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ブルガリ

【ブルガリ】オ パフメ オーテヴェール(ジャン=クロード・エレナ)

ブルガリ
©BVLGARI
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オ パフメ オーテヴェール

原名:Eau Parfumee au The Vert
種類:オーデコロン
ブランド:ブルガリ
調香師:ジャン=クロード・エレナ
発表年:1992年
対象性別:ユニセックス
価格:75ml/14,520円
販売代理店ホームページ:KAWABE

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最初のブルガリの香水は、史上初めてのお茶の香り

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私の香りの本質は〝Pure illusion(純粋なる錯覚、勘違い)〟です。たとえば「オーテヴェール」を例にとりましょう。この香りにはお茶は入っていません。でも、お茶の香りがする。誰もがお茶の香りだと思っています。

錯覚を生み出せる香りだからこそ、人の心も動かすことが出来るのです。

ジャン=クロード・エレナ

調香師の仕事は、まず第一に、イリュージョニスト(奇術師)の仕事である。儚い恋もあれば、長く続く恋もあり、ベルガモットの香りはそのひとつだ。

1992年にブルガリのために「お茶」をテーマにしたフレグランスを考案した。処方には「茶」が含まれていなかったが、ベルガモットと3つの合成香料(化学分子)が含まれており、その匂いは私が表現したかったこととは全く関係なかったが、それらが合わさることでお茶の匂いのように錯覚させ、ストーリーに貢献した。

私の日本への愛を込めて、ベルガモットのアールグレイの香りがするにも関わらず、緑茶の香りがする〝Thé vert〟と名付けるようにお願いしました。

ジャン=クロード・エレナ

1884年に創業したハイジュエリー・ブランド、ブルガリの香水の歴史は、それほど長くありません。それは「オ パフメ オーテヴェール」と共に、1992年にはじまりました。

史上初めての「緑茶=グリーンティーの香り」。その名も「オ パフメ」=「香りの水」。そして、90年代のユニセックス・フレグランスの流行のはじまりとなった香りでした。

もともとは、販売用ではなく、イタリア・ローマのブルガリ本店を訪れるVIPへのプレゼント用として、調香師ジャン=クロード・エレナに調香を依頼した香りでした(香りの名をつけたのはエレナ自身でした)。

その完成品をニューヨークのブルガリで実験的に350ドルで販売したところ、一日で10本売れたことから商品化されたのでした。

ジャン=クロードがブルガリの前に誰も欲しがらなかった「オーテヴェール」を作ったことにより、新たなトレンドが生み出され、これが「CK One」を生み出した。

フレデリック・マル

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ディオールのファーレンハイトになったかもしれない香り

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私はまずお茶というきっかけを選び、そのずっと後で、パリのブール=ティブール通りにあるマリアージュ・フレールの店(当時は今ほど世界的に有名ではなかった)を訪れた。店でお茶の匂いの全体を感じ、自分の思い描いていたものを裏づけた。こうして体験した現実に基づいてひとつの構成を持った、真実味のある香水を作ったのである。

ジャン=クロード・エレナ

実は、私はお茶の香りを嗅がずにティーノートを作りました。マリアージュ・フレールについてのストーリーは、その後のことです。実際にマリアージュ・フレールに行き、すべてのお茶の香りを嗅ぎました。でもほとんどの部分は、私が研究室でお茶のことを想像して作ったものなのです。

だから、ブルガリのマーケティング部門の責任者たちが、私に「香水にはどのお茶を使ったのですか?」と聞かれた時、私は「お茶は入っていません。ただのイリュージョンです」と答えました。しかし、彼らは私を信じませんでした。

ジャン=クロード・エレナ

フランスで一番最初に緑茶を販売した紅茶専門店がマリアージュ・フレールです(ちなみに紅茶と緑茶の違いは、同じ茶葉を発酵させたか否かの違いです)。

エレナが妻のスザンナとよく訪れているこのお店での体験をもとに、このシトラス・アロマティックな歴史的名香は生み出されたのでした(お店に頼み込み、100種類もの茶葉を徹底的に嗅がせてもらったという)。

〝お茶の香り〟のアイデアは、元々ブルガリのために生まれたものではありませんでした。実はディオールに持って行き、ファーレンハイトとして販売されることとなり、エレナはディオールから祝福の宴を設けられたのですが、翌朝、マーケティング部門により約束を反故にされました。

次にイヴ・サンローランに持って行くも、「個性的過ぎる」と断られ、流転の果てに生み出された作品だったのでした。

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ジャン=クロード・エレナの最高傑作のひとつ

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ジャン=クロード・エレナの天才性は、香料を茶葉から抽出して使用するのではなく、僅か19種類の成分でお茶の香りを創造したところにあります。そして、そのためにカルダモンとジャスミンを使用したのでした。エレナ自身はこの香りを〝リトル・ハイク〟と呼んでいます。

