究極のフレグランスガイド!各ブランドの聖典ページ一覧にすすむ
フレデリック・マル

【フレデリック マル】アウトレイジャス(ソフィア・グロスマン)

フレデリック・マル
この記事は約6分で読めます。

アウトレイジャス

【特別監修】Le Chercheur de Parfum様

原名:Outrageous
種類:オード・パルファム
ブランド:フレデリック・マル
調香師:ソフィア・グロスマン
発表年:2007年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/42,460円
販売代理店ホームページ:ラトリエ デ パルファム

スポンサーリンク

女帝ソフィア・グロスマン降臨


女帝ソフィア・グロスマンが、フレデリック・マルに降臨した唯一の香りです。

アウトレイジャス」という言葉は、両極端の意味を持つ単語です。その意味は、「とんでもなく素晴らしい」という意味と、北野武監督の映画『アウトレイジ』の意味である「凶暴な、凶悪な」という意味を持ちます。そして、この香りは、その両極端を兼ね備えた香りと言えます。

私は女性のためのフレグランスに男性っぽい香料を入れるのがとても嫌いです。レモンやオゾンノートは、私自身が身に纏ってもとても疲れます。それは官能性ではなく清潔感を生み出すので、ランドリー製品やルームスプレーに適しています。

フレグランスを調香する時、私はそれぞれの成分に何か意味を持たせ、自分の考えに沿う成分を使うようにしています。それが変なものでしたら、まず何よりも私を退屈させることでしょう。ですから、私は自分のフレグランスに、シトラスやフレッシュな香りを避けるようにしているのです。

ソフィア・グロスマン

そして、この香りは、常々、シトラスやフレッシュな香りの創造はしないというポリシーを持っていたソフィア・グロスマンに、たった一度だけ、そういった香りを独自の感性で生み出してもらったものなのです。だからこそ、フレグランス業界にとっても「とんでもない香りだ!」という訳なのです。

私は男性用の香水に全く興味がありません。考えるとしてもすごくフェミニンになるでしょう。

ソフィア・グロスマン

さらに、男性用の香水を作ることに全く興味がなかったソフィアに作ってもらった、普通を超えた〝素晴らしい〟メンズよりのフェミニンな香水なのです。

スポンサーリンク

絶対を本当に絶対にする香り


ある香りの本質を知りたければ、その香りの誕生の歴史を知るにこしたことはありません。この香りは、もともとは2007年にバーニーズ・ニューヨーク限定で販売されました。その時は、全く違うパッケージで、通常より安い値段が売りで発売された〝フレグランス初心者のためのフレデリック・マル〟として誕生した香りでした。

だからこそ、この香りは、堅苦しさが一切なく、女帝が遊び心で創造したポップアートのような香りなのです(そして、男性用を全く作る気がなかった女帝のフレグランスの中でも、最もマスキュリンな香り)。

ちなみにマルが何度ソフィアに尋ねても、香りの細かい構成については一切教えてくれなかったという、マルにさえも秘密の分子によって生み出された香りなのです。

マル自身はこの香りを「クリーンなセックス・アピールのカクテル」であり「香りのジーンズ」と形容しています。つまりは、モテない童貞が夢に見るような、セクシーな女性からアプローチされる瞬間を香りによって体現した〝夢の香り=ドリーム・セント〟なのです。

ブラジルのカクテル・カイピリーニャ(ブラジル原産の蒸留酒カシャッサをベースにライムと砂糖で作るカクテル)からインスパイアされたこの香りは、コパカバーナのビーチで、サンバナイトするという極上のロマンスとデンジャラスなムードが漂っており、どこかあの『シティ・オブ・ゴッド』のファベイラも連想させます。

貧困と犯罪と暴力という負のパワーが後ろに控えていればいるほど、その香りは、若者に対して絶大にアピールするのです。ある意味、ラグジュアリー・ストリートの先駆けとも言えるラグジュアリー・ストリート・フレグランスとも言えます(このスタイルの本質にあるのは、極めてクリーンな空気の中で、犯罪と暴力をチラつかせるところにあります)。

