。それをアメリカ版『ヴォーグ』誌が掲載し、革命的な「シャネル・フォード」と記したことが事の始まりでした。このドレスには2つの革命的な要素がありました。1つは、喪服の色でしかなかった黒をモードな色にしたこと。そして、もう1つは誰にでも着られるシンプルなデザインにしたことでした。

黒は全てに勝る色です。その黒をモードに着こなす秘訣は、絶妙なサイズ感と、黒の選び方にあります。黒ほど生地感が伝わりやすい色はありません。「安い黒」は、きつすぎたり、テカテカ光っていたり、すぐに色落ちしたりします。

『ティファニーで朝食を』のオードリー・ファッションについては、『ティファニーで朝食を』1(オードリー・ヘプバーンとブラックドレスについて)をご覧ください。

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ベッドのシーツさえもモードにしてしまうオードリー

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トーガ・パーティー・シーンにおいて、オードリーは、ベッドシーツを裸体に巻きつけトーガにして、ファッショナブルなアイテムへと転化しています。もはや布切れ一枚だけでもモードに着こなせるオードリーのオーラに圧倒されます。

『ティファニーで朝食を』のオードリー・ファッションについては、『ティファニーで朝食を』2(オードリー・ヘプバーンとトレンチコートについて)をご覧ください。

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オードリー・ヘプバーンとトレンチコート


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映画の中で印象深いトレンチスタイルは、『ティファニーで朝食を』のオードリー・ヘプバーンの50年代風の着こなし。ロマンティックだった『シェルブールの雨傘』のカトリーヌ・ドヌーヴ、『カサブランカ』のイングリッド・バーグマン、『クレイマー・クレイマー』のメリル・ストリープ、『愛の嵐』のシャーロット・ランプリング。私が選ぶトレンチコートのベストドレッサーは、やはり、『ティファニーで朝食を』のオードリー・ヘプバーン、『シェルブールの雨傘』のカトリーヌ・ドヌーヴ、それからクラウディア・シファーだね。

クリストファー・ベイリー(当時バーバリーのクリエイティブ・ディレクター) ヴォーグ・ニッポン2004年2月号より

女性として生まれたからには、華やかな大都会で生活してみたい。たとえそれが、破滅への道につながろうとも、それが一瞬の輝きであろうとも、本望だと考える心。そんな気持ちを表現する女性の戦闘服が、いつの時代でもトレンチコートなのでしょう。少女はトレンチコートを着て大人になるのです。

ハイウエストでベルトを締めたバーバリーのトレンチコートの着こなしが今見ても新鮮です。

雨の中で、抱き合いキスをするホリーとポール。そして、名無しの猫。濡れるトレンチコートがなぜか美しい。雨と涙と笑顔が似合うファッション。それがトレンチコートです。女性にとって、もっとも時間をかけて選ぶべきファッション・アイテム。それがトレンチコートです。

トレンチコートが、みすぼらしくしわしわで、色彩もありふれた大量生産カラーであるならば、あなたは洗練された女性には見えません。トレンチコートとは、もっともごまかしの利かないファッションなのです。そして、感性が低い人にとって、最も安くでカッコよく見せることが出来ると過信してしまうアイテムなのです。

『ティファニーで朝食を』のオードリー・ファッションについては、『ティファニーで朝食を』2(オードリー・ヘプバーンとトレンチコートについて)をご覧ください。