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ルイ・ヴィトン

【ルイ ヴィトン】イマジナシオン(ジャック・キャヴァリエ)

ルイ・ヴィトン
©LOUIS VUITTON
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イマジナシオン

原名:Imagination
種類:オード・パルファム
ブランド:ルイ・ヴィトン
調香師:ジャック・キャヴァリエ
発表年:2021年
対象性別:男性
価格:100ml/45,100円
公式ホームページ:ルイ・ヴィトン

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実は、男性用として調香された訳ではない香り

©LOUIS VUITTON

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この香りは私の人生ではじめて男性用、女性用という考えを持たずに作った香水です。そして、生まれたのが、男性用と形容するしかないこの香りだったわけです。

私自身この試作品を身に纏いグラースの街を歩いていると、「あなたの香水は何ですか?とってもいい香りですね」と多くの女性から話しかけられました。この香りは今までルイ・ヴィトンで生み出してきたものと、明らかに違ったものです。

ジャック・キャヴァリエ

2018年5月31日に、ルイ・ヴィトンから一挙5種類の香りが発売されたメンズ・フレグランス・コレクション「レ パルファン ルイ ヴィトン フォーメン」の7つ目のメンズ・フレグランスとして、2021年5月27日に発売されたのが「イマジナシオン」です。

「イマジナシオン」とは、フランス語で、「想像力」の意味です。この香りのテーマは、年を重ねれば重ねるほど失われがちな〝空想の翼〟を蘇えらせ、新たなる可能性を見出す旅へと誘うアンバーグリスとブラックティーのかつてない魅力です。ルイ・ヴィトンの専属調香師ジャック・キャヴァリエが5年間の構想の末に生み出した香りです。

20代の時に「ロー ドゥ イッセイ」で、フレグランスに〝水の世界〟の扉を開き、「ブルガリ プールオム」で〝ブラックティーの嗜み〟へと導き、さらに二酸化炭素抽出法や、様々な合成ムスクのスペシャルブレンドにより〝魔法のムスク神話〟を生み出した、破天荒な夢を現実にしてきた人ジャック・キャヴァリエ。

彼の成功の影には、その大胆さにより、世界ではじめて西欧社会に向けて「M7」で〝中東の旅=ウードの旅〟の扉を開き、全く受け入れられなかったりなど、数多くの失敗も重ねられてきました。そのような苦い旅や経験によって培われていくエネルギーが、新たな境地を切り開いていくのです。

そんな〝香水界のゲームチェンジャー〟の彼だからこそ生み出すことが出来た香り、それが「イマジナシオン」=〝自分の限界をちょっとずつ超えていこうぜ〟なのです。

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「ブルガリ プールオム」から25年の時を経て

©LOUIS VUITTON

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私はずっと5年間、アンバーグリスの美しさを明らかにし、そのアンバーノートの真髄を、ただ単に、天然のものが使用出来た時代に対する懐古的な気持ちで終わらせないように、現代的に表現することを夢見ていました。

ジャック・キャヴァリエ

この香りのメイン香料は、アンバーグリス(龍涎香)の雰囲気を作り出すために使用する合成香料のアンブロックスです(アンブロキサンとは非常に似ているが別物である)。ちなみに、アンブロックスが本格的に大量に使用された香りは、オリヴィエ・クレスプによるドルチェ&ガッバーナの「ライトブルー」(2001)でした。

ジャック・キャヴァリエは、フィルメニッヒ社が1979年に創造したアンブロックスを多くの香りで使用してきました(ちなみにルイ・ヴィトンはアンブロックスを〝香水界のホワイトゴールド〟と呼んでいる)。

塩味があるが、滑らかで、肌馴染みが良く、様々な香料の色々な側面に輝きと持続力を与えるアンブロックスは、安価である合成香料の中でも高価な部類に入ります。

「イマジナシオン」とは、アンブロックスを今まで以上に天然のアンバーグリスに近づけようとした、ピノキオを生み出したゼペットじいさんのように、キャヴァリエがクジラの人形を作り、生命を吹き込み、アンバーグリスを取り出した5年間の集大成とも言える香りなのです。

さらに言うと、1995年に生み出した史上初めてのダージリンティーの香り「ブルガリ プールオム」から約25年越しに生み出された〝新しい感覚のティーフレグランス〟なのです。

