ケラムール!
原名:Quel Amour!
種類:オード・トワレ
ブランド:グタール
調香師:カミーユ・グタール、イザベル・ドワイヤン
発表年:2002年
対象性別:女性
価格:不明
「なんて愛らしいの!」という名のフルーティローズの香り
この香りは、私のパートナー、20年間私を愛してくれた男性に対する贈り物です。
カミーユ・グタール(2016年のインタビュー)
2002年のバレンタインデーに向けて、グタールより発売された「ケラムール!」は、カミーユ・グタールとイザベル・ドワイヤンにより調香されました。
この香りは、カミーユが、フォトグラファーとしてオーストラリアで仕事した後、パリに戻り、アパートメントに帰宅した時、彼女のフィアンセ(現在の夫)であるステファン(タトゥー・アーティスト)が、階段や廊下一面に、ローズやピオニーの花びらで敷き詰めて迎えてくれた時の喜びを香りにしたものです。
その時、カミーユが思わず口にした「ケラムール!(なんて愛らしいの!)」という歓喜の言葉が、そのまま香りの名前となりました。
心の底から感じる愛に、心のシャンパングラスが満たされる香り。
自分を心の底から愛してくれる存在を知るとき、色々な感情が、ポンっとシャンパンのコルクが抜かれるように弾け出して来るものです。
そんな〝心の底から愛を感じる喜び〟をレッドカラント、ザクロ、ピーチ、チェリー、ブルーベリーといったフルーツのシャンパンブレンドに託しはじまるこの香りは、最初から最後まで幸せに包まれるような開放的な明るさと華やかさがあります。
すぐに発泡するザクロ、ベリーのフルーティなシャンパングラスの中に、ピオニーとゼラニウムが、情熱的に愛を訴えかけるように、注ぎ込まれてゆきます。そして、ワインのような酸味とベリーの新鮮な甘酸っぱさが、シャープなゼラニウムと溶け合い、酔わせるような甘い余韻を肌に伝えてくれるのです。
やがて、泡が蒸発する中から魔法のようにクリーミーなピーチが立ち昇ります。
そこに、スパイシーなカーネーションが加わり、ピオニーは柔らかなパウダリーさをフルーツに振りかけながら、ゼラニウムのローズの側面を際立たせてゆき、疑いようのない愛情が生む透き通るような温かい甘さに、天にも昇るアンバーを一さじ追加し、フルーティローズの余韻で、全身をふんわりと包み込んでくれるのです。
ゲランの「ナエマ」とよく比較される香りです。
タニア・サンチェスは『世界香水ガイド』で、「ケラムール!」を「ザクロ様ライラック」と呼び、「強烈で、エアフレッシュナーのようなスプリング・フローラルと、赤色系フルーツの寄せ集めのような香りからはまったく想像できない、それ以上の潜在能力を備えている。」
「この組み合わせは、慎みがなくて少々お下品、だけどとても頭が切れる。いってみれば、素人でありながら和解金を勝ち取った、あのエリン・ブロコビッチ版フルーティ・フローラル。」と4つ星(5段階評価)の評価をつけています。
フレグランス・スペシャリストの『お言葉』
実は元ブルーベルのチーフだったフレグランス・スペシャリスト様に特別監修して頂くまで、「ケラムール!」について「ケラムール」と認識していました。つまり「!(ビックリマーク)」を忘れていたのです。以下、彼女のこの香りとグタールというブランドについての想いを、その熱量が伝わるようにそのまま記載させていただきます。
グタールは世界観が本当に素敵ですよね。特に幻想的な「ニュイ エトワーレ」は別格に好きでしたが、他にも「ケラムール!」がなぜビックリマークがついているのか?や、「アン マタン ドラージュ」や、「ス ソワール ウ ジャメ」、もちろん「プチシェリー」も人と人との愛情を感じたり、自然が生み出す景色の中にある香りを情緒豊かに表現されていて、素晴らしいと思います。
個人的にグタールの良さは、香りそのものに物語性があり、そして〝感情〟を香りで表現しているところです。愛情や優しさ、懐かしさ、心が動いた瞬間の景色から生まれた香りという風に、ルイ・ヴィトンのフレグランスにも通ずる部分がたくさんあります。そういった香りの背景から感じられる優美な世界観がとても魅力的なメゾンだなと思います。
さて、「ケラムール!」です。私がかつてブルーベルのトレーニングで正式に教えていただいたケラムールの日本語名が『なんて愛おしい!』だったのです。なので私たちからすると『ケラムール』には『!』が付いてまでがネーミングなんです。
カミーユの旦那様がカミーユを驚かせる為に、部屋中にお花を敷き詰めて待ってたんですよね。それを知らずにカミーユが扉を開けた瞬間、目の前に広がる色とりどりのお花と、その香りと、思わず言った『なんて愛おしい!』という言葉から創られた香りが「ケラムール!」であるというのをトレーニングで教えていただきました。
「ケラムール!」は、やはり『なんて愛おしい!』というネーミングとその裏側にある背景から広げていくと、〝思いがけない時に目の前に広がる色とりどりのお花の光景〟と〝その香り〟、そして、当時まだ婚約者であった旦那様の〝大きな愛〟を一瞬にして浴びるように受けた時の、カミーユがきっと目をまん丸にして感じた『喜び』や『驚き』『幸せ』の感情をそのまま香りで表現されているんだと、私もはじめて香りを嗅いだ瞬間に感じました。
まさにボトルからスプレーされた瞬間から『多幸感』を全身で浴びるように感じる香り。「ケラムール!」のトップノートが一瞬にしてシャンパンを開栓した時のように広がるのは、そんな瞬間を表し、そして、ミドル以降も「なんて愛おしい!」と婚約者へハグをするような幸せの余韻を感じさせてくれる香りなのですよね。
「私の中の記憶の中のケラムール!」
追記となります。先ほどスペシャリスト様より素敵な一文を頂きました。
カイエデモードで私が監修した「ケラムール!」の記事を改めて読んでみて心がフューシャピンクのように明るくなりました。もちろん、香りもそんな気持ちにさせてくれますよね。
手元にないのですが、充分にその香りについて記憶しているので、記憶の中のケラムール!と文章とを重ねながら読んでいました。
さらに「ケラムール!のイメージカラーです」という彼女の言葉と共に添付して送っていただいたこの香りのイメージ画像が、私の中のケラムール!をより鮮明なものにしてくれました。
香水データ
香水名:ケラムール!
原名:Quel Amour!
種類:オード・トワレ
ブランド:グタール
調香師:カミーユ・グタール、イザベル・ドワイヤン
発表年:2002年
対象性別:女性
価格:不明
トップノート:レッドカラント、ザクロ、ピーチ、チェリー、ブルーベリー
ミドルノート:ピオニー、ゼラニウム
ラストノート:アンバー