究極のフレグランスガイド!各ブランドの聖典ページ一覧にすすむ
アニック・グタール

【グタール】ラ ヴィオレット(カミーユ・グタール/イザベル・ドワイヤン)

アニック・グタール
©Goutal Paris
この記事は約5分で読めます。

ラ ヴィオレット

原名:La Violette
種類:オード・トワレ
ブランド:グタール
調香師:カミーユ・グタール、イザベル・ドワイヤン
発表年:2001年
対象性別:女性
価格:100ml/28,050
販売代理店ホームページ:ラトリエ デ パルファム

スポンサーリンク

天国にいちばん近いすみれの花園の香り

©Goutal Paris


2001年にグタールから発売された「ラ ヴィオレット」は、カミーユ・グタールイザベル・ドワイヤンにより調香されました。1999年に亡くなった母アニック・グタールへ、カミーユと盟友イザベルが捧げる〝永遠の愛〟の香りです。

「ラ ヴィオレット」とは、グタール家が愛した避暑地トスカーナと並ぶ地である、アヴェロン県ライヨール村にある別荘にアニック自身が名づけた名前からとられました。

アニックは、庭に咲いたヴァイオレットの茎を軽くかじり、その甘い香りを楽しむのが好きでした。彼女は別荘の名に命名する程この花を愛していました。そんなヴァイオレット=すみれだけを真っ直ぐにみつめて、二人が生み出した〝すみれ色の楽園〟がこの香水瓶の中にはあります。

スプレーを一吹きし、香りを解き放つと、肌の上に、〝天国にいちばん近いすみれの花園〟が生まれてゆくのです。

定期的に『レ ソリフローレ』コレクションとして、「ローズ スプレンディド」「ル シェブルフイユ(ハニーサックル)」「ル ミュゲ(スズラン)」と共に販売されています(現在はレギュラー)。

四種類の中で、一番落ち着いた香りであり、〝明るさ〟〝可愛らしさ〟〝ピュア〟といった要素が無く、少し〝哀愁〟〝アンニュイ〟な雰囲気をかもし出す香りです。

スポンサーリンク

寄り添うように、一緒に泣いてくれるすみれの香り

©Goutal Paris


寂しい心の中に、透き通るような(少しメタリックな酸味とアーシィーさのある)ヴァイオレットリーフの華やかなグリーンノートの芳香のみちびくままに誘われて、心は遠く耳に聴く、親しみやすく、それでいて繊細かつ軽快な空気に包まれてゆきます。

はじめだけすごく激しく、すぐに、深呼吸したくなるほど澄みわたる空気を感じることが出来ます。

すぐに砂糖漬けされたヴァイオレット(すみれ)の花の温もりが加わることにより、50年代のエレガントなフランスを連想させるロマンティックなパウダリー感が滲み出てゆきます。

フレッシュグリーンスパイシーなヴァイオレットリーフと(フルーティなラズベリーによる)砂糖漬けされたヴァイオレットの花の対比が、心の中に花を咲かせるヴァイオレットではなく、心に寄り添うような生花のように香り立ちます。

ほんのりとフレッシュなターキッシュローズが存在感を増すことによって、パルマ産ヴァイオレットはより自然そのものに、五感に染み渡ってゆきます。それはとてもまろやかで肌馴染みが良く、柔らかな余韻を残しながら、最後の最後に肌の上で〝甘い涙〟のようなものを残し去ってゆくのです。

グラースを愛し、様々な花々を愛したアニック・グタールがローズと共に特に愛した花ヴァイオレット。ローズに希望を、ヴァイオレットには涙を感じていたという彼女のために、心が疲れたとき、明るい香りに包まれるよりも、一緒に泣いてくれる香りを、二人は生み出したかったのでしょう。

ゲランの「アンソレンス」のようにパウダリーな甘さが顕著ではなく、「アプレロンデ」のように詩情豊かで複雑でもない、ゆっくりと心に向かってくるヴァイオレットの香り。

タニア・サンチェスは『世界香水ガイド』で、「ラ ヴィオレット」を「フレッシュ・ヴァイオレット」と呼び、「快活でフレッシュで、健康的に頬が上気しているようなフレグランスだ。フルーティで青々としたヴァイオレットリーフの香りが強調され、ウッディでパウダリーな部分が控えめに香る。」

「接着剤か塗料用シンナーの臭いがかすかにするが、香りのよさが損なわれるわけではない。はじけんばかりに元気な「ドロール ド ローズ」の風変わりな姉といったところ。」と4つ星(5段階評価)の評価をつけています。

スポンサーリンク

「スペル オン ユー」と似ている部分とまったく違う部分

©LOUIS VUITTON

香りだけを純粋に感じてみるとルイ・ヴィトンの「スペル オン ユー」を想わせる香りとも言えます。ちなみに「スペル オン ユー」には、ヴァイオレット(正確にはアイリスにより生み出されるヴァイオレットノート)、ローズという共通点があります。

共に、香りの二面性が特徴的です。アイリスやヴァイオレットが描き出す〝内に秘めるもの〟と、対照的にローズが描き出す〝明るさ〟。

「ラ ヴィオレット」において香りの軸はあくまでヴァイオレットであり、ローズやラズベリーがほんの少し透明感や明るさを生み出しているものの、アマルフィやシチリア、もしくはカリフォルニアのようなピカピカの太陽の明るさではなく、ヴァイオレットが一面に咲くのどかなお花畑を穏やかに照らす太陽のような明るさです。

どこか素朴で純朴な、日常の風景にある幸せを感じる香りそれが「ラ ヴィオレット」です。

©Château de Versailles


一方、「スペル オン ユー」は、ローズの明るさが印象的に表現されています。この香りはまさに豪華絢爛なヴェルサイユ宮殿の中で窮屈な思いをしながら過ごしたマリー・アントワネットが、自分の心が落ち着くプチ・トリアノンの庭園でゆったりと我が子たちと過ごす朗らかな時間を連想させます。

穏やかな日差しと木陰、薔薇が咲いていて優しい風が吹いているそんなイメージが沸き起こります。そこには表立った〝豪華さ〟ではなく、マリー・アントワネットの童心やピュアな心が映しだされているようです。

スポンサーリンク

香水データ

香水名:ラ ヴィオレット
原名:La Violette
種類:オード・トワレ
ブランド:グタール
調香師:カミーユ・グタール、イザベル・ドワイヤン
発表年:2001年
対象性別:女性
価格:100ml/28,050
販売代理店ホームページ:ラトリエ デ パルファム


シングルノート:ヴァイオレット、ヴァイオレット・リーフ、ターキッシュローズ