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【モーブッサン】モーブッサン(クリスティーヌ・ナジェル)

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©Mauboussin
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モーブッサン

原名:Mauboussin
種類:オード・パルファム
ブランド:モーブッサン
調香師:クリスティーヌ・ナジェル
発表年:2000年(日本未販売)
対象性別:女性
価格:未発売

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モーブッサンのはじめての〝香りの宝石〟



1930年代にニューヨークのナイトクラブ「エル・モロッコ」でコーネリアス・ヴァンダービルト・ホイットニーと踊るマレーネ・ディートリッヒ

128カラットのエメラルドとダイヤモンドのブレスレット、97カラットのエメラルドとダイヤモンドのブローチ。

1827年にムッシュ・ロシェにより創業(宝飾職人のアトリエとして)したハイ・ジュエリーブランド、モーブッサンは、パリのグランサンク(パリ5大宝飾店)に属する名門ブランドです。

19世紀末から本格的に栄えたモーブッサンは、1880年に第三代社長に就任したジョルジュ・モーブッサンが中興の祖となり、1923年までに4倍の売り上げをあげました。

そして、1925年のパリ万国博覧会(装飾芸術展)においてゴールドメダルを受賞し、(エメラルド、ルビーをはじめとする)カラーストーンを使用したエキゾチックなアール・デコスタイルと共にその名を不滅のものとします。

かくして1930年代のフランスのハイジュエリー業界を牽引していくことになるモーブッサンは、1946年にヴァンドーム広場の20番に本社を移転し、マレーネ・ディートリッヒポーレット・ゴダード(当時の夫のチャールズ・チャップリンは、ポーレットが『風と共に去りぬ』のヒロインの選考からもれた時、失意の彼女を慰めるためにバングルを購入した)、オードリー・ヘプバーンなどのハリウッド・セレブにも愛されるブランドとなりました。

そんなブシュロンが、初めてフレグランスを生み出したのは2000年のことでした。それは1998年に起きたある事件がきっかけでした。1990年代に、ブルネイの王族の一人ジェフリ・ボルキア(村上麗奈伝説でも有名な)が財務大臣を務めており、当時モーブッサンの80%の売り上げに貢献するほどの上客でした。

しかし、1997年のアジア通貨危機により、98年に失脚したのでした。このことにより、一気にモーブッサンは経営不振になり、それまで王族に対しての販売が主流だった経営戦略を、180度転換することを余儀なくされたのでした。

そして、復興の狼煙として発表されたのが、このフレグランスだったのでした。フルーティオリエンタルの香りはクリスティーヌ・ナジェルにより調香されました。それはセルジュ・ルタンスの「フェミニテデュボワ」と「アンブルスュルタン」を心から愛するクリスティーヌにとっての〝永遠の愛を超一流ジュエリーに刻み込んだ香り〟とも言えます。

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〝モーブッサンの七色の輝き〟

©Mauboussin

七色に煌くボトルイメージがそのまま肌に降り注ぐようにミラベルとプラム、マンダリンを中心としたドライフルーツのレインボーシャワーが、モノトーンのパチョリの月に冷やされ、オリエンタル(=アンバー)の太陽に温められながら到来します。

ジューシーなフルーツではなく、大きな釜でゆっくりと時間をかけて、とろりと艶やかに発酵した果実が、掻き混ぜられているようです。

酔わせるような濃厚なフルーツのお酒に、ダークチョコレート(パチョリ+ベンゾイン)が注ぎ込まれていく瞬間を全身で愛でる時、〝モーブッサンの七色の輝き〟が肌を透きぬけ、心を満たしてゆくのです。とんでもなくリッチな悠久の調べに時を忘れ、香りを忘れ、ただただ、きらめく海の波間に心はよろめきたゆたうのです。

太陽と月光に愛された七色のフルーツの楽園へようこそ。カラージュエリーが生み出すエキゾチックな世界が、ジャスミン、ローズ、イランイラン、そして、すべてを焼き尽くすピーチによって肌の上に作り上げられてゆきます。

やがて、花々はポプリのように乾燥してゆき、スパイシーな渋みを解き放ちながら、スモーキーなオリバナムとベンゾイン、クリーミーなサンダルウッドが、めくるめく香りの変化を飼いならしていくように、柔らかなスエードのような気品と物憂げな空気で満たしてくれるのです。

ティエリー・ミュグレーの「エンジェル」ともよく比較される香りです。

ブランドのアイコニック・イメージでもある大ぶりなカラーストーンをモチーフにした虹色のピラミッドボトルは、ティエリー・ドゥ・バシュマコフによるものです。

ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「「ケンゾージャングル」ともフェンディの「テオレマ」ともつかないようなオリエンタルは、温かみのある、美味しそうなドライフルーツ、気持ちが奮い立つさっぱりとしたウッディ調の樹脂、そしてオリバナムがみごとなコンビネーションをみせる。」

「以来、ナジェルはさまざまなスタイルの香水を数多く手がけてきた。しかし私に、いわせれば、この頃の香水が、濃厚なオリエンタルの女王という彼女のイメージを作り上げた。中でもモーブッサンは彼女の最も優れた作品といえる。SFっぽい4面体ボトルも美しい。」と4つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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香水データ

香水名:モーブッサン
原名:Mauboussin
種類:オード・パルファム
ブランド:モーブッサン
調香師:クリスティーヌ・ナジェル
発表年:2000年(日本未販売)
対象性別:女性
価格:未発売


トップノート:ブラッド・マンダリン、イエロー・プラム、ベルガモット、ミラベル
ミドルノート:インド産ジャスミン、トルコ産ローズ、コモロ産イランイラン、ホワイト・ピーチ
ラストノート:アンバー、パチョリ、バニラ、サンダルウッド、ベンゾイン、レバノン産シダー