モリー・リングウォルド

モリー・リングウォルド1 『プリティ・イン・ピンク/恋人たちの街角』1(2ページ)

    作品名:プリティ・イン・ピンク/恋人たちの街角 Pretty in Pink (1986)
    監督:ハワード・ドゥイッチ
    衣装:マリリン・ヴァンス
    出演者:モリー・リングウォルド/ジョン・クライヤー/アンドリュー・マッカーシー/ジェームズ・スペイダー/アニー・ポッツ



    元祖プチプラ・コーディネート

    80年代ファッションを象徴する3人の登場人物。

    映画とは、全てにおいて、一般的には、古くなるものなのですが、ファッション業界的には、ある種の映画は、決して古くなることのない、時代を映す鏡なのです。ある種の映画とは何か?それはある時代にファッション・トレンドを生み出した映画のことを言います。それはまさにワインが熟成するように、時間が経つほどに、より輝きを増すのです。そういった意味において、ファッション&アパレルに関わる人々が教材としなければならない作品が、この作品『プリティ・イン・ピンク』です。そして、ここにこそ、10代から20代前半の若い男女のエッジの効いたプチプライスのアイテムを楽しむ空気があります。

    この作品により、モリー・リングフォルドは、1980年代後半に、〝ティーンエイジャーのプリンセス〟に君臨することになりました。そして、古着ファッションと、リメイクしたり、帽子をアクセントに使ったり、安いアクセサリーで工夫したりするチープシック・ファッションが若者の間で大流行しました。アメリカにおいて、そんな流れをモリー・リングフォルドの名前の一部を取って、リングレッツと呼びました。そして、本作はモリー・リングウォルド自身の一番のお気に入り作品でした。

    当時『48時間』(1982)『ストリート・オブ・ファイアー』(1984)『ブレックファスト・クラブ』(1985)『フェリスはある朝突然に』(1986)を経て、本作のコスチューム・デザインを担当し、『恋しくて』(1987)『アンタッチャブル』(1987)『ダイ・ハード』(1988)『プリティ・ウーマン』(1990)へと至り、1980年代の人気コスチューム・デザイナーとなるマリリン・ヴァンスによる数々のプチプライス・アイテムが実に魅力的です。実際にKマートに行き、彼女自身が、アンディとダッキーの衣装を調達したのでした。

    リングレッツとは、まさにマドンナ・ワナビーに共通するお金がなくなったってオシャレは出来る。いいえ、お金をかけてオシャレをするのはダサいという感覚であり、それはアンチ・ファッションであり、徹底したブランドの排除主義でした。



    リングレッツとは、一言で言うと、「昨日の自分を裏切る」こと。

    若き日のジェームズ・スペイダーが、いかにもで素晴らしい。

    パンストの上から派手なソックスを履く。レースアップのショートブーツがかわいい。

    ベストを着る女性は、オシャレが倍加するという〝アニーホール・ルック〟の法則をさりげなく引用している。

    アンディ・ルック1 ベスト×ロングフレアスカート
    • ローズ柄のネイビーベスト
    • 左耳だけイヤリング
    • 右手に金属バングル2重
    • ピンクの半そでブラウス、ピンクのレース刺繍の襟
    • ピンクのウールジャケット、肘まで折る
    • フレアな白のロングスカート
    • くすんだピンクの太いクロスベルト
    • 薄ピンクの花柄のポシェットとクリーム色のトートバッグ
    • ブラック・ダービー・ハットに派手なスカーフを、コサージュ
    • 丸眼鏡
    • 白パンストに派手ながらのソックス
    • レースアップのクリーム色のショートブーツ

    「靴は中古で15ドル。服は自作なの」と失業中のパパに報告するアンディ。『グリース』(1978)と同じロサンゼルスのハイスクールで撮影されたこの作品の中には、自分の感性でファッションを楽しむという自由なファッション感覚に満ちています。こういうことを書くのは良いのかは、わかりませんが、基本的に、ファッション感度の高い人は、他人のファッションを参考にすることはほとんどなく、あくまでコーディネートの基本を知り、そこに自分らしさのスパイスを足していきます。

    プチプラ・ブランドがスポンサーとなり、インスタグラマーやブロガーの後押しをしているプチプラ・コーデのつまらなさは、それを真似することによって、どうなるのか?というポイントに尽きます。GUやユニクロ、しまむらでおしゃれを演出するポイントは、徹底した秘密主義にあるのであって、それをネタばらししてしまうと、トリックばかりが目につく、プアプア・コーデになってしまうのです。

    インスタグラムの興隆が、結局は、ファストファッションの首を絞めることになる理由は、この一点に尽きるのです。どこで購入したのか分からないプチプライス・アイテム(もしくはヴィンテージ・アイテム)を身に着けているからこそ、ハイセンスなのであり、「これは実は○○○で購入しました」とネタばらしすることは、退屈な広告にしかならない訳なのです。

    逆説に言うならば、最も魅力的なプチプラコーデの挑戦は、そのコーデで、シャネルなり、ルイ・ヴィトンなりのブティックで、お褒めいただけるかを試すことです。確かに実力差はあれど、ラグジュアリーで働く若い女性は、上質な着こなしを見抜く力を蓄えているものです。プチプラ・コーデにそのレベルの、ラグジュアリーを小馬鹿にする気概がなければ、実に空しい無個性なコーディネートに躍起になる人々に過ぎなくなるのです。

    「靴は中古で15ドル。服は自作なの」というセリフが許される季節は、やはり21歳までであり、どうやら、フォーエバー21なんて、クソくらえなのです。結局のところ、プチプライスとは、21歳までのファッションの登竜門コーデであり、それ以降は、極秘に取り入れるべきコーデなのです。いい大人が、上質な生地感も分からずにファッションについて述べている記事(もしくはただの散文)ほど、みすぼらしいものはありません。

    アンディ・ルック2 レーススタイル
    • 黒カーディガン、白いレースがネックラインに。パープルとグリーンの刺繍
    • 細いゴールド・フープ・イヤリング。左右に1,2

    リングレッツとは、昨日の自分を裏切るファッションのことを指します。そして、そんな回転木馬のようなファッションが、やがてその人の個性を生み出す原動力となるのです。



    さりげなくトレンドも取り入れるあざとさ。

    アンディ・ルック3 パワーショルダー・ジャケット
    • パッド入りのネイビーブルージャケット
    • ネイビーブルーのマフラー
    • 白のロングスカート
    • ハイカットシューズに白ソックス




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