ジョープ オム
原名:Joop! Homme
種類:オード・トワレ
ブランド:ジョープ!
調香師:ミシェル・アルメラック、ピエール・ブルドン
発表年:1989年
対象性別:男性
価格:日本未発売
JOOP!(ジョープ!)とは?
JOOP!(ジョープ!、ヨープ!)は、1986年にドイツ・ハンブルグで、ファッション・デザイナーのウォルフガング・ヨープ(1944-)により創業されたファッション・ブランドです。
元々彼はファッション誌などで編集者として活躍し、その後イヴ・サンローランの元で働いていました。そして、1978年に初めてのファー・コレクションが、ニューヨーク・タイムズに取り上げられ国際的な成功を収めました。
ブランド創業後、すぐ1987年にミシェル・アルメラックの調香により、ファースト・フレグランス「ジョープファム」を発表します。さらにそのメンズ版として、1989年に生み出されたのが「ジョープ オム」でした。
「ジョープファム」で使用したジャスミン、オレンジ・ブロッサム、サンダルウッド、バニラを男性的にアレンジしたこの香りは、公式には、調香師はミシェル・アルメラックとなっています。
メンズ・フレグランスのベルリンの壁を崩壊させた香り
しかし実のところ、この香りを調香したのは、当時、高砂のチーフ・パフューマーだったピエール・ブルドンだと言われています(もしくはアルメラックとの共作)。息子へのプレゼントの香りとして調香したプライベートブレンドからはじまった香りです。
彼がダビドフの「クールウォーター」(1988)を生み出してからの一年後の作品となります。
ベルリンの壁が崩壊した1989年11月9日の少し前に発売された西ドイツのファッション・ブランドによるこの香りは、当時、アロマティック、ハーバル、フレッシュシトラス、フゼアのいずれかがメンズ・フレグランスであった時代に、男性とは無縁だったバニラ・オリエンタル調の甘ったるいフローラルの香り立ちにより、『メンズ・フレグランスのベルリンの壁を崩壊させた』と言われました。
そして、発売と同時に、史上最低のメンズ・フレグランス、もしくは時代を先取りしたゲームチェンジャーと呼ばれ、賛否両論を巻き起こしました。
史上初めての男性のためのフロリエンタルの香り
最も情熱的な男性のフェロモンを水蒸気蒸留させ精油に変えたかのようなこの香りは、一発ノックアウト・パンチのような、フレッシュ・ジューシーなシトラスの存在を掻き消すようなバニラと(アーモンドのような)ヘリオトロープ、そしてシナモンとパチョリの大爆発からはじまります。
好きになるか嫌いになるか、どちらにしても回りくどくない男性がそこにはいます。すぐにタバコがスパイシーな甘さを和らげる中、『REAL MEN WEAR PINK(本物の男たちはピンクを着る!)』という宣言そのままに、砂糖漬けされたチェリーとプラム、ラズベリーが閃光のように煌めくのです。
グルマンではない甘さにどんどん支配されていくようです。それはとても食べられないバニラです。まるで80年代後半から90年代の男だらけのヘビメタバンドやビジュアル系バンド(特にBUCK-TICK)を連想させる〝咆哮するような香り〟となります。
そして、たっぷりとハニーが滴り落ちる男性の素肌の上でオレンジ・ブロッサム、ジャスミン、スズランの花々が香り華やかに開花してゆくのです。
やがてフルーティなパチョリに、トンカビーンとサンダルウッド、ベチバーがクリーミーかつパウダリーに、オリエンタルとフゼアの境界線上で引き伸ばされてゆくのです。ひとつ壁を隔てても、香りが押し寄せてきそうなほど、パワフルな香りです。
この香りの存在があったからこそ、男性のための甘くてスパイシーな香りであるジャン=ポール・ゴルチエの「ル マル」、シャネルの「エゴイスト」、パコ・ラバンヌの「ワンミリオン」、ヴィクター&ロルフの「スパイスボム」といった香りが男性の支持を得ることが出来たのでした。
タニヤ・サンチェスは『世界香水ガイド』で、「ジョープ オム」を「ヴァイオレット 石けん様」と呼び、「メンズフレグランスとしては変わったアプローチをしている。甘い、動物様フローラル。悲しいかな。床用洗剤にも似た安っぽい香り」と2つ星(5段階評価)の評価をつけています。
香水データ
香水名:ジョープ オム
原名:Joop! Homme
種類:オード・トワレ
ブランド:ジョープ!
調香師:ミシェル・アルメラック
発表年:1989年
対象性別:男性
価格:日本未発売
トップノート:オレンジ・ブロッサム、マンダリン・オレンジ、ベルガモット、アマルフィ・レモン
ミドルノート:シナモン、ヘリオトロープ、ジャスミン、カルダモン、スズラン
ラストノート:バニラ、トンカビーン、サンダルウッド、パチョリ、ハニー、タバコ、ベチバー