『カイエデモード香水図鑑』に、新作発表会・内覧会・コンサル依頼を送る ← 2026年春よりご依頼が殺到しております。

カイエデモードの活動を応援する|2026年8月8日

暑中お見舞い申し上げます。日頃より、私たちカイエデモードの活動に温かいご理解とご支援をいただき、心より感謝申し上げます。さて、私たちは現在、専門家の方々と共に、錯綜する香水情報を精査した『正しい香水の教科書』を制作中です。8月より、一般公開してゆきますが、これはいまだかつてない香水文化を豊かにしていくための新しいプロジェクトとなります。

詳細ページへ

魁|失われた花魁の美を、あなたの素肌に宿し、見えない整形を施す。

その他のブランド
©株式会社キャライノベイト
その他のブランド
この記事は約16分で読めます。

原名:Sakigake
種類:オード・パルファム
ブランド:破天荒
調香師:清水 篤
発表年:2025年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/17,600円
公式ホームページ:破天荒

スポンサーリンク

歌麿が描く女性のように、あなたの繊細な魅力が生き生きと引き伸ばされていく香り

©株式会社キャライノベイト

『櫛を持つ女』喜多川歌麿

江戸の粋と艶やかさを今に映す、妖艶なる美の世界。 喜多川歌麿の「櫛を持つ女」に描かれる、柔らかな色香と気品から、櫛越しに透ける美しさと、ほのかに薫る白粉の余韻を香りで表現しました。

公式サイトより

日本文化や日本の魅力を、香りを通じて世界へ発信するキャライノベイト(青山フラワーマーケットなどの人気フレグランスも創造しています)が、満を持して2025年4月14日に発表した国産フレグランス・ブランド『破天荒』。

日本人には「破天荒な性格」と誤用されやすいこの言葉の真の意味は「前人のなしえなかったことを初めてすること。また、そのさま。前代未聞。未曾有」です。

日本人の琴線に響く前人未到の香りを創造するために、日本の伝統文化を継承しながら、現代の価値観を未来へ受け継いでゆく〝新たな日本らしさ〟を表現する『破天荒』の〝お披露目フレグランス〟として、浮世絵を題材に『和の美学』を香りに投影した五作品のうちのひとつが「」でした。

それは美意識を香りで翻訳するという壮大なテーマをもって、総合ディレクター兼調香師の清水 篤氏により調香されました。5つの作品の中で一番最初に完成した香りである「磯波」と同じくらいの時期に完成した香りです。

この香りのインスパイアの源となった浮世絵『櫛を持つ女』は、江戸時代の寛政年間の1795年から1796年ごろに喜多川歌麿によって描かれました。

髪の張り、艶、動きを繊細に描くことにより、女性の表情がより豊かになる「毛割」や、透けているものを通して見ることで女性の美しさを強調する「透かし」といった歌麿の卓越した技法が駆使されています。

以下、カイエデモード独自の観点による香りの徹底解剖と、〝もっともっと『破天荒』の香りの魅力が見えてくる清水 篤さんの独占解説〟を掲載させて頂きます。ちなみに徹底分析は、敢えて、清水さんの香りのインタビューを行う前に、書き記したものです。優れたフレグランスには、付ける人それぞれの物語を変幻自在に生み出す魔性のパワーがあるものですが、『破天荒』のそれぞれの香りには、それが存在します(であるにしても清水さんの解説は読み応えがあります)。
スポンサーリンク

失われた花魁の美を、あなたの素肌に宿し、見えない整形を施す。

©株式会社キャライノベイト

©株式会社キャライノベイト

©株式会社キャライノベイト

「魁」は5つの中で一番人気のある香りです。喜多川歌麿の「櫛を持つ女」に描かれているこの艶っぽく胸元がはだけている女性が、遊女なのか花魁なのか町娘なのかは明らかではありません。

このべっこうの櫛が透けていて、江戸の粋と艶やかさを感じさせます。そんな妖艶な美の世界を生み出したいと思いました。

清水 篤さん

世の中に『和の香り』は多くあれど、ここまで徹頭徹尾、江戸時代の花魁の美学を香りに宿した作品はなかなかありません。でありながら、谷崎潤一郎が描く、和服を着た女性の裾から覗く足のような耽美的な明治・大正女の美学、さらには小津安二郎の映画に現れるような、白いシャツにフレアスカートという原節子様的な昭和の日本女性の清らかさの美学。そういったものをひとまとめに令和の世に蘇らせたような『新しい日本女性の美学』を引き出してくれる香りと言えます。

