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フレデリック・マル

【フレデリック マル】カーナル フラワー(ドミニク・ロピオン)

フレデリック・マル
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カーナル フラワー

【特別監修】Le Chercheur de Parfum様

原名:Carnal Flower
種類:オード・パルファム
ブランド:フレデリック・マル
調香師:ドミニク・ロピオン
発表年:2005年
対象性別:ユニセックス
価格:10ml/10,890 円、30ml/27,720円、50ml/37,290円、100ml/53,130円
販売代理店ホームページ:ラトリエ デ パルファム

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前人未到のチューベローズを生み出そう!

©FREDERIC MALLE

自然の素晴らしさは、めったにない嗅覚的な衝撃を与えてくれるところにあります。そして、チューベローズこそが、その最良の一例です。

天然のチューベローズは、3種類のにおいをレイヤードするように香り立ちます。植物の持つみずみずしさ、猛烈なカンファー、ミルクのような滑らかさ、これらが比率を変えながら、天秤のバランスを取るように香るのです。

フレデリック・マル

チューベローズの濃度が異常に高いが、コンテンポラリーな作品であることも一目でわかる。その理由のひとつは、フレッシュな葉の香りにあり、ドミニク・ロピオンは花のパウダリーな面を非常に控えめなボリュームで表現することで、全体をよりクリアにしている。だから本当にチュベローズの香りがするのだ。

チャンドラー・バール(ニューヨーク・タイムズ、2021年)

肉感的な花(または、官能的な花)」という名のこの香りは、チューベローズという自然界を代表するカメレオン・フラワーの生態を、女性の本能に絡め合わせた香りです。

フレデリック・マルