世界一お金のかかった自撮りムービー
私の人生で最高の日は、イエスのベーシストのクリス・スクワイアに食事に招かれた時だ。2番目に最高だった日は、イエスのボーカリストのジョン・アンダーソンに会ったときだった。
ヴィンセント・ギャロ
〝自分のことが本当に大好きな〟一人の男性が、SNSが登場する前夜に、映画というメディアを使い、自分自身を世界に向けて紹介しました!お気に入りのイエスの「ハート・オブ・ザ・サンライズ」をバック・ミュージックに使い、ファッション・センスの良さと、とぼけたキャラクターのギャップを売りに、「こんなオレってタイムレスなファッション・アイコンだろ?」と男たちに問いかける永久SNS=「バッファロー’66」。
いまだかつて一人の男が、自分のカッコ良さを証明するためだけに映画を作り成功した例は、本作を除いて金子正次の『竜二』(1983)以外に存在しない。110分のヴィンセント・ギャロ・プロフィール・自撮りムービーここに始まる!

「ソフィア・コッポラとそのオヤジが作るような映画が大嫌いだ!」
昔、パリで行われた小津安二郎の回顧上映に20日間毎日通い、40本の作品を観た。字幕はフランス語だが、言葉などまったく分からない・・・でもそれはオレの人生の中で最高に素晴らしい瞬間だった。(レイラの車のナンバープレートはOZU)
ヴィンセント・ギャロ
それはインディーズ・ムービーとして、ニューヨーク州バッファローで生まれたヴィンセント・ギャロ(1962-)が、故郷を舞台にして、監督・主演・美術・音楽を担当することにより、一切の干渉から開放されました。
彼はその活動においてマネージャーなどは一切持たず、この予告編もポスターのデザインもすべて自分自身で行いました。「ソフィア・コッポラとそのオヤジが作るような映画が大嫌いだ!」と豪語するこの男が生み出した記念すべき監督第一作。
この作品完成後、クリスティーナ・リッチが、「二度とヴィンセントとは仕事をしたくない」と断言したほどに、異様な空気に包まれたこの作品は、公開後20年近く迎えようとしている今も、若者から大人までのあらゆる男の心を捉えて離さないです。
私たちはどうして、トイレを探す赤いブーツの男に惹きつけられるのでしょうか?それは、特にハイセンスな男性にとって、ヴィンセント・ギャロがどうしても一人のスーパー・アイコンを思い出させるからでしょう。
そうです、その男の名は松田優作。『最も危険な遊戯』(1978)『蘇える金狼』(1979)TVドラマ『探偵物語』(1979-80)で見せたすっとぼけたカッコ良さと、この男のスタイルは重なるのです。実際に存在したらどうしようもない主人公を、カリスマ性溢れるイケメンが演じた所に、ヴィンセント・ギャロのセンスの良さを感じさせます。
今日からオレの名前はロッキーだ!

ビリー・ブラウンの唯一の親友グーン。グーンの意味は〝まぬけ〟です。

爆発頭に、不摂生な生活を物語る肉体。オタク文化が生み出した一人の典型。

どこまでも素晴らしいグーンのキャラクター。しかし、演じたケヴィン・コリガンは、この役柄に不満を感じ、クレジットなしでの出演を希望した。
ベージュのコーデュロイパンツだけをはき続け登場するビリー・ブラウンの唯一の親友グーン(ケヴィン・コリガン)。
彼のファッション・アイテムは、黒のニット帽。あずき色のナイロンジャケット。ブルーパーカー。黒ワークブーツ。そして、うさぎのぬいぐるみに、ペットとしてハムスターとうさぎを飼っています。そして、何よりも下っ腹全開のグンゼ!
この作品は、この男の存在により成立していると断言できるほどの「映画史上有数のダメ男」グーン。ビリーの5年間の刑務所暮らしがばれない様に、工作活動してくれた男。そして、5年後、グーンはビリーにこう断言する。「これからオレの名はロッキーだ」と。
本当にオシャレな『オトコの法則』

こんなオシャレなスタイルだったら、ロザンナ・アークエットにもモテるでしょ?

出所して、雪景色の中にぽつんとあるベンチの上で、半ケツ出してバスを待つギャロ。映画が始まって3分後に見せられるシーンだ。

すべてのギャロの衣装は、自分で用意したものです。そして、自宅も、ギャロ自身が生まれ育った家を忠実に再現した。
その生き様からは絶対にありえないほどにファッショナブルな主人公がここにいます。スエードのブルゾン、スリムフィットパンツ、ジップアップブーツ。
男性にとって「お洒落である」という要素は、並みの男性が同じ格好をしたならば、滑稽に見えるスタイルを指します。それはルックスやプロポーションが良いという話ではありません。
ジャケットの腕の長さといい、ジップを閉めたときの空気が少しだけ入っているようなゆとりといい、ベルトループを隠すギリギリの丈といい、パンツとブーツの丈の絶妙なマッチングといい、それはスタイリストが作り上げたものではなく、ギャロ自身が磨き上げたファッション・センスであることが分かるほどに個性的です。
結局のところ、この作品のギャロがとんでもなくファッショナブルに見えるのは、それは自分のスタイルをいついかなる時にも貫いてることを、見ているものが感じるからなのです。
それは一種の場違いな感覚です。本当にお洒落な人が与える印象は常に違和感でなければなりません。それは軍服を着て機関銃を持つのではなく、スーツを着て機関銃を持つような感覚です。やがて、人々は、その場違いな感覚に対して、ひとつの美学を見つけ出すのです。
ビリー・ブラウンのファッション1
スエードのブルゾン×スリムパンツ
- グレー×ブルーグレーのピタピタのスエード・ブルゾン、フロント・スリー・ジップポケット
- グレースリムフィットパンツ、ベルトなし
- 白のグンゼが座るときに半ケツになって見える。ギャロ自身がグンゼ・フリーク
- カルペ・ディエムのような赤のジップアップブーツ。6cmヒール





ヴィンセント・ギャロ、180cm。クリスティーナ・リッチ、153cm。


本作のアイコニック・アイテムであるレッドブーツ。

ボーイフレンド・ジャケット

一緒にバスタブに入ることを頑なに拒否するビリー・ブラウン。

いつのまにかビリー・ジャケットを着ているレイラ。
作品データ
作品名:バッファロー’66 Buffalo ’66(1998)
監督:ヴィンセント・ギャロ
衣装:アレクシス・スコット
出演者:ヴィンセント・ギャロ/クリスティーナ・リッチ/ベン・ギャザラ/アンジェリカ・ヒューストン/ケヴィン・コリガン
