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セルジュ・ルタンス

【セルジュ ルタンス】アン リス(クリストファー・シェルドレイク)

セルジュ・ルタンス
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アン リス

原名:Un Lys
種類:オード・パルファム
ブランド:セルジュ・ルタンス
調香師:クリストファー・シェルドレイク
発表年:1997年
対象性別:ユニセックス
価格:不明

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天国にいちばん近い百合の香り

『受胎告知』 サンドロ・ボッティチェッリ、1489年。

月の光を浴び、柔らかくシルキーな花びらを持つこの夢のような大理石にインスピレーションを得て、馬上槍試合、血、黄金に満ちた中世の世界を創り出しました。輝くような香りを放つ、素晴らしい時祷書です。

もしその雪のような白さが話せるとしたら、聖母マリアは青ざめることだろう。私は王家の紋章である≪ユリの紋章≫のような香りを振りまくことによって、人をフランスに王がいた時代の宮廷に連れ戻すのだ。

セルジュ・ルタンス公式サイトより

フランス語で「一輪の百合」の意味を持つ香り「アン リス」は、1997年に発売されました。現在、パレ・ロワイヤル本店だけで取り扱われている「レフラコンドターブル」コレクションのひとつであるこの香りは、クリストファー・シェルドレイクにより調香されました。

1489年にボッティチェリが描いた『チェステッロの受胎告知』において、キリストを産むために神によって選ばれたことを、聖母マリアに告知するために訪ねた大天使ガブリエルは百合を手に現れます。

百合の花の透き通るような白さは、威厳と純潔を表し、聖母マリアを象徴する花として〝天国の花〟とまで呼ばれています。「アン リス」は、そんな百合の魅力を、ルタンスの闇ではなく、光(目も眩む光は、結局、闇を生む)によって描き上げた香りです。それは〝天国にいちばん近い百合の香り〟とも言えます。

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天使が告知するように香る=息を呑むほど美しい百合


この香りの素晴らしいところは、スプレーから香りが飛び出すように香り立つのではなく、大天使ガブリエルが私たちに〝告知〟するように、一瞬で息を呑むような美しい百合の香りが広がってゆくところにあります。

厳かに鈴蘭のカリヨンが鳴り響く中、太陽の光を浴びたローズとライラックが開花する情景からこの香りははじまります。

三つの花の周りに存在する(レモンとグリーンノートによる)緑豊かなきらめきが、ゆっくりとインドールが効いた甘やかなジャスミンと結びつき、厳かに透き通るように真っ白な百合の香りを生み出してゆきます。徹頭徹尾、世俗的なアニマリックを排除し、スパイシーさは荘厳さの邪魔をしない程度に香るのみです。

花々が咲き乱れるのではなく、頭を下げた瞬間、白いヴェールをかけられるように、あまりにも繊細な肌触りに、身震いしてしまうほど美しい百合の香りに包まれてゆきます。

やがて、聖母マリアの微笑みのような温かいムスクと、夢のようにクリーミーなバニラが、百合に羽を与えたかのように、天にも昇る高揚感を与えてくれるのです。まるで一瞬で恋に落ちた瞬間のように、真っ白に燃え尽きるように、白百合に心がさらわれていくようです。

それは気高き純潔を奪い去ろうとする紳士に摘み取られようとしている百合のようでもあります。思わず摘んでしまいたいと手を差し出さずにはおれない百合の香り。純潔が失われ、天国にもっとも近かった百合が、地上の官能の渦に飲み込まれていく一寸前を封印した香りとも言えます。

だからこそ、この香りは、人生でただ一度だけつける瞬間が来れば幸せな香りかもしれないのです。

フレデリック・マルの「リス メディテラネ(地中海の百合)」と双璧を成すと言われている百合の香りの決定版です。

タニア・サンチェスは『世界香水ガイド』で、「アン リス」を「グリーンフローラル」と呼び、「どこか月並みで、鼻につくけれど、魅力的なホワイトフローラル(ジャスミン、スズラン)はグリーンを加えて新鮮さを表現し、バニラで甘みを出している。」

「百合を奇妙にしているハムのような匂いは、肌につけるより紙の方がよりはっきりと香る。」と3つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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香水データ

香水名:アン リス
原名:Un Lys
種類:オード・パルファム
ブランド:セルジュ・ルタンス
調香師:クリストファー・シェルドレイク
発表年:1997年
対象性別:ユニセックス
価格:不明


シングルノート:百合、ムスク、バニラ