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〝自分の限界をちょっとずつ超えていこう〟という気分になる香り

©LOUIS VUITTON

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私は、「イマジナシオン」のような香りは、今だかつてメンズ・フレグランスで存在したことはないと確信しています。つまりこの香りのフレッシュでセンシュアルな要素は、ミドルノートが存在しないからこそ生まれているのです。

まず最初に香りを付けた瞬間、ベルガモットやシトラスが花火のように爆発し、ただただ明るい喜びを運んでくれます。やがて、キラキラしたネロリが、ブラックティーとアンバーと結びつき、女性に抱擁される瞬間のような繊細さと安らぎを生み出していくのです。

ジャック・キャヴァリエ

愛を連想させる匂いは、とてもたくさんあるのですが、私にとってそれは、琥珀色のアンバーや灰色のアンバーグリスと言えます。それらには、少しアニマリックなだけでなく、とても豊かな花の調べがあります。そしてそれらは一種の永遠の香りで、最初に嗅いだ日から以前から知っていた匂いであることが明らかになります。 まさに恋愛のようなものなのです。

ジャック・キャヴァリエ(この香りのためではないインタビューで「あなたにとって愛の匂いとは?」と質問されて)

アンブロックスの塩味の効いたミネラルが感じさせる生命力が、ブラックティーの中に注ぎ込まれることによって何が生まれるのでしょうか?その答えは、この香りの中にあります(答えは、愛する人との抱擁)。

シチリアン・シダーとベルガモット、オレンジが弾けるようにではなく、厳かな天の光を浴びるように、清涼感たっぷりに広がるようにしてこの香りははじまります。「私の調香師としてのこだわりは、天然香料を文字通り表現してみせるところにあります」というキャヴァリエの哲学を反映するようにアンブロックスにより、シトラスは輝き煌めきます。

あくまでも弾け出すのではなく、広がりながら輝き煌めくのがこの香りのシトラスの特徴です(そして、その効果を生み出すためにシチリアン・シダーというシダーウッドと間違いかねない紛らわしい柑橘類が選ばれているのです)。

すぐにシトラスの酸味を和らげるように、明るく元気いっぱいなネロリが、シトラスをほのかに甘く輝かせます。そして、そこに二酸化炭素抽出法で抽出されたジンジャーとシナモンが、ジューシースパイシーな温かさを加えてゆくのです。

やがて、スリランカ産のブラックティー(LV公式の中国産ブラックティーとは中国原産の意味らしい←現在は訂正済み)がスモーキーな香味と共に注ぎ込まれてゆきます。ジンジャーと同じくブラックティーも二酸化炭素で抽出されているところが、この香りに稀有なまろやかさを生み出しているポイントです。

この自然なブラックティー(まさに上質なプーアル茶のような)の香味が存在するからこそ、この香りは、ハーブを排除した、シトラスとフローラルとスパイスの残光が、いつまでも幽玄にたゆたひ、心の底にまで染み渡るように持続していくのです。

スモーキーなブラックティーがアンブロックスを包み込んでいく中、ガイアックウッドとオリバナムが加わることにより、女性の柔らかい肉体の中に溶け込んでいくように、全身は「イマジナシオン」=〝自分の限界をちょっとずつ超えていこう〟という、頑張りすぎず無理のない高揚感に満たされていくのです。

最後に、内田有紀様が、『美的』(2023/12/11)で愛用しているルイ・ヴィトンの香りとして「イマジナシオン」「エトワール フィラント」「ダンシング ブロッサム」をあげられている感想も素晴らしいです。
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香水データ

香水名:イマジナシオン
原名:Imagination
種類:オード・パルファム
ブランド:ルイ・ヴィトン
調香師:ジャック・キャヴァリエ
発表年:2021年
対象性別:男性
価格:100ml/45,100円
公式ホームページ:ルイ・ヴィトン


トップノート:カラブリアン・ベルガモット、シトロン(シチリアン・シダー)、シシリアン・オレンジ
ミドルノート:チュニジアン・ネロリ、ナイジェリアン・ジンジャー、セイロン産シナモン
ラストノート:アンブロックス、スリランカ産ブラックティー、ガイアックウッド、オリバナム