【ディプティック】ドソン（ファブリス・ペルグラン）

ドソン

原名：Do Son
種類：オード・トワレ
ブランド：ディプティック
調香師：ファブリス・ペルグラン
発表年：2005年
対象性別：女性
価格：50ml／15,400円、100ml／21,450円
販売代理店ホームページ：DEPACO（大丸松坂屋コスメオンラインストア）

【ディプティック】ドソンオードパルファン（ファブリス・ペルグラン）

ディプティックから2005年に発売された「ドソン」は、妖艶な微笑を捨て、優しい微笑に包まれたチューベローズを表現した香りです。フィルメニッヒのファブリス・ペルグランにより調香されました。そのオード・パ...

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妖艶な微笑を捨てた、チューベローズの香り
ジャスミンが運んでくれる『麗しのチューベローズ』
香水データ

妖艶な微笑を捨てた、チューベローズの香り

©Diptyque

©Diptyque

ディプティックから2005年に発売された「ドソン」は、妖艶な微笑を捨て、優しい微笑に包まれたチューベローズを表現した香りです。フィルメニッヒのファブリス・ペルグランにより調香されました（セシル・マットンも共同調香師として参加）。

ドソンとは、ベトナムの世界遺産であり、水墨画のような美景を誇るハロン湾にあるビーチです。ディプティックの3人の創業者のうちの1人であるイヴ・クロエン（1926－2013）は、1930年代に、当時フランスの植民地だったベトナムのハイフォンで少年時代を過ごしました（父親はインドシナ銀行の弁護士だった）。

父親は市街のうだるような暑さから逃れるため、ドソン・ビーチにプライベート・パゴダを建てていたので、イヴ少年は、母親とこのビーチで過ごすことが多くなりました。

そして、長い年月を経て1995年にイヴがドソン・ビーチを再訪した時、ドソンの思い出として、海風に乗り漂うチューベローズの香りが蘇ってきたのでした。湿気がすごく、蒸し暑いベトナムに馴染めなかった母にとっても、この白い花は最愛の花でした。

彼女はこの香りを嗅ぐと、パリのデパートでお洒落な装いを楽しみ、買い物していた日々を思い出すと少年のイヴに伝えていたのでした。チューベローズはそんな母にとっての慰めの香りだったのです。

ジャスミンが運んでくれる『麗しのチューベローズ』

きらめくようなフレッシュグリーンの風に乗って、爽やかで甘いオレンジフラワーとローズの香りが運ばれてきます。曇りや雨を微塵も感じさせない、明るい青空を感じさせます。そして、明らかにその背後にとてつもなく素敵なホワイトフローラルの存在を感じることが出来ます。

その正体のヒントは、調香師の背景に隠されています。グラース生まれの調香師ファブリス・ペルグランが最も愛する香り、それは8月のグラースのジャスミンでした。この香りの中に存在するホワイトフローラルとは、ジャスミン・サンバックなのです。

そして、アイリスが、軽やかなシフォンのような柔らかさと過去を懐かしむノスタルジックな空気を付け加えてくれます。

やがて、いつやってきたか分からないほどごく自然にチューベローズが、ピンクペッパーのキレを伴わせながら、新鮮な酸味とクリーミーさをひとまとめにして現れるのです。

陶酔感のある濃厚なねっとりした香りになりやすいチューベローズ（つまり熟したバナナのような香り）が、この香りにおいては、フレッシュな柑橘のように、透き通り、きらめいています。それはまるで、妖艶な微笑や誘惑する生き様から卒業した〝汚れた顔の天使〟のような清清しさを感じさせます。

脛にしっかりといくつかの傷を刻みながらも、流した涙を優しさに変え、笑顔を絶やさない、まさに茎のついたままのチューベローズのような自然の香りです（マリンノート＝ジヒドロミルセノールがみずみずしさを生み出すひとつのアクセントになっています）。

最後に香りは、土と周りの木々の樹液の存在をベンゾインとホワイトムスクがしっとりと感じさせながらも、透き通るようなチューベローズは優しく肌に溶け込むように消えてゆきます。

この香りのインスパイアの源がベトナムのドソンである理由は、パリ（やニューヨーク、ロンドン、東京）とは違い、時がゆっくり過ぎていく中で、慎ましく香りを放つチューベローズをイメージしているからです。異性や同性を誘惑するための都会のチューベローズではないという所が、日本人の琴線に触れるのかもしれません。

私は、パーティーやクラブ、会食といったものにほとんど興味がありません。ただ家族と静かに過ごすひと時を好みます。そして、人の存在を感じることが出来ない大自然の中で過ごすひと時に至福の喜びを感じます。
ファブリス・ペルグラン

ある意味、ファブリスという調香師のパーソナリティーをとても反映した香りかもしれません。

タニア・サンチェスは『世界香水ガイド』で、「ドソン」を「自称チューベローズ」と呼び、「フレデリック・マルの「カーナルフラワー」とほぼ同じ頃に作られたドソンは、チューベローズが好きな人には選んでもらえないだろう。予算がなかったのだろう。科学的で空っぽな香りがして、すがすがしいフローラルの始まり方はいいが、その後に鼻についた淀んだりする香りになる。」と1つ星（５段階評価）の評価をつけています。