スペルバウンド
原名:Spellbound
種類:オード・パルファム
ブランド:エスティ・ローダー
調香師:ソフィア・グロスマン
発表年:1991年
対象性別:女性
価格:不明
スペルバウンド=魅せられて
エスティ・ローダーから1991年に発売された「スペルバウンド」は、英語で「魔法にかかった、魅せられて」という意味です。フロリエンタルのこの香りは、ソフィア・グロスマンにより調香されました。
この香りは、1945年にアルフレッド・ヒッチコックが監督したサスペンス映画『白い恐怖(原題:スペルバウンド)』からインスパイアされた香りです。この作品は、当時『カサブランカ』の成功により人気の絶頂に達していたイングリッド・バーグマンを主役に迎え、後に『ローマの休日』に出演するグレゴリー・ペックと競演した作品でした。
特にサルバドール・ダリが担当した夢のシーンは評判となり、シュルレアリスムに対する免疫の少なかったアメリカにおいてこの映像は衝撃そのものでした(プロデューサーのデヴィッド・O・セルズニックでさえも「ダリの仕事が素晴らしすぎて、見れば見るほど気分が悪くなる」と日記に書きなぐったほどでした)。
圧倒的に色香のある男性に迫られ〝悪の華〟を咲かす香り
圧倒的な甘さで迫る男の色香に、胡散臭さを感じながらも、その勢いに呑み込まれて落ちてしまう女性の物語。それがこの香りのイメージなのかもしれません。
ジューシーなアプリコットが、オレンジ・ブロッサムの力を借り、とんでもなく甘い香りを放ちます(最初から最後までクローブがいる)。間違いなく、この男は、善良ではないという警告音を発するほどの甘さです。
しかし、そんな警告音を掻き消すようにひんやりとしたスズランのフレッシュグリーンな香りが、甘さと冷たさのコントラストを生み出してゆきます。
「愛を信じないこの美男子の心に、私だったら、再び火をつけることが出来るはず!」という気持ちを芽生えさせられ、無限の距離感を感じさせるアンバーとバニラ、サンダルウッドを搔き分けて、濃厚な甘さの中に、スパイシーなカーネーションとクリーミーなチューベローズのトーチを突き立てようとする果敢なる彼女の運命や如何に!
そして、アプリコットはカーネーションとチューベローズによりワインのようなコクを生みながら、シナモンとコリアンダーを付け加えてゆきます。最終的には、甘い罠に絡めとられ、この純粋なる心を持つ女性の心にも、〝悪の華〟が育ち始めるのです。
この「スペルバウンド」という名は、発売当時の欧米人にとっては、ヒッチコックの映画よりも即座に、スージー・アンド・ザ・バンシーズの同名のヒット曲(1981年)を連想させたことでしょう(そして、この香りのイメージともぴったりです)。
タニア・サンチェスは『世界香水ガイド』で、「スペルバウンド」を「薬用の糖蜜」と呼び、「うんざりするほど甘過ぎて、気持ちが悪くなる。何マイルも先まで引きずる。馬をも驚かす。どんどんひどくなる。」と1つ星(5段階評価)の評価をつけています。
香水データ
香水名:スペルバウンド
原名:Spellbound
種類:オード・パルファム
ブランド:エスティ・ローダー
調香師:ソフィア・グロスマン
発表年:1991年
対象性別:女性
価格:不明
トップノート:アプリコット、ブラジリアン・ローズウッド、ローズ、スズラン、レモン
ミドルノート:カーネーション、チューベローズ、カルダモン、ヘリオトロープ、水仙、ジャスミン、オレンジ・ブロッサム、リリー
ラストノート:アンバー、サンダルウッド、バニラ、オポポナックス、ベンゾイン、シベット、シダー、ベチバー、ムスク