身に纏う瞬間から、素肌とひとつになり消えていく瞬間まで、明るく華やかに、それでいて奥ゆかしく、絶妙に上品で控えめに、一瞬で魅了するパワーのあるこの香りは、煌めくシトラスシャワーからはじまります。ジューシーな愛媛のおいしいミカンの香りがします。

すぐにフレッシュなグリーンティーに素肌は洗い流され、女性の柔肌を思わせる円やかに甘やかなチューベローズが花を咲かせてゆきます。そしてムスクとサンダルウッドとバニラも注ぎ込まれ、チューベローズをもっともっと艶やかに、女として生まれた喜びを感じさせるほどに、美しく磨き上げてゆくのです。

櫛透けて 白粉の香り 漂えば 花魁の影 光に溶ける
やがて漂うヴァイオレットリーフの残り香が、砂糖菓子のように、甘くてふんわりした花の余韻と混ざり合い、白粉を塗り、唇や目尻、頬などに紅をさし完全武装した花魁が乗り移ったかのように、誇らし気に光り輝いていくのです。
一言で言うと、女性が身に纏うと歌麿が描く女性のように、あなたの繊細な魅力が生き生きと引き伸ばされ〝艶やかさ〟が増す香りであり、男性が身に纏うと〝蜜蜂が集まる蜜がたっぷりの花〟のように女性を集めてしまう〝危険な香り〟です。
スポンサーリンク

「魁」の魅力を調香師・清水 篤さんに聞いてみました。

清水 篤さん © 株式会社キャライノベイト

Q.この香りの名を「魁」にした理由を教えてください。

A.「魁」には、「先駆ける」「新しい時代を切り拓く」という意味があります。破天荒というブランドも、日本文化を香りという新しい表現で世界へ伝えたいという想いから始まりました。

この香りも、単に花魁を表現したかったわけではありません。江戸の美意識を現代へ繋ぎ、新しい日本の香りを生み出す「先駆け」として、この作品を「魁」と名付けました。

実は「魁」は、破天荒の中でも最も聞き重ねがしやすいように設計しています。香道には、香りを聞き分ける文化があります。その思想をリスペクトし、香りを重ねることで新しい香りや物語が生まれる楽しみを「聞き重ね」と名付けました。

破天荒でも、一つひとつの香りが完成形でありながら、他の香りを重ねることでまったく新しい香りや情景が生まれるよう設計しています。そして、その聞き重ねによって生まれた香りには、それぞれ新しい名前が付けられています。

「魁」も、新しい香りを生み出す始まりの香りです。先駆けるという意味を持つ「魁」という名前には、日本文化を未来へ繋ぐ最初の一歩という意味も込めています。私は香りを一本ずつ作っているのではなく、香りから新しい物語や文化が生まれるところまでをデザインしたいと思って調香しています。

Q.チューベローズがメイン香料である理由は、江戸時代末期に日本に渡来したからでしょうか?花魁的なものとチューベローズという結びつきが斬新だと思いました。

A.それも理由の一つです。チューベローズは江戸時代末期に日本へ伝わった花で、和名では「月下香(げっかこう)」と呼ばれています。私は、この「月下香」という名前にも、とても惹かれました。

夜に静かに香る花という響きには、どこか艶やかさがあり、花魁の世界観とも重なるものを感じたからです。花魁をそのまま香りで再現するのではなく、月の下で静かに香る花のように、その存在感や余韻を表現したいと思いました。

また、チューベローズには華やかさだけではなく、どこか妖艶で気品のある美しさがあります。そこへバイオレットリーフを重ねることで、白粉をまとったような和の化粧の気配を表現しています。さらにティーベースを加えたのは、現代の香りの感性を重ねるためです。

江戸時代の美意識だけを表現するのではなく、現代の透明感や軽やかさと掛け合わせることで、昔と今、二つの時代を行き来する「魁」を作りたいと思いました。

花魁もまた、その時代の流行や美意識を生み出した「魁」だったと思います。だから私も、過去をそのまま再現するのではなく、その時代の精神を受け継ぎながら、現代の香りとして新しい「魁」を表現したいと考えました。私は、日本文化をそのまま再現するのではなく、今という時代へ香りとして翻訳したいと思っています。「魁」は、その考え方を最も象徴する作品の一つです。

Q.喜多川歌麿の浮世絵の中でも、それほどメジャーではないこの絵を選ばれた理由は、やはりこの鼈甲の透ける櫛が、この香りのテーマにぴったりだと感じられたからでしょうか?

