ア キス フロム ア ローズ
原名:A Kiss from a Rose
種類:オード・パルファム
ブランド:キリアン
調香師:アルベルト・モリヤス
発表年:2021年
対象性別:女性
価格:50ml/36,300円
幻のレッドローズの香り(本当はグリーンローズの香り)
香水で薔薇の花びらと棘を表現したいと思いました。「ア キス フロム ア ローズ」はかなり繊細な香りです。なぜなら、本物の薔薇と同じように、棘に注意する必要があるほどに、近づきすぎると危険だと警告させるような香りを生み出そうと意図したからです。
キリアン・ヘネシー
2021年末、キリアンの日本における販売代理店が、エスティローダー・ジャパンからブルーベル・ジャパンに移行される中、ゴタゴタしていた時期に発売されたのが「ア キス フロム ア ローズ」でした。
日本に入荷される本数の驚異的な少なさにより伊勢丹新宿店限定で2021年5月14日に発売されました。レッドローズの香りは、アルベルト・モリヤスが久しぶりにキリアンのために調香した香りでした。
ボトルデザインは、2019年に「ローリング イン ラブ」から初登場した、赤と金のディテールによる『情熱のキリアン帝国』ヴァージョンです。もちろん両サイドにおなじみのアキレスの盾が刻み込まれています。
困難を乗り越えた先にある『最高のキス』の味
私が世界で一番愛する香り。それはムスクです。シンプルに美しい香りよりも、少し毒々しく、幽玄で、神秘的な側面を持つ複雑な香りに惹かれる傾向があります。だからこそ、ムスクは私のこだわりなのです。
私は様々なムスクとの仕事を満喫しています。それぞれが異なり、独自の特徴を持っているので、ムスクを単にひとつのノートとして語ることはできないのです。
アルベルト・モリヤス
アルベルト・モリヤスという調香師が、色々なブランドでフレグランスの調香を依頼される理由はただひとつです。それは彼こそが、世界中で屈指の合成ムスクの使い手であり、いくつものムスクをブレンドし、ブランドそれぞれのムスクを生み出す能力に長けているからです。
つまり、フレグランスにとって、ホワイトムスクとは、身につける人々の深層心理に刻み込む、ブランドロゴのようなものなのです。モリヤスはそんな〝香りのブランドロゴ〟を生み出す才能に長けているのです。だからこそ、彼は色々なブランドにとって神様のような存在になりえたのです。
「薔薇からのキス」という名のこの香りは、そんなキリアンで使われてきた〝抱擁するようなムスク〟の風に乗ってやって来る、柔らかなグラース産のメイローズと共にはじまります。ただし、私たちの鼻腔に先に到達するのは、薔薇の棘を想わせる鋭いベジタブルとブラックカラントの香りです。
鋭く突き刺すような棘の香りから、その奥に潜む薔薇の花びらの柔らかな香りを感じさせるのがこの香りの魅力です。それは〝危険〟と〝美しさ〟の狭間で揺れ動く〝赤〟という色が持つ危険信号のようです。
そんな渡ってはいけない小川を渡ってしまうように仕向けたいときに、キリアン・ヘネシーが召喚する調香師がアルベルト・モリヤスなのです。
すぐに、薔薇の棘に囲まれたメイローズを、グリーンでフルーティなジャスミンサンバックがほのかな甘さを放ちながらふんわりと包み込みこんでゆきます。つまりはジューシーなグリーンノートの中に鼻を突き刺すと、ほんのりと香る渇いた薔薇の花びらをそこに感じることが出来るのです。
そして、いよいよ〝抱擁するようなムスク〟が、シプリオールのウッディかつスパイシーな余韻を加えながら、官能的な〝薔薇の茎と棘〟であなたの肉体を縛り上げ、その上に薔薇の花を咲かせてくれるのです。
それはまるでドレスと素肌の間にレッドローズの花束を隠し持っているような危険な匂いです。
男性がこの香りを身にまとうと、タキシードのジャケットのボタンをはずし、前をはだけると、そこからぷわっとレッドローズの花束が現れるという風な、マジシャンのような効果を生み出してくれる大人の男性のロマンティックな香りになります。
「薔薇からのキス」その名の本当の意味は、あなたの周りに張り巡らされた棘を避けながら、ようやく到達するあなたとの〝最高のキス〟の香りなのです。
香水データ
香水名:ア キス フロム ア ローズ
原名:A Kiss from a Rose
種類:オード・パルファム
ブランド:キリアン
調香師:アルベルト・モリヤス
発表年:2021年
対象性別:女性
価格:50ml/36,300円
トップノート:ベジタブルアコード、ブラックカラント
ミドルノート:メイローズ、ジャスミンサンバック
ラストノート:シプリオール、ホワイトムスク