合成香料βーイオノンの特徴的な匂いは、一世紀ものあいだヴァイオレットの香りを意味していた。それがブルガリの「オ パフメ オーテヴェール」において、初めて違う方法で使われた。

イオノンは、合成香料ヘディオンに結びつけられると、お茶の香りを喚起するのである。ひとつの香水の構成要素は、言語におけることばのようなものだ。時代に従って進化し、意味を変えることもある。

ジャン=クロード・エレナ

史上初のグリーンティーの香りは、太陽の光を浴びて、草原とジャスミンとローズの上を滑り落ちる朝露のきらめきが、朝の訪れを感じさせてくれるそんな清清しさからはじまります。

それはまるで真夜中に磨きあげられた宝石のきらめきと透明感が、朝日によって一際きらめくようです。そういった情景を、イタリアを象徴する柑橘であるベルガモットを中心にレモンとオレンジによって生み出していくのです。

すぐにコリアンダーがベルガモットの苦みを引き出し、カルダモンがその涼しさを引き出していくように、柑橘とスパイスのアールグレイのような優しい調和に身も心も包み込まれてゆくのです。

そして、甘やかなジャスミンとヴァイオレット=ヘディオンとイオノンが結びつき、お茶の香りが解き放たれてゆきます。さらにペッパーがローズ・アブソリュートに注ぎ込まれ、茶葉のようなスモーキーさを背景に漂わせてゆくのです。

冷たくもなく熱くもない、だからと言って温くもない、涼しげなお茶。柑橘もジャスミンもスモーキーローズも、すべてがアンバーとトンカビーンのクリーミーさの渦の中で、絶妙な円やかさと共に肌の上にひろがってゆくこの香りは、日本人にとっての〝おもてなしの精神〟を体現する〝お茶〟をVIPのお客様に差し上げるという意味も込めて生み出されたバックボーンを見事に体現しています。

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日本の禅をイメージして生み出されたボトルデザイン

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この香りのミューズを選ぶとしたら、ジャズピアニストのビル・エヴァンスでしょう。私はファンなんです。

ジャン=クロード・エレナ

緑でも黒でもない茶の概念を香りにした、トルコの海水と同じくらい深くて強くて澄んだ香り。特にお寿司屋に行く時に、ぴったりな香りです。日本酒との相性も最高!

チャンドラー・バール

すりガラスに透けて見える影絵のようなグリーンが美しいボトル・デザインは、ザ・ディファレント・カンパニーにおけるエレナの盟友となるティエリー・ドゥ・バシュマコフが日本の禅をイメージして生み出した形です。

最後に、ブルガリの創業者ソティリオ・ブルガリはギリシャ系イタリア人でした。そして、ジャン=クロード・エレナの祖先もまたギリシャからイタリアを経由しフランスに定住したギリシャ系でした。つまりはこの香りは、フランス人が作るイタリアのハイジュエラーの香りというよりは、ギリシャにルーツを持つ二つの偉大な精神が結びついた香りという見方が出来るのかもしれません。

ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「1993年に発売されたこの香水は、1年早く発売された「ロードゥ イッセイ」とともに、80年代のベストセラー香水を敬遠する時代の流れを完璧にとらえた。当然ながら、ジャン=クロード・エレナを世に知らしめた香水だ。」

「ロードゥ イッセイは、単に多量の香料カロンを加えた無限のフローラルであるのに対して、こちらは真のオリジナルであり、新しい香水の形だ。活気と弱さを兼ね備え、成長した「シーケーワン」のようだ。香水嫌い用に考案され、チェルシーあたりでベビーカーを押している、極貧にあえぐ女性の集団に香りを試してもらったそうだ。私は愛好者になれそうもないが、非常に印象的だ。」と4つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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香水データ

香水名:オ パフメ オーテヴェール
原名:Eau Parfumee au The Vert
種類:オーデコロン
ブランド:ブルガリ
調香師:ジャン=クロード・エレナ
発表年:1992年
対象性別:ユニセックス
価格:75ml/14,520円
販売代理店ホームページ:KAWABE


トップノート:ロシア産コリアンダー、スペイン産オレンジ・ブロッサム、チュニジア産マンダリン・オレンジ、イタリアン・ベルガモット、セイロン産カルダモン、レモン、ジャマイカ産ペッパー
ミドルノート:エジプト産ジャスミン、スズラン、ブルガリアン・ローズ
ラストノート:サンダルウッド、アンバー、ホワイトムスク、グリーンティー、プレシャスウッズ、シダー