ヴェルベット オーキッド
原名:Velvet Orchid
種類:オード・パルファム
ブランド:トム・フォード
調香師:ヤン・ヴァスニエ、カリス・ベッカー、シャマラ・メゾンデュー、アントワーヌ・メゾンデュー
発表年:2014年
対象性別:女性
価格:50ml/25,300円
公式ホームページ:トム・フォード
香水に、もっとも禁じられた言葉を語らせようとした香り
恐らくトム・フォードが21世紀の「オピウム」として生み出した香り。つまりは、〝香りのポルノムービー〟=香水に、もっとも禁じられた言葉を語らせようとした香りなのです。
「ヴェルベット オーキッド」は、世界でも最も有名なヴァンプ・フレグランスと言われている「ブラック オーキッド」の姉妹版として「シグネチャー コレクション」のひとつとして2014年に発売されました。は、ヤン・ヴァスニエ、カリス・ベッカー、シャマラ・メゾンデュー、アントワーヌ・メゾンデューというジボダンを代表するオールスター調香師たちにより調香されました。
日本では、濃厚すぎて使う場所が限られる「ブラック オーキッド」が、手の届かない美女をイメージさせる香りならば、こちらは、もしかしたら手が届くかもしれないと希望を抱かせる美女の香りです(後者のほうがモテる)。
「プライベート ブレンド コレクション」の影に隠れて意外に知られていないトム・フォードというブランドを象徴する香りのひとつです。
厚塗りしたメイクアップ美女を連想させる香り
あざとさと狡猾さを徹底的に追求したこの香りは、一瞬、親しみを与えるような笑顔を振りまくベルガモットとマンダリンオレンジ(こちらはジボダンのOrpurという最上級の香料を使用)の明るさからはじまります。
ツンと澄ましていた美女が、微笑を振りまく時、ほとんどの男性は、「この微笑みは私だけに向けられたもの」と勘違いしてしまうもの。そうなのです、トム・フォードの香りの不文律それは、「夢のような官能空間」が自分のためだけに生み出されたものだと錯覚させてくれるところにあるのです。
やがて、濃厚なラム(スッカン アブソリュート)と混ざり合い、キャラメルのような甘さが香り全体を侵食してゆきます。そこに畳み掛けるようにベースのコモロ産バニラのクリーミーさが、この香りの甘さを囃し立てます。
ここまではっきりと〝淫靡〟さを突きつける香りも珍しいでしょう。肌に馴染むようなナチュラルメイクではなく、厚塗りしたメイクアップ美女を連想させる香りとなります。
HOW TO MAKE A PORN STAR
やがて、ジャスミン、ローズ、オレンジ・ブロッサム、マグノリア、ヒヤシンス、水仙、ヘリオトロープ、そして、(トリュフのような)ブラックオーキッドアコードが、この香りのために作られたヴェルベットオーキッドアコード(ブラジル南部の海岸付近の森に生息するカトレア・レオポルディーオーキッド)と交わり合います。
要約すれば、ナイトクラブが大好きな女性を連想させる、機械音のような鋭いフローラルが絶妙なバランスで溶け込んでいくのです。それはまるで、その女性のもつ繊細な女性らしさを消し去り、最も分かりやすい女性の部分=セックスを連想させるあらゆる要素にスッポトライトを当てていくようです。
そして、ドライダウンしていく中、スパイスやレザーの要素が顔を出していくのですが、クリーミーなサンダルウッドとペルーバルサムにより、更に濃厚な甘さを増したフローラルに覆われながら、果てしなき絶頂が絶え間なく押し寄せてくるのです。
まさに、素人の美しき女性が、一流のポルノ男優によって、セックスの魅せ方を知り、ここにポルノスターが誕生してしまう瞬間のような香りです。〝禁じられている〟ということは、〝渇望する〟という言葉と同義語であることを教えてくれる香りです。
キャンペーン・モデルとしてジジ・ハディッドが起用され、マリオ・ソレンティにより撮影されました。この写真がこの香りのすべてを物語っています。
香水データ
香水名:ヴェルベット オーキッド
原名:Velvet Orchid
種類:オード・パルファム
ブランド:トム・フォード
調香師:ヤン・ヴァスニエ、カリス・ベッカー、シャマラ・メゾンデュー、アントワーヌ・メゾンデュー
発表年:2014年
対象性別:女性
価格:50ml/25,300円
公式ホームページ:トム・フォード
トップノート:ベルガモット、マンダリン・オレンジ、ラム、蜂蜜
ミドルノート:ジャスミン、トルコ産ローズ・オイル、ブラックオーキッド、ブラジル産パープルオーキッド、オレンジ・ブロッサム、マグノリア、ヒヤシンス、スイセン、ヘリオトロープ
ラストノート:ペルー産バルサム、ラブダナム、サンダルウッド、ミルラ、スエード、バニラ