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【シャネル】アリュール オム(ジャック・ポルジュ)

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©CHANEL
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アリュール オム

原名:Allure Homme
種類:オード・トワレ
ブランド:シャネル
調香師:ジャック・ポルジュ
発表年:1999年
対象性別:男性
価格:50ml /13,640円、100ml /18,480円
公式ホームページ:シャネル

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四つの顔で女性を虜にする男性の香り

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1978年にジャック・ポルジュシャネルの三代目調香師に就任し、1982年にカール・ラガーフェルドがクリエイティブ・ディレクターに就任しました。そして1984年に「ココ」が発売されたこの年3月、ラガーフェルドによるシャネルのファースト・コレクション(1984/85秋冬コレクション)が発表され、シャネルはファッション・ブランドとして不死鳥のように蘇りました。

以降、シャネルのブティックはオクラホマから東京まで、雨後の筍のように次々と誕生し、シャネルの顧客の平均年齢は50代半ばから30代後半にまで若返っていきました。

この状況を見たシャネルのCEOであるアリー・コペルマンは、「ロー ドゥ イッセイ」「シーケーワン」といった1990年代の〝つけやすいフレッシュな香り〟の流行に乗り、1996年に女性用の新作フレグランスを発表しました。その名を「アリュール」と申します。

〝アリュール〟とは、フランス語と英語で「魅力、魅惑する」という意味です。そのメンズ・ヴァージョンとして「アリュール オム」は、3年後の1999年に発売されました。シャネルが女性用と男性用のフレグランスをペアで展開したのはこれが初めてでした。

カリスマ性と内面の強さを持ち合わせた大人の男性のためのフレッシュ・スパイシー・ウッディな香りは、ジャック・ポルジュによって調香されました。発売当時、この香りは大成功を収めました。

「アリュール」と同じように、ミドルノート以降、まるで魔方陣のように、身に纏う人それぞれの魅力が、

  1. すがすがしさ=フレッシュ=グリーンノート
  2. 鋭いが温かみのある=スパイシー=ペッパー
  3. 優雅で力強い=ウッディ=ローズウッド、サンダルウッド、シダー
  4. 温かく官能的=センシュアル=ラブダナム、トンカビーン

といった4つのファセットで反映されてゆくという、それぞれの香料がバランスよくブレンドされた香りです。

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シックなスーツが似合う男のカジュアルな姿ほど危険なものはない。

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酸味の効いたレモンと苦みの効いたベルガモット、ジューシーなマンダリンが、それぞれの魅力を弾け合わせ、競い合うようにしてこの香りははじまります。ただちにレモンの勝利が素肌の上に宣言された瞬間、フルーティーなピーチが爽やかにすべてを吞み込んでゆきます。

そこに厳かにジンジャーとコリアンダーが振りかけられ、すべての柑橘と(パイナップル風の)ピーチが、滑らかにピリッと温かく泡立ちながら素肌に清らかに甘やかなラベンダーの花を咲かせてゆきます。

ここからシトラスとフルーツとスパイスとフローラルとウッドが完璧にブレンドされた、緩やかに複雑な香りの変化に、心がよろめかされていくことになります。

「アリュール オム」は「ブルー ドゥ シャネル」の影で今では過小評価されてしまっているのですが、実際は「ブルー ドゥ シャネル」を遥かに凌駕する、シャネルを愛する男性の心を捉えて離さない至純至高の香りと言えます。

メンズウェアが存在しないシャネルにおいて、まるで〝男たちの唯一のメンズウェア〟と言いたくなる香りです。

そしてローズとジャスミンを中心にした花々の甘い香りが、ベチバー、パチョリ、シダーといった大地を感じさせる香りと、パウダリーかつクリーミーなトンカビーンとムスキーバニラ、アンバー(シスタス・ラブダナム)によって、これでもかというほどなめらかにひとまとめになり、実に控えめな、調和のとれた洗練の魅惑のブレンドで、全身を満たしてくれます。

途中から独特な存在感=カリスマ性を示すスパイシーなアニスとマダガスカル産ブラックペッパーが、温かく甘い香りに油断した女性に対して、虎視眈々と隙を狙う獣のように抜け目なく香りを燻らせます。

やがてシルキーで柔らかなレザーが存在感を示し、スモーキーさが広がり、普段シックなスーツがとてもよく似合う男性が見せる、リラックスしたカジュアルな姿=〝素顔〟から醸し出されるギャップのような温かさとやさしさを運んでくれます。

いつもスタイリッシュに決めている男性の普段着の姿を見てしまうことは、その男性のスーツの下の均整の取れた裸体を見てしまうも同然です。女性にとって「アリュール オム」は、男が身に纏う〝逆ハニートラップ〟のような香りです。こんな香りを身に纏う男の罠になら、進んでハマりたいと思わせる〝悪魔のように美しい男に魅了される〟香り。

ボトル・デザインは、当時のシャネルのアート・ディレクターであるジャック・エリュによるものです。

広告キャンペーンには、ファッション・モデルを一切起用せず、建築家、プロゴルファー、整形外科医などの仕事に従事するプロフェッショナルな男たちが起用されました。

ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「アリュール オム」を「ウッディアンバー」と呼び、「ピエール・ブルドンが美しく、実にシンプルな「クールウォーター」を作ったときに、自分が何を生み出したのかわからなかったに違いない。以来、何百種類ものイミテーションが出まわることになった。改良できないものを改良しようとしたけれど、結局お腹のあたりに贅肉をつけるだけに終わった。この香水は勝気なばかりでじつにつまらない。シャネルの名にふさわしくない」と1つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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香水データ

香水名:アリュール オム
原名:Allure Homme
種類:オード・トワレ
ブランド:シャネル
調香師:ジャック・ポルジュ
発表年:1999年
対象性別:男性
価格:50ml /13,640円、100ml /18,480円
公式ホームページ:シャネル


トップノート:ジンジャー、ラベンダー、マンダリン・オレンジ、ピーチ、ベルガモット、レモン
ミドルノート:ガーデニア、パチョリ、フリージア、ジャスミン、ベチバー、アニス、シダー、ペッパー、ローズ、ブラジル産ローズウッド
ラストノート:レザー、サンダルウッド、トンカビーン、アンバー、ムスク、ベンゾイン、ココナッツ、オークモス、バニラ