【バッファロー’66】
Buffalo ’66 30代半ばの、そんなに有名ではない俳優が起こした下剋上ムービー。1989年に脚本の初稿を書き上げ、コツコツ積み上げていった上で、1996年3月18日の午後の一日で、ひとつの形として生み出されたのが『バッファロー’66』です。
ヴィンセント・ギャロ(1962-)が、監督・脚本・主演・音楽を手掛けたこの作品は、自称〝コントロールフリーク〟の彼が、4ヶ月間、毎日20時間から22時間働き詰め、彼の地球上でもっとも尊敬する映画監督・小津安二郎に対する〝不滅の愛〟を、予測不可能なカメラアングルや分割されたピクチャー・イン・ピクチャーのフレームによって、僅か一ヶ月の撮影で、カタチにした作品でもありました。
『アダムス・ファミリー』(1991)のイメージからなかなか抜け出せずもがいていたクリスティーナ・リッチ(1980-)が、大人の女優として輝いていくきっかけになった作品でもあります。
脇役もかなり豪華で、ビリーの父を演じるのがベン・ギャザラ、ビリーの母がアンジェリカ・ヒューストン。ビリーが片想いしていた女性ウェンディ・バルサムを演じるのが、ロザンナ・アークエット、マフィアをミッキー・ローク、ボーリング場のオヤジにジャン=マイケル・ヴィンセントといった具合です。
音楽の選曲も、キング・クリムゾンの「ムーンチャイルド」や、イエスの「ハート・オブ・ザ・サンライズ」など秀逸ですが、カンヌ国際映画祭で拒否され、サンダンス映画祭には参加できたが、ブーイングを浴びました。
であるにも関わらず、今ではカルト的な人気を誇るようになっています。ちなみに製作費200万ドルに対し、興行収入は240万ドルをあげました。
ある意味で、ヴィンセント・ギャロの自伝的な要素も強く、非常に個人的な作品なので、この後の彼の映画人としてのキャリアにひとつの亡霊として付きまとうほどの〝不死鳥の輝き〟に満ちた作品。アレキサンダー・マックイーンが愛した映画としても有名です。

あらすじ
5年の刑期を終え、刑務所から釈放されるビリー・ブラウン(ヴィンセント・ギャロ)。門には出迎えてくれる人は一人もいない。娑婆の世界は一面雪景色だ。そしてカナダ国境に近いニューヨーク州バッファローにある実家に戻るため長距離バスに乗るビリー。
両親とギクシャクしているビリーは「政府の仕事で遠くまで行っていた」と偽っている。そして、帰郷するにあたり「フィアンセを連れて帰る」と電話で口走ってしまう。刑務所に入る前から、恋人は一度もいたことのない童貞青年ビリーは、行きあたりばったりでタップダンス教室でレッスンに来ていた少女レイラ(クリスティーナ・リッチ)を拉致して、妻に仕立て上げようとする。
いつでも逃げることが出来る、史上最高にショボい拉致であるにも関わらず、レイラはビリーの三文芝居=おままごとにつきあうことを決意して、いざ、ビリーの実家へ。
娯楽はテレビにファミリー・レストランに、ボーリング場、そしてストリップ劇場しかないような退屈な郊外住宅地にある実家で、アメフト狂の母ジャン(アンジェリカ・ヒューストン)と父ジミー(ベン・ギャザラ)と再会するビリー。
両親との溝はますます深くなるばかりのきまずい再会にうんざりしたビリーは、レイラと共に家を去り、ずっと刑務所の中で温めていたプランを実行に移すことにする。
それは、自分が刑務所に入る原因を作った、アメフトの八百長試合のきっかけを作ったチーム・バッファローのキッカーだったスコットに対する復讐だった。引退し、ストリップ劇場を経営するスコットを射殺する機会を狙うビリー。そんなビリーにやがて心惹かれていくレイラ。
時は来た!レイラをモーテルに待たせて、ストリップ劇場に乗り込んでいくビリー。果たして彼は復讐を果たすことが出来るのか?そしてレイラとの愛の行方は如何に。
ファッション・シーンに与えた影響





1998年に公開された『バッファロー’66』は、21世紀に突入するメンズ・ファッションのスーパースリムの流れを予兆したような作品でした。この映画がファッション・シーンに与え続けている影響は恒久的で、特に以下の四点を上げることが出来ます。
- 確実にエディ・スリマンに影響を与えたスーパースリム・ルック
- 最高にクールなレッドブーツの使い方を教えてくれるスタイリングの教科書
- 『イージー・ライダー』級のカッコよさを誇る、ライダースのバイブル
- クリスティーナ・リッチのブルーのアイシャドウ
男性にとって「お洒落である」という要素は、並みの男性が同じ格好をしたなら、滑稽に見えるスタイルであることを教えてくれる映像作品です。
作品データ
作品名:バッファロー’66 Buffalo ’66(1998)
監督:ヴィンセント・ギャロ
衣装:アレクシス・スコット
出演者:ヴィンセント・ギャロ/クリスティーナ・リッチ/ベン・ギャザラ/アンジェリカ・ヒューストン/ケヴィン・コリガン
