【ルイ ヴィトン】ウール ダプサンス（ジャック・キャヴァリエ）

ウール ダプサンス

原名：Heures d’Absence
種類：オード・パルファム
ブランド：ルイ・ヴィトン
調香師：ジャック・キャヴァリエ
発表年：2020年
対象性別：女性
価格：100ml／45,100円
公式ホームページ：ルイ・ヴィトン

〝不在の時間〟それは〝愛する人を待つ、きらめきの時間〟

〝余暇の時間〟であり〝不在の時間〟としての意味も持つこの香り。私にとって、不在という言葉は、ネガティブな言葉ではありません。むしろ〝私はあなたをとても愛しています。だから、たとえあなたが今は私のそばに居なくても、戻ってくるまで私はあなたの香水を持っています〟という感覚を表現したかったのです。

この香りは花だけで構成されています。 それは優雅さや笑顔、魅力など、最高の自分自身を残すというアイデアなのです。私は女性の内面に直接語りかけたいという思いでこの香りを作りました。

ジャック・キャヴァリエ

2019年12月に中国・武漢からはじまる新型コロナウイルス感染症（COVID-19）が、世界中に広がっていく、最悪なタイミングの中、2020年2月27日に発売されたルイ・ヴィトンの「ウール ダプサンス」は、「レ パルファン ルイ ヴィトン」の11作目の香りです。ルイ・ヴィトンの専属調香師であるジャック・キャヴァリエにより調香されました。

〝ウール ダプサンス〟とは、フランス語で「不在の時間、余暇の時間」の意味です。それはルイ・ヴィトンが1927年に発売したブランド初の同名のフレグランスからインスパイアされた香りです。オリジナルの香りは「幻のルイ・ヴィトンの香り」と呼ばれ、フォーミュラは現存せず、どんな香りかも伝えられていません。

その名の由来は、ルイ・ヴィトンの息子であり2代目のジョルジュ・ヴィトンがセーヌ・エ・マルヌ地方に所有していた別荘の名から採られました。そして、1927年のロンドン店オープンを記念し、300個のみ生産されました。飛行中の飛行機が描かれた空のボトルだけが現存しております。

21世紀に新たなる生を受けたこの香りは、タヌロン産ミモザとグラース産ジャスミンとメイローズのうっとりするようなフローラルブーケの香りです。

ジャック・キャヴァリエの娘カミーユ。

私は日本人のように四季の中で自然に咲く花々と触れ合うことが大好きです。1月のミモザ、そして、スミレ、オレンジの花、5月のローズ、スイセン、そして、8月から3ヶ月間咲くジャスミン・・・

ジャック・キャヴァリエ（日本向けではないフランスのファッション誌への2016年のインタビューにて）

3年越しの製作日程を経た作品であり、ジャック・キャヴァリエは、試作品を妻と娘のカミーユ（現在ジャックの下で調香師修行中）につけてもらい、定期的にグラース市内を散歩してもらい、人々からの感想を吸い上げていきました。

それは丁度2016年9月のルイ・ヴィトン・フレグランス第一弾発売当時16歳だった娘カミーユが、18歳から正式にアシスタントになった2017年から3年越しに生み出された「父と娘」の香水に対する愛情の継承の香りとも言えます。

二酸化炭素で抽出されたタヌロン産ミモザ・アブソリュート

80日間で世界を一周するような、華麗なる旅人の気分が味わえるこの香りは、美しいジャスミンとローズのスカイ・シンフォニー＝空の交響曲からはじまります。青空に向かって思いきり花の粉と花の蜜が、花びらから離れて、旅に出るように、明るく晴れやかなフローラルの香りに包まれてゆきます。

はじまりから、ルイ・ヴィトン独自の二酸化炭素で抽出された（ストロベリーの側面も持つ）ジャスミンと（アニマリックでペッパーのような側面も持つ）メイローズが、思う存分大気を吸い込み、素肌の上に、フルーティ、フローラル、スパイシー、グリーン、インドールといった様々な花の感情を受け止めていくように、香りは涼やかに広がってゆきます。

と同時に、中国産ジャスミン・サンバックが、素肌の上に軽く雨を降らせ、すぐに雨は上がり、パステルカラーのレインボーを生み出してゆくのです。透き通るように清く甘いラズベリーが香りの背景に澄み渡るように広がってゆきます。

そしてグリーンでパウダリーなタヌロン産ミモザアブソリュートが軽やかに、まるで気球に乗って旅に飛び出すような、ロマンティックな開放感を与えてくれます。何よりも重要なことは、このミモザ・アブソリュートも二酸化炭素抽出法により抽出されているということです。

やがて、青空に浮かぶクリーミーな雲のようなバニラとムスク、サンダルウッド、ペルーバルサムに優しく包み込まれ、太陽のようにまぶしく明るく黄色に色づいたミモザが、パウダリーな余韻を残してくれるのです。

はっきりとした色彩ではなく、何かが際立つわけでもないとてもエレガントなミモザのシャワー。それは4年目にしてジャック・キャヴァリエが遂に到達した「最初のルイ・ヴィトンの香り」なのです。

とても過小評価されている香りです。この香りだけは重ね付けする必要がありません。なぜならこの香りは、極めて優れた〝空気のように軽やかなスキンパルファム〟だからです。四季折々の花々の魅力を、素肌の上にきらきらと輝きながら伝えてくれる香りです。

香水データ

香水名：ウール ダプサンス
原名：Heures d’Absence
種類：オード・パルファム
ブランド：ルイ・ヴィトン
調香師：ジャック・キャヴァリエ
発表年：2020年
対象性別：女性
価格：100ml／45,100円
公式ホームページ：ルイ・ヴィトン

トップノート：グラース産ジャスミン、グラース産メイローズ
ミドルノート：タヌロン産ミモザ、ラズベリー、中国産ジャスミン・サンバック
ラストノート：トベラ、バニラ、スリランカ産サンダルウッド、ムスク、ペルーバルサム