オルフェオン
原名:Orphéon
種類:オード・パルファム
ブランド:ディプティック
調香師:オリヴィエ・ペシュー
発表年:2021年
対象性別:ユニセックス
価格:75ml/28,270円
公式ホームページ:ディプティック
ディプティック60周年記念フレグランス
ディプティックの創業60周年(1961年創業)を記念して2021年3月15日に発売された「オルフェオン」は、創業当初サンジェルマン大通り34番地の本店(ポントワーズ通りとの交差点にある)の隣にあったナイトクラブ「Orphéon(オルフェオン)」の名がつけられた香りです(数年後に、閉店した時、店舗を購入し、本店は拡張されました)。オリヴィエ・ペシューにより調香されました(本作がディプティックにおける16作品目となる)。
創業時、ディプティックは、世界中を旅して持ち帰ったアバンギャルドなファブリックや壁紙などの商品を販売していました。1963年からオリジナルのアロマキャンドルを販売し、人気を博するようになり、1968年にはじめての香水「ロー」を販売しました。
ブランドを創業したデスモンド・ノックス=リットとイヴ・クエロン、クリスチャンヌ・ゴトロの三人は、それぞれ演劇、建築、絵画の世界で秀でた才能を持つクリエーターでした。彼らは、世界中を旅していない時には週に何度も、「オルフェオン」に通いました。
この店は彼らのサロンであり、夜の隠れ家でした。新作を試したり、スケッチしたり、アイデアが次々と湧き上がるのもこの場所からでした。
そんな60年代の三人の熱気と、ディプティックの秘密基地とでも呼ぶべき「オルフェオン」の空気を現在に蘇らせたのがこの香りです。
調香師と20代の音楽プロデューサーが生み出す60年代のパリ
私たちはアーティストでした。私たちはお金や野心ではなく、情熱、想像力、創造力、そして、真の誠実さを持って何かをしたいという気持ちで動いていたのです。
クリスチャンヌ・ゴトロ
2006年以降クリエイティブ・ディレクターの役割を担っているミリアム・ バドーが、60周年を記念する香りのただひとつのリクエストとしてオリヴィエに提示したのは、ウッディな香りにしてほしいということでした。
その理由は、ブランドを代表する二つの香り「フィロシコス」(フルーティー・グリーン・ウッディ)と「タムダオ」(スパイシー・ウッディ)がウッディの香りだったからです。
当初、オリヴィエは、60年代のサン・ジェルマン・デ・プレの世界に再び戻るような、興奮、熱狂、喜びの時代を連想させつつも、極めてモダンな香りを作りたいと考えるあまり混乱してしまいました。
そんな彼に一筋の光となってくれたのは、この香りのためのオリジナル音楽(ジャズ・ボサ風)を創造することになった音楽プロデューサー、ルイス・オフマン(10代でデビューし、まだ20代前半)との共同作業でした。
そして、この若者の感性により、60年代そのものの香りを生み出してみるべきだとオリヴィエは考えるようになったのでした。
私がディプティックの香りを生み出すとき、必ずひとつだけ心がけている共通点があります。それは香りのアクシデントや驚きを大切にし、〝これはおもしろい!そうなるとは思わなかった〟という香りの締めくくりを持ってくるようにしていることです。
オリヴィエ・ペシュー
『黒いオルフェ』からインスパイアされた香り
この香りはサン・ジェルマン・デ・プレへのオマージュでもあります。そして、マルセル・カミュ監督の『黒いオルフェ』(1959、最後の3人の子供たちの朝日を背景にしたサンバが涙が出てくるほど美しい)の世界観を強く反映した香りでもあり、私はこの映画の美しい映像と音楽に大いに刺激されました。
オリヴィエ・ペシュー
光り輝くフローラルウッディの香りは、スライスしたベルガモットとグリーンマンダリンを添えられたジントニックのようなジュニパーベリーの香りからはじまります。
クラシカルなアルデハイドのかき混ぜ棒でジントニックが混ぜられながら、そこにピンクペッパー(マダガスカル産)が加わり、スパークリングします。この香りの後ろから、50年代から60年代のジャズが流れている気配を感じさせます。マイルス・デイヴィス、スタン・ゲッツ・・・
やがて、イランイラン(コモロ産)、マグノリア(中国産)、ダマスクローズ(トルコ産)といった華やかなフローラルに、ひときわジャスミンサンバックが煌くように香りを放ちます。
さらに、その中から颯爽とした男性のオーデコロンの香り(ムスクとアンバー)やエレガントに着飾った女性のメイクアップの香り(ラズベリーとヴァイオレットの口紅の香り)が、全体をパウダリー・フローラルの香りへと方向転換させてゆきます。
ほぼ同じ時に、マスティックとガルバナムのアクセントが加わった、手巻きタバコ(アムステルダマー)の煙がすべてを包み込んでゆきます。蜂の巣とシスタスが甘いアロマティックな雰囲気も与えてくれています。
甘いスモーキーなタバコとパウダリーフローラルに奥から、バーカウンターや肘掛け椅子、ボトルが置かれた飾り棚、ダンスフロアの木張りの床などを連想させる、シダー、ベチバ―、パチョリの光沢のある輝きが充満してゆきます。
そして、ドライダウンしていく中、バニリックなベンゾイン(ラオス産)とトンカビーン(ベネズエラ産)が、過剰なほどのアンブロキサンと結びつき、ジャスミンサンバックのシャイニーな輝きと共に、不思議なフレッシュ感を伴いながら、想像の中のパリへの憧れを掻き立ててくれるのです。
この香りは、男性であるにしても女性にであるにしても、深みのあるヴォイスで、シンプルな人生の物語を伝えるジャズシンガーを連想させます。
オリヴィエ・ペシュー
パッケージ・デザインも非常に凝ったものであり、パリ在住のイタリア人ビジュアルアーティスト、ジャンパオロ・パニによるものです。背面には3つの顔の輪郭があります。3人の創業者をイメージしたものです。
香水データ
香水名:オルフェオン
原名:Orphéon
種類:オード・パルファム
ブランド:ディプティック
調香師:オリヴィエ・ペシュー
発表年:2021年
対象性別:ユニセックス
価格:75ml/28,270円
公式ホームページ:ディプティック
トップノート:ジュニパーベリー
ミドルノート:ジャスミン
ラストノート:パウダリー・ノート、シダー、トンカビーン