岸壁でウツボを惨殺するアラン・ドロン
アラン・ドロン・スタイル2
- ベージュ色のブルゾン
- グレーのトラウザー
- 鼈甲のサングラス
シチリア生まれの一族の中で、一人だけよそ者扱いされている長男の嫁ジャンヌ。「人殺しに興味があるんだろ?」とジャンヌの誘惑にのっかかってしまうサルテ。そして、どんな男でもこのような環境におかれたらもうこうなるしかないという説得力に満ちたシーンがはじまります。
ファム・ファタールの存在の恐ろしさは、滅びの瞬間が、性愛の絶頂にあることなのです。
イリナ・デミックのダッフルコート
『史上最大の作戦』でお色気たっぷりに自転車をこぐレジスタンスの闘士を演じていたイリナ・デミック(1936-2004)が満たされない人妻ジャンヌ役で登場します。彼女の役柄はファム・ファタールです。彼女がサルテの妹にドラッグストアで会う時のダッフルコートの形がとても面白いです。
ダークスーツで登場するアラン・ドロンのダンディズム
アラン・ドロン・スタイル3
- ブラック・チェスターフィールドコート
- 透かしストライプのブラックスーツ
- ブラックニットタイ
- 内羽根のレザーシューズ
- 鼈甲のサングラス
無言で佇んでいる時のアラン・ドロンが漂わせる虚無感。これが彼の魅力の本質なのです。より別の言葉で形容すれば影があるということです。
マルク・ポレル(1949-1983)がつけているサングラスがかなり謎のデザインです。
トレンチコートを着て死す!
アラン・ドロン・スタイル4
- ハニーカラーのトレンチコート
アラン・ドロンほど男性にとって、トレンチコートの魅せ方と存在意義を教えてくれるファッション・アイコンは存在しません。かつて『カサブランカ』において、ボギーがトレンチコートで示した男にとっての〝痩せ我慢のダンディズム〟と同じベクトルではあるが更にトレンチコートの暗黒面を突き詰めた〝滅びの美学〟をアラン・ドロンは示してくれるのです。
そうです!トレンチコートほど、無言で佇み、派手にぶっ倒れるのが似合うファッションは存在しないのです。静と動の美学。つまりは、トレンチコートほど日本人に相性の良いスタイルはないということなのです。静かな男に似合うスタイル。そして、どんなにうるさい男でもこれを着れば少しは、お行儀が良くなるスタイル。それがトレンチコートスタイルなのです。
トレンチコートとは、浅野内匠頭が切腹のときに着た白装束のようなものなのです。それは、現代の戦闘服であり、白装束なのです。そして、トレンチコートとは、〝別れの歌〟なのです。
ちなみに、ジャン・ギャバンは、アラン・ドロンを最後に殺す役柄であることが気に入り本作への出演を決めました。