第三章 デニスに夢中
Denis デボラ・ハリーが率いるブロンディの最初のヒット曲(1978年全英No.2ヒット)。この曲から「ブロンディ伝説」が始まりました。どこか中国風のメロディに合わせて、掴みどころのない薄ら笑いを浮かべながら歌う、デボラ・ハリーの表情が、スローエフェクトと共に、最強の70年代オーラに包まれています。
それにしてもこの曲のPVでデボラが着ている1950年代風の赤白ボーダーのワンピース水着と、その上からディナージャケットを軽く羽織る姿は、とんでもなくチープなのか、とんでもなくスゴいのか判断しかねる謎のムードに満ち溢れています。そう!デボラ・ハリーの魅力とは、大真面目なのか不真面目なのか分からないところにあるのです。
概要
曲名:デニスに夢中
原名:Denis
リリース:1978年
最高順位:全英2位
ダサいボーダー水着にディナーJK
この曲には、オリジナル曲が存在します。アメリカの白人ドゥーワップコーラスグループのランディ&ザ・レインボウズが1963年に歌い、全米10位になった同名の曲です。それは映画『アメリカン・グラフィティ』(1973)の中で流れてそうな素敵な曲調です。これをデボラ・ハリーは凄いファッションで歌うのです。
ブロンディ・ルック4 レオタード水着
私はとてもストライプが好きなの。それは愛していると言っていいくらいなの。どこか30年代、40年代のそのムードに惹かれるのよ。
デボラ・ハリー
白と赤ボーダーの競泳風ワンピース水着(一見女子プロレス風でとてもチープに見えるのがポイント)の上からお父さんの箪笥から拝借してきたかのようなディナージャケットを肩出しに羽織るというかなり謎のスタイル。そして、この究極のアンサンブルにこそブロンディ・ルックの真髄があるのです。
「不真面目なマリリン・モンロー」「史上最低のファッション」この二つの境界線すれすれのところにブロンディ・ルックは存在するのです。
この人は美人なのか?不美人なのか?綺麗なのか?可愛いのか?オバサンなのか?お姉さんなのか?ただスタイルが良くないことだけは確かですが、何か親しみやすさと、神々しさが同居している不思議な感覚を覚えさせてくれる人です。
だからこういった曲も歌えるのです。この曲がイギリスで大ヒットしたことから、世界的なブロンソン旋風ならぬブロンディ旋風が始まるのです。そうなのです、ブロンディは、アメリカのパンクバンドという出自なのですが、このグループが認められたのは、海を越えたイギリスからでした。
ブロンディというバンドの名称は、元々は、「エンジェル・アンド・ザ・スネーク」(天使と蛇)でしたが、1975年後半に変更されました。長らくこの名前はアドルフ・ヒトラーの愛犬から採られたという噂がありました。しかし、真実は、デボラ・ハリーが道端を歩いていたときに、トラック運転手が言い放った「へい!ブロンディ!ちょっとあそばねえか?」という言葉からインスパイアを得たものでした。
「デニスに夢中」ライブ映像集
ブロンディ・ルック5 レッドブーツ
このライブ映像の中で着ているレッド・ビッグシルエット・シャツとレッド・ロングブーツ。このアンサンブルは、ブロンドヘアにかなり濃いアイメイク、そして、真っ赤な口紅というデボラ・ハリーだからこそ似合うスタイルであり、ブロンドヘア以外の女性が全身赤色で決めてもなかなか様にはなりません。
以上、デボラ・ハリーとレッドカラー・アイテムの組み合わせが素敵な写真を羅列しました。
【ブロンディ伝説】デボラ・ハリーのファッション史