作品名:華麗なる賭け The Thomas Crown Affair (1968)
監督:ノーマン・ジュイソン
衣装:セオドア・ヴァン・ランクル/ダグラス・ヘイワード
出演者:スティーブ・マックイーン/フェイ・ダナウェイ/アストリッド・ヒーレン
バラクータのハリントンジャケット
オープニングとグライダーシーンで流れる曲「風のささやき」は、ミッシェル・ルグランにより作曲され、『マイ・フェア・レディ』(1964)のレックス・ハリソンの息子ノエル・ハリソン(1934-2013、1952年と1956年にスキー・アルペンのイギリス代表選手としてオリンピックに出場。)により歌われ、アカデミー主題歌賞を獲得しました。
トーマス・クラウン・スタイル5 ハリントンジャケット
- バラクータのG9ジャケット、ネイビー
- クルーネックのブルーのリブニットTシャツ、半袖
- カーキのコットンパンツ、ベルトループなし、サイドアジャストつき
- ブラウンスエードのデザートブーツ
- ダークネイビーのベースボールキャップ
- ペルソールPO714
バラクータのG9ジャケットは、1958年にエルヴィス・プレスリーが『闇に響く声』の中でも着ていました。
マックイーンは、アメリカにおいて、〝キング・オブ・クール〟と呼ばれています。その名称を象徴するのが、このバラクータを着用したシーンのスタイルなのです。彼は、ほとんど全ての作品の中のスタイルを派手な色合わせではなく、枯れた色で合わせています。ダークネイビーのジャケットとダークネイビーのリブニット、ダークネイビーのキャップ、そしてカーキのコットンパンツ、ブラウンのデザートブーツといった具合にです。
それは蛍光色や、派手な流行色に乗っかかっていた60年代当時の男性ファッションを嘲笑うかのような「落ち着き払った男の自信」に満ちたスタイルだったのです。
昼はネイビータイ、夜はレッドタイにチェンジ。
トーマス・クラウン・スタイル6 ダークネイビーからレッドへ
- ダグラス・ヘイワード
- ダークネイビーの3ピース、タイトシルエット、細身のラペル、2つボタンジャケット、3つの袖ボタン、このスーツだけが、ラペルのないダブルベスト
- 青のストライプ入りの白のコットンシャツ
- シルクのダークネイビーのネクタイ
- ポケットチーフ、グレー系
- ブラック・レザーのダービーシューズ
- パテック・フィリップの懐中時計。
- カルティエのタンク・アメリカン
「君は新しいハンフリー・ボガートになれるよ!」
「君は内気で、あまり話をしないんだよ!」
「君は一匹狼なんだけど、完全性を持っている人物なんだ!」
「君はトコトン静かで、勇敢なんだ!」
「君は女好きだけど、女性たちについては基本的にシャイなんだ!」
「君の微笑みは口の辺りが引き締まっていて、歯を見せることはないんだ!」
「君の話しぶりが、人に興味か何かを失わせるほど悪い段落を作ってしまうから、決して5~10語以上の単語を持つ言葉を口にしてはいけないんだ!」
「君が以上のことから逸脱しなければ、君はナンバー1だよ!」原作・脚本を担当したアラン・R・トラストマンが、スティーブ・マックイーンにアドバイスした言葉。
夜のデートでは、ネクタイとポケットチーフ、そして、シャツをさらりと変えているマックイーン。目的によって、スーツのイメージを小物の組み合わせによって見事に変えています。
ちなみにラスト・シーンでは、マックイーンは、ダークネイビーの3ピースにピンクシャツでコーディネイトしています。
この作品はマックイーンにとっても、「賭け」と言える作品でした。それは、今までのスーツとは無縁のイメージを覆す役柄に対する挑戦であり、この作品の「賭け」に勝ったからこそ、スティーブ・マックイーンは男性にとってのスタイル・アイコンとしての不動の地位を勝ち取れたのでした。
マックイーンは、教えてくれます。つまり、男にとって、スーツに袖を通すことによって、男はより洗練されるという事実を。この作品の重要性は、それまでスーツを着たことが無かった男が、スーツを着ることによって、いかに洗練される存在になり得たかという〝男の洗練〟の歴史を教えてくれるところにあるのです。