ソーラー ブロッサム
原名:Solar Blossom
種類:オード・パルファム
ブランド:ミゼンジール
調香師:アルベルト・モリヤス
発表年:2019年
対象性別:ユニセックス
価格:日本未発売
皇帝アルベルト・モリヤスのブランド、ミゼンジールとは?

2013年にヴェルデーヌ通りにオープンしたジュネーヴの一号店 ©MIZENSIR.COM

娘ヴェロニクとアルベルト・モリヤス ©MIZENSIR.COM
私がこのブランドを妻と興したのは、ただただ自分の好きな香りを自由に作りたかったからです。つまり想い出や、家族、過去の感情、あるいは過去の出来事を思い起こさせるような香りです。
だから、一番好きなものは何かと聞かれても難しいのです。すべてが自分の子供のような気がするので。香りの調香には、1年から6年かけます。それも毎日ではなく、週に1日か2日だけ作業する感覚で作り上げています。
アルベルト・モリヤス(以下すべてアルベルト・モリヤスのお言葉)
1999年にジュネーヴで創業されたアルベルト・モリヤス自身のブランド、ミゼンジールは、当初キャンドル・コレクションからはじまりました。元々は、パトリック・フィルメニッヒにVIPの顧客のために提供するキャンドル・コレクションを作るように依頼されたことがきっかけでした。
「ミゼンジール(Mizensir)」とは、mis en cire(set in wax)とモリヤス(Morillas)のM、そして、真ん中のZenは、モリヤス一家が大切にしている禅の精神であり、Sirは英国の貴族精神=エレガンスを意味する言葉遊びです。
妻クロディーヌと娘ヴェロニクが中心になって運営しているファミリー・ブランドであるミゼンジールに、フレグランス・コレクションが誕生したのは2015年のことでした。きっかけはヴェロニクのアドバイスからでした(2011年以降は元弁護士でもある彼女がこのブランドの最高責任者になる)。
そして「エディション ドゥ ヴェロニク」という娘の名を冠した香りを含む、9種のフレグランスを作りました。2019年には、モリヤスが幼少期を過ごしたセビリアの香りを投影した、オレンジ・ブロッサムの香りとして「ソーラー ブロッサム」が発表されました。
1960年、エアコンがない時代のセビリア。春の強い日差しの下、咲き誇るオレンジの木々がパティオを芳香で満たしています。海からのそよ風が私たちをビーチへ誘い、木陰には涼を取るためのバニラアイスクリームが私たちを待っている。そんな少年時代の郷愁を誘う香りです。
このブランドで、ニッチな香りを作るつもりは全くありません。そうではなく卓越した製品を作りたいと思いました。最高の原料と合成香料を使い、これまでの経験を生かして、誰かのためではなく、自分のために何かを作りたかったのです。
私たちにとって重要なのは香りです。最高の品質の香水を作ることが最も重要で、この理由から、私は広告に予算を割かないことに決めました。
「ラブ ドント ビー シャイ」をより洗練させた香り

©MIZENSIR.COM

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この香りは私の念願でした。しかしオレンジブロッサムを軸に意図した効果を得るまでには数年かかりました。「ソーラー ブロッサム」は、まるで理想を追い求めるかのように、何年もかけて作り上げた作品の一つです。
個人的な香りと普遍的な香りの想像力の境界線をまたぐこの香りは、私の幼少期の、ほとんど無意識だった記憶と、初めて出会った香りの普遍的な記憶の両方を呼び起こします。
セビリアで一番大切な嗅覚の記憶は、間違いなく、満開のオレンジの木の花の香りだ。春になると、甘く酔わせるような、ほろ苦い香りが路地裏に漂うんだ。しかし、何よりも心に残っているのは、実家のパティオの思い出です。このパティオは我が家の中心であり、光とジャスミンの香りが溶け合うリビングスペースでした。私にとってこの香りは、アンダルシアの夕暮れの爽やかさ、噴水の水の音、そして家族と過ごす和やかな時間と切り離せない。
アルベルト・モリヤスが幼少期を過ごした街・セビリアのランドマークのひとつアルカサル宮殿とその庭園にオマージュを捧げたこの香りは、スペインのきらめく太陽を思わせるオレンジとレモンの柑橘系の爽やかさと、パラディゾン®により明るいジャスミンが溶け合うようにしてはじまります。まるで焼けた石畳にかけられた冷たい水を思い起こさせます。
すぐに官能的なローズがジャスミンと得も言えぬハーモニーを奏でてゆきます。そしてマートルのようなハーブとサイプレスの深みが加わり、噴水のアクアティックなタッチが、全体に落ち着きと爽やかさを添えてゆきます。
素肌の上で開花したオレンジブロッサム、ジャスミンが、降り注ぐ光により滑らかにとろけるバニラアイスクリームと混じり合い、芳醇さを増し、とても軽やかにアンダルシアの庭園のきらめくオーラ=ソーラー・ブロッサムのふんわりと甘い余韻で満たしてくれます。

©北条司/NSP・TMS
キリアンの「ラブ ドント ビー シャイ」とメモ・パリの「シントラ」と似た系統なので、「キャッツ♥アイ」の来生三姉妹に例えるなら、「ソーラー ブロッサム」は、大人の色香漂う長女・泪です。
スイスの自宅の庭には、アンダルシア特有の香りを再現するために、オレンジの木とジャスミンを植えました。セビリアは私の中に、私のルーツ、想像力、そしてあらゆる作品を通して、常に生き続けています。それは私が調香するすべての香水に、オレンジの花の温かみ、鮮やかなスパイス、グアダルキビール川の清らかさといった、消えることのない存在感として現れています。
香水データ
香水名:ソーラー ブロッサム
原名:Solar Blossom
種類:オード・パルファム
ブランド:ミゼンジール
調香師:アルベルト・モリヤス
発表年:2019年
対象性別:ユニセックス
価格:日本未発売
トップノート:セビリア・オレンジ・ネロリ・エッセンス、パラディゾン®
ミドルノート:エジプト産ジャスミン・アブソリュート、エジプト産オレンジブロッサム・アブソリュート
ラストノート:マダガスカル産バニラ・アブソリュート