グリクレール|灰とダイヤモンドの香り、美しきドブネズミのフゼア

セルジュ・ルタンス
©資生堂
セルジュ・ルタンス
この記事は約4分で読めます。

グリクレール

原名:Gris Clair
種類:オード・パルファム
ブランド:セルジュ・ルタンス
調香師:クリストファー・シェルドレイク
発表年:2006年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/14,300円

スポンサーリンク

アトミックボムの後の〝死の灰〟を連想させる香り

©Serge Lutens

太陽の光に優しく温められた灰色の花粉のように、この香水の乾燥したラベンダーの残り火が私たちの感覚を喜ばせる。

「これは生命のない廃墟となった街の上空に漂う花粉だ。灰のように灰色がかった、そよ風に舞う塵。陽光に照らされた埃。ラベンダー、そしてこの軽やかさを灰色に染めてくれるフランキンセンス。私はこれが大好きだ!あらゆる意味で、私の感覚を刺激してくれるのだ!」

セルジュ・ルタンス公式サイトより

かつて2019年5月21日より発売されていた「コレクションポリテス」。それは、軽やかで、フレッシュな、透明感溢れるオード・パルファムのコレクションでした。

「グリクレール」は、このタイミングで復刻することになったのですが、元々は、2006年にクリストファー・シェルドレイクにより調香された香りでした。

そして「ブラック&ベージュ コレクション」に編入されていましたが、2018年3月21日に同コレクションが「コレクション ノワール」に変更され、10種類もの名香が2017年末から一挙に廃盤になっていました。再びパレ・ロワイヤル本店だけで取り扱われている「レフラコンドターブル」コレクションのひとつとなっています。

スポンサーリンク

灰とダイヤモンドの香り、美しきドブネズミのフゼア

©Serge Lutens

〝淡いグレー、明るいグレー〟と名付けられたこの香りの真骨頂はブレンドではなく、ハーモニーです。究極の孤独、滅亡した地球の香り。それはある意味、アトミックボムの後の〝死の灰〟を連想させるこの香りは、ピカリと光るラベンダーの冷たく甘い、涼やかな香りからはじまります。

すぐにまるで〝死の灰〟のように立ち上るアイリスと、静かに降るトンカビーンの〝黒い雨〟のハーモニー。そんな世紀末救世主伝説というテロップが流れて来そうな、ラベンダーを焼き尽くす太陽のようなアンバー。かくしてラベンダーは、限りなく透明にちかいグレーの香りを広がらせてゆきます。ここまで静寂に包まれた香りを私は知りません。

やがて五感をよろめかせる、神秘的な焚き立てのインセンスが到来します。それはまさに天に召される瞬間の至福のひと時を表現したかのようです。そんな背筋がピンと伸びる、まいにち〝死の灰〟を浴び、今日一日が最後の一日であるように一生懸命生きていこうという、前向きな気分にさせてくれます。

もっさりとした蜃気楼のような儚い香りではなく、バニシング・ポイントに向かって進んでゆく、揺るぎない運命の壮大なる力を感じさせる香りです。恐らく、アインシュタインやニーチェ、カフカに香りがあるとすれば、この香りでしょう。つまりは実に豊かなグレーの香りなのです。

〝灰とダイヤモンド〟の香り、美しきドブネズミのフゼア。そんなこの香りは、残念ながら、2019年にリニューアルされ、より水性に再調香されました。そして、まるでゴーストタウンに咲くラベンダーのような空虚なメタリックトーンになってしまいました。まるで葬送行進曲が流れてきそうな〝悲しきフゼア〟となっていました。

ではありますが、ポリテス終焉後、パレ・ロワイヤルに帰還したこの香りは、あの素晴らしい香りをもう一度蘇らせてくれています。周囲に溶け込んでいくようでありながら、しっかりと存在感を示してくれる、シックで洗練された香りです。

スポンサーリンク

香水データ

香水名:グリクレール
原名:Gris Clair
種類:オード・パルファム
ブランド:セルジュ・ルタンス
調香師:クリストファー・シェルドレイク
発表年:2006年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/14,300円


トップノート:ラベンダー
ミドルノート:アンバー、トンカビーン、アイリス
ラストノート:ドライウッド、インセンス