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アニック・グタール

【グタール】アン マタン ドラージュ(カミーユ・グタール/イザベル・ドワイヤン)

アニック・グタール
©Goutal Paris
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アン マタン ドラージュ

原名:Un Matin d’Orage
種類:オード・トワレ
ブランド:グタール
調香師:カミーユ・グタール、イザベル・ドワイヤン
発表年:2009年
対象性別:女性
価格:100ml/28,050
販売代理店ホームページ:ラトリエ デ パルファム

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日本庭園に咲く、嵐の後の、クチナシの真珠の輝き

©Goutal Paris

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東京の梅雨時に咲くクチナシに触発されてこの香りを調香しました。フランスで育つ花に比べ、日本のクチナシは手のひらに乗るほどとても大きな花なのです。

カミーユ・グタール

2009年にグタールより発売された「アン マタン ドラージュ」は、フランス語で〝嵐の朝〟の意味を持つ日本庭園からインスパイアされた香りです。カミーユ・グタールイザベル・ドワイヤンにより調香されました。

この香りについて話すとき忘れてはならないのは、1980年代に夫と京都を訪れたアニック・グタールが、高台寺の日本庭園でガーデニア(日本をテーマにした香りなので以下、クチナシと呼ばせてください)に遭遇し、一瞬にしてこの花の不思議な魅力に取り憑かれたという話です。

そして、彼女は滞在先のすぐ傍の塀の上にもこの花が咲いていることを知り、夫に「この花は本当に素晴らしい」と話していると、なんと彼は塀によじ登り、そのクチナシを妻にプレゼントしたのでした。そんなクチナシをテーマに、アニックが1989年に生み出したのが「ガーデニア パッション」でした。

実は、この物語には続きがあるのです。パリの空港に迎えに来ていたカミーユの前に現れた、母はとても美しく見えました。「どうしたんだろう?」と考えたカミーユの目の前に、母のジャケットのラペルのフラワーホールに差されたクチナシの花びらが飛び込んできたのでした。

そして、10数年の時が経ち、カミーユは、日本であの時母が身に付けていたクチナシに再会したのでした。この香りは、1989年の母から、2009年の娘に手渡された20年越しのクチナシの花なのです。

嵐が獣のように咆哮し、風がうねり、大地に根を張る花々を全て根絶やしにしようと画策する。しかし、そんな嵐の野望を打ち砕いたクチナシの花々は、曲がっていた茎をピンっと伸ばし、嵐の後の青空に向かって、真珠のように白い花びらに露を残し照り栄ゆる。

そんな嵐=台風の多い日本において(もしくは西欧のどこかの国の日本庭園にて)、クチナシがもっとも輝く栄光の瞬間を、女性にとっても、嵐を乗り越えた後こそが、もっとも輝くことが出来るチャンスよ!というメッセージと共に伝えてくれる香りです。

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嵐を乗り越えた後、女性はもっとも輝くことが出来る!

私はパチパチと電気の音がする香りを作ることが長年の夢でした。

イザベル・ドワイヤン

嵐の後の翌朝に、窓を開けたとき日本庭園に咲いていたクチナシを目にしたあなたの鼻先に飛び込んでくる朝の光とペトリコールの香りを、シチリアの太陽で甘やかされたレモンとジンジャーのウォータリーな香りに、シソ・アブソリュート(二酸化炭素で抽出)を優しく注ぎ込むことにより表現しています。

さあ、視線を太陽から、地面へと向けてみましょう。そこには、今まさに曲がっていた茎を起こし、花びらには、戦いの跡(=雨露)をしっかり残し、真珠の輝きを放ちながら、花弁を起こすクチナシの姿を目にすることが出来ます。

そんなみずみずしいこの香りのはじまりは、オゾンノートを連想させ、まだ熟していない桃に頬ずりしているような感覚を覚えさせます。それがミネラルノートと巧みにブレンドされているのです。

やがて、爽やかなレモンとジンジャーにジャスミンの香りが溶け込み、朝の風となり、窓辺のあなたにクチナシの香りを運んでくれます。ジャスミンとチャンパカはあくまでも咲いたばかりの若い花であり、しっとりと慎ましく香っておられます。

そんな二つの花々の斜め後ろに立っていたクチナシが、ふくよかで艶やかなお姉さんのように、そっとあなたの手を取り、日本庭園へと導いてくれるのです。〝心が揺り動かされた瞬間=感情〟を香りにするグタールの香りの魅力が、100%なにものにも遮られることなくあなたの肌を透き通して心に染み込んでゆくのです。

ほんのりとした苦み香る、青々とした伴奏の中で、馥郁な香りを解き放つクチナシの花を祝福するようにクリーミーなサンダルウッドに包み込まれる中、心の中に静かに日本庭園が移植されていくように、花からではなく、心の底からクチナシの香りを感じるような円やかな余韻で満たされてゆくのです。

あらまあ、ここで「アン マタン ドラージュ」にとってもっとも重要なひとつの香りを忘れていました。マグノリアです。この頭上から包み込むように香るフレッシュフルーティなバニリックな甘い香りが、レモンと見事に調和し、クチナシをはじめとするそれぞれの花と草に生命の煌きを与えているのです。つまり、花とグリーンとジンジャーの中にあるスパイスを見事に結びつける役割を果たしているのです。

ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「アン マタン ドラージュ」を「ウッディ・イチジク」と評し、「〝嵐の朝〟という名。これを調合した人物は、きっと嗅覚障害ですさまじいウッディアンバーノートを感じなかったのだろう。おかげで、歯垢を超音波で撃退するほどのフレッシュグリーンの香りができた。」と2つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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香水データ

香水名:アン マタン ドラージュ
原名:Un Matin d’Orage
種類:オード・トワレ
ブランド:グタール
調香師:カミーユ・グタール、イザベル・ドワイヤン
発表年:2009年
対象性別:女性
価格:100ml/28,050
販売代理店ホームページ:ラトリエ デ パルファム


トップノート:シチリア産レモン、ジンジャー、シソ
ミドルノート:ガーデニア、ジャスミンサンバック、マグノリア、インドネシア産チャンパカ
ラストノート:サンダルウッド