A.はい、一番の理由は鼈甲の櫛でした。

この作品には、光を受けて透けるような美しい鼈甲の櫛が描かれています。私は、その透明感や艶、そして細部に宿る美しさが、この香りの印象と重なると感じました。派手な美しさではなく、近づいて初めて気付く繊細な美しさ。それこそが、日本らしい美意識の一つだと思っています。だから有名な作品を選ぶというより、この香りが持つ空気感を最も表現してくれる一枚を選びました。

また、「魁」は香りだけで完成する作品ではありません。浮世絵、名前、そして聞き重ねによって生まれる新しい香りまで含めて、一つの作品として設計しています。

例えば「桜吹雪」と聞き重ねをすると、『花魁桜』という新しい香りが生まれます。満開の桜のように華やかに咲き誇り、やがて桜吹雪となって静かに散っていく。花魁の人生と桜の儚さが重なり、新しい物語として香りが完成します。一つの香りを作って終わりではなく、日本文化が持つ時間や物語を、香りという言語へ翻訳し、その先に新しい文化を生み出していきたいと思っています。

スポンサーリンク

2種の香りを重ねて、物語をひらく「聞き重ね」

日本の伝統芸道・香道では、香りを「嗅ぐ」のではなく「聞く」もの──。『破天荒』では、香道の文化にならい、2種の香りを重ねて、物語をひらく「聞き重ね」が提案されています。

それぞれの「聞き重ね」について総合ディレクター兼調香師の清水 篤さんに質問させて頂きました。

①『影艶(かげつや)』おどろおどろ × 魁

©株式会社キャライノベイト

闇の奥に潜む、妖艶で揺らめく影。

Q.なぜ「おどろおどろ」と「魁」を重ねようと思われたのでしょうか?

A.「おどろおどろ」と「魁」は、一見すると対照的な香りに思えるかもしれません。でも私の中では、どちらも夜に生まれる幻想を描いた香りでした。「魁」は、人が憧れる美しさ。「おどろおどろ」は、人が心の奥で感じる畏れや不思議さ。どちらも現実ではなく、人の心が映し出す世界なんです。

この二つを重ねた時、私が表現したかったのは、夢なのか現実なのか分からなくなる、あの曖昧な時間でした。日本には「まどろみ」という、とても美しい言葉があります。

畳が少し冷え始める夜。障子の向こうから虫の声が聞こえてくる。眠りに落ちる少し前。夢が始まる少し前。現実と幻想の境界がゆっくりと溶け合っていく時間。『影艶』は、その言葉では説明しきれない感覚を香りで表現した聞き重ねです。

Q.『影艶』という名前には、どのような意味が込められていますか?

A.「影」とは、暗闇そのものではありません。光があるからこそ生まれるものです。「艶」もまた、人の心が動くことで初めて生まれる美しさだと思っています。私は、日本には、一言では説明しきれない美しい感覚があります。「おどろおどろしい」もそうですし、「まどろみ」もその一つです。

夢なのか。現実なのか。恋なのか。怪談なのか。答えが曖昧だからこそ、人は自由に想像し、心を動かされます。『影艶』という名前には、その曖昧さそのものを大切にしたいという想いを込めました。

Q.それぞれを単体で香った場合と、どのように印象が変わりますか?

A.「魁」は、凛とした美しさを感じる香りです。「おどろおどろ」は、少しずつ違和感が現れ、静かに心へ入り込んでいく香りです。この二つを重ねると、不思議と怖さは和らぎ、美しさにも少し影が差し込みます。まるで、夢を見ているのか、それとも昔の記憶を思い出しているのか分からなくなるような感覚です。

誰かを想いながら眠りにつく夜。ふと昔の景色が心に浮かぶ瞬間。会ったような気がするのに、それが夢だったのか現実だったのか思い出せない。そんな曖昧な時間は、日本人が昔から大切にしてきた感性の一つなのかもしれません。

『影艶』は、恋の香りでも、怪談の香りでもありません。答えを決めないための聞き重ねなんです。

②『花魁桜(おいらんざくら)』魁 × 桜吹雪

©株式会社キャライノベイト

夜桜の下で、華やかに咲き誇る色香。

Q.なぜ「魁」と「桜吹雪」を重ねようと思われたのでしょうか? 