何よりも、今までの文章を無に帰することを記すならば、この香りこそが、〝絶対を本当に絶対にする〟誰からも嫌われず、愛され、それでいて、特別感さえも醸し出せる奇跡のような香りなのです。

スポンサーリンク

20代半ばまでの若者に絶大なる人気を誇る香り

私は今まで誰も嗅いだことの無い香り、虹の八つ目の色のような新しい香りを生み出すことが出来る新しい分子の創造を夢に見ていました。

フレデリック・マル

灼熱の太陽の下で、激しく弾けるライムとミントによって、ジューシーなグリーンアップルとグレープフルーツが目覚めるようにしてこの香りははじまります。

すぐにAK47の銃弾のファンファーレのようなアルデハイドとサリチル酸アミルが弾けるように、香り全体を包み込み、この香りは単なるシトラスシャワーによる天の恵みではなく、暴力と享楽を感じさせる人工的なパーティーの香りであることに気づかされます。つまりは「サイバーカイピリーニャ」の香りとなるのです。

やがて、シナモンに囁かれ、アルデハイドが主役の座を降りる一方で現れるオレンジブロッサムとネロリによって、サイバーパーティーは、コパカバーナのビーチに舞台を移し、楽しく陽気な甘さに包まれた、原始的かつ情熱的なビーチパーティーへと突入するのです。

汗と感涙と肉欲の波の中で疲労した肉体に、大いなる安らぎを与える太陽が再び昇ります。アンブロキシドとシダー、ムスクによるドライダウンの中で、最後の輝きを放つアップルとネロリが、クリーミーなムスキーさで、洗濯されたばかりの白いシャツが乾いていくように、真っ白に燃え尽きていく心地よい消失感で包み込んでくれるのです。

日本においても20代前半の若者に絶大なる人気を誇るマルの香りです。そして、私たちはここで、ソフィア・グロスマンという調香師の特徴を知ることになるのです。彼女の偉大さは、アメリカ市場を十二分に知り尽くした調香スタイルにあります。

私の製品で人々が満足してくれると、喜びを感じます。私のゴールは女性に、できるだけコストをかけずに良い香りになってもらうことです。

ソフィア・グロスマン

元々ソフィアは、トイレタリー、ランドリー、ボディ製品を作るのが好きで、ダウニーエイプリルフレッシュも彼女が作ったものなのです。(だからこそこの香りには、柔軟剤のようなすがすがしさがある)。

つまりは、複雑な香料のブレンドを避け、ミニマルな香りを生み出すことを心がけ、アニマリックな香りではなく、クリーンな香りを生み出すということを極めている調香師なのです。

香りの中に教養を求めるのではなく、香りと一緒に燃え尽きさせてくれる香りを生み出す人なのです。

ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「アウトレイジャス」を「アップル・ムスク」と呼び、「真の鬼才とは、シンプルさを探求する人物である、と私は常に感じてきた。そしてグロスマンは、神秘さを保つためのベールが必要ないことを証明すべく、次から次へと覆いをはぎとってくれた。「100% Love」のように、最近の彼女の作品には、つつましさ、雄大さ、そしてゆるぎない自信が漂っている。」

「アウトレイジャスのトップノートは注目すべきだし、クラブアップルが積まれた果樹園の貯蔵庫の香りがし、そして後には「DKNY Women」のスチームアイロンノートが続く。これはマクロサイクリック・ムスクが一種のエーテルを含んでいるためだと私は考えている。これにより一瞬つやがでる。ストレートで、記憶に残り、そしてふしぎですらある。すばらしい。」と4つ星(5段階評価)の評価をつけています。

スポンサーリンク

香水データ

香水名:アウトレイジャス
原名:Outrageous
種類:オード・パルファム
ブランド:フレデリック・マル
調香師:ソフィア・グロスマン
発表年:2007年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/42,460円
販売代理店ホームページ:ラトリエ デ パルファム


トップノート:ライム、シナモン、グリーン・アップル、ミント、グレープフルーツ
ミドルノート:オレンジブロッサム、ネロリ
ラストノート:アルデハイド、アンバー、シダー、ムスク