A.「魁」と「桜吹雪」は、最初から重ねることを意識して作っていました。「魁」は、凛とした美しさを感じる香りです。「桜吹雪」は、春風のような優しさと軽やかさを感じる香りです。この二つを重ねると、不思議と自分に自信が生まれます。

背筋が少し伸びて、自然と所作まで美しくなるような感覚があります。私は香りには、人の気持ちを少し前向きにしてくれる力があると思っています。だから「花魁桜」は、誰かのために纏う香りではありません。自分自身が、自分らしく美しく咲くための聞き重ねとして作りました。

この香りを纏うことで、「今日は少し素敵な自分になれそう。」そんな気持ちになっていただけたら嬉しいですね。

Q.『花魁桜』という名前には、どのような意味が込められていますか?

A.花魁と桜は、日本人にとってどちらも美しさの象徴です。でも私が惹かれたのは、その華やかさだけではありません。

桜は満開に咲き誇る姿も美しいですが、風に舞い散る瞬間にこそ、多くの日本人は心を動かされます。花魁もまた、美しく着飾るだけではなく、立ち居振る舞いや所作、教養までも磨き上げ、自らの美しさを表現していました。私は、この二つに共通しているのは、誰かのためではなく、自分自身を高め続ける美しさだと思っています。

だから『花魁桜』は、花魁を表現した香りではありません。誰もが心の中に持っている「もっと素敵な自分になりたい」という憧れを、春の桜のように優しく咲かせる聞き重ねです。

Q.それぞれを単体で香った場合と、どのように印象が変わりますか?

A.「魁」は、凛とした芯のある美しさを感じる香りです。「桜吹雪」は、柔らかく包み込むような春の空気を感じる香りです。この二つを重ねることで、華やかさだけではなく、優しさや親しみやすさが自然と加わります。凛とした美しさの中に、ふっと笑顔がこぼれるような柔らかさが生まれるんです。

私は、この聞き重ねを纏った時、誰かに美しく見せようとするのではなく、自分自身が少し好きになれる香りになればいいと思っています。気持ちが前向きになり、自然と笑顔になり、所作まで美しくなる。その変化は、きっと周りの人にも伝わります。

『花魁桜』は、破天荒の聞き重ねの中でも最も多くの方に選ばれている作品です。それは、香りが誰かを演じさせるのではなく、その人自身が持っている美しさを、そっと引き出してくれるからなのかもしれません。

③『潮艶(しおつや)』磯波 × 魁

©株式会社キャライノベイト

海風の塩気と、花魁の艶香が交わるひととき。

Q.なぜ「磯波」と「魁」を重ねようと思われたのでしょうか?

A.「磯波」と「魁」は、一見するとまったく違う香りに思えるかもしれません。でも私の中では、どちらも人が生きる場所を描いた香りです。「磯波」は、漁港がある港町。「魁」は、人が美しさを磨き、人と出会う場所。形は違っても、どちらも人が集まり、それぞれの人生が交差していく場所なんです。

私は旅をする時、観光地よりも、その土地で暮らしている人たちの日常に惹かれます。漁港を歩き、その近くの食堂へ入る。夜になると、古いスナックから笑い声が聞こえてくる。

港に置かれた濡れたロープや木の桟橋、潮を含んだ夜風が流れ込んできます。仕事を終えた漁師さんや、海を愛するローカルサーファーたちが自然と集まり、それぞれの一日を語り合う。そんな何気ない時間の中に、その土地だけが持つ魅力があります。

『潮艶』は、海の香りではなく、港町で生きる人たちの時間を聞き重ねた作品です。

Q.『潮艶』という名前には、どのような意味が込められていますか?

A.「艶」という言葉を聞くと、華やかさや色気を思い浮かべる方が多いかもしれません。でも私が表現したかったのは、もっと自然な艶です。潮風に揺れる髪。日に焼けた肌。木のカウンター越しに交わす何気ない会話。笑いながらグラスを傾ける姿。

その一つひとつには、その土地で過ごしてきた時間が自然と滲み出ています。私は、本当の艶とは着飾ることではなく、生き方や、その人が積み重ねてきた時間から生まれるものだと思っています。

港町には、都会にはない、肩の力が抜けた美しさがあります。『潮艶』という名前には、そんな自然体で生きる人たちへの敬意を込めました。

Q.それぞれを単体で香った場合と、どのように印象が変わりますか?

A.「磯波」は、潮風や磯の空気を感じる香りです。「魁」は、凛とした美しさを感じる香りです。この二つを重ねると、不思議と華やかさは少し落ち着き、人の温もりがゆっくりと現れてきます。

海辺のリゾートではなく、どこか懐かしい日本の港町。港に揺れる船。遠くから聞こえる波の音。仕事を終えた人たちが集まる小さなスナック。海帰りのサーファーたちが笑いながら語り合う夜。その土地で生きる人たちの日常が、少しずつ香りの中から浮かび上がってきます。

私は、その土地を歩き、人と話し、その場所に流れる時間を香りへ写し取っています。『潮艶』は、海を香らせた作品ではありません。港町で生きる人たちの温もりや、その土地に流れる時間を聞き重ねた作品なんです。

④『艶滅(えんめつ)』花火 × 魁

©株式会社キャライノベイト

艶やかな余韻で満ちる香りが、火花の一瞬でかき消される夜。

Q.なぜ「魁」と「花火」を重ねようと思われたのでしょうか? 

A.「魁」と「花火」は、どちらも一番華やかな瞬間を描いた香りです。「魁」は、人が最も美しく輝く時間。「花火」は、夜空を見上げ、心が高鳴る夏のひととき。

でも私が惹かれたのは、その一番華やかな瞬間ではありません。花火大会が終わった後の時間です。花火が終わると、火薬の煙が少しだけ残る夜風が流れます。人で賑わっていた会場を離れ、大切な人と並んで歩く帰り道。夏の夜風に吹かれながら、「今日は楽しかったね」と何気ない話をする。特別な出来事ではないのに、その時間だけは不思議と心に残っています。

私は、日本人が美しいと感じるのは、一番華やかな瞬間だけではなく、その後に静かに流れる時間なのではないかと思っています。だから「魁」と「花火」を重ねることで、美しい時間が少しずつ思い出へと変わっていく、その瞬間を表現したいと思いました。

Q.『艶滅』という名前には、どのような意味が込められていますか?

A.「艶」と「滅」。一見すると、相反する言葉のように感じるかもしれません。でも私にとって、この二つはとても近い存在です。

日本には、終わってしまうものに美しさを感じる文化があります。満開の桜も、お祭りも、花火も、一番美しい瞬間は、同時に終わりへ向かっている瞬間でもあります。

花火大会の帰り道は、どこか特別な時間です。少しずつ人が少なくなり、賑やかだった街にも静けさが戻ってくる。楽しかった時間が終わってしまう寂しさと、それでも心の中には温かい気持ちが残っている。その感情こそ、日本人が古くから大切にしてきた「もののあはれ」なのではないでしょうか。

時間とともに現れるパウダリーな香りが、楽しかった一日の終わりを、少しだけ切なく感じさせます。だから『艶滅』は、美しさが消えていくことを表現した名前ではありません。美しい時間は終わるからこそ、記憶の中でより美しく輝き続ける。そんな想いを、この名前に込めました。

Q.それぞれを単体で香った場合と、どのように印象が変わりますか?

A.「魁」は、凛とした華やかさを感じる香りです。「花火」は、一瞬のきらめきと高揚感を感じる香りです。この二つを重ねると、その華やかさは少しずつ落ち着き、穏やかで優しい印象へと変わっていきます。

少しだけ残る火薬の香り。夏の夜風。並んで歩く帰り道。言葉がなくても心地いい時間。

そんな何気ない景色が、香りとともにゆっくりと思い浮かんできます。日本人が美しいと感じるのは、一番華やかな瞬間だけではなく、その後に静かに流れる時間なのかもしれません。

『艶滅』は、花火を見上げる時間ではなく、その帰り道を香りにした聞き重ねです。あの日の夏が、少しずつ思い出へと変わっていく。その少し切なく、それでいて温かい日本らしい情緒を、香りで表現した作品なんです。

スポンサーリンク

香水データ

香水名:魁
原名:Sakigake
種類:オード・パルファム
ブランド:破天荒
調香師:清水 篤
発表年:2025年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/17,600円
公式ホームページ:破天荒


トップノート:香檸檬(ベルガモット)、橘子(マンダリン)
ミドルノート:月下香(チュベローズ/チューベローズ)、緑茶(グリーンティ/グリーンティー)、匂菫(ヴァイオレットリーフ)
ラストノート:麝香(ムスク)、白檀(サンダルウッド)、華陀爾拉(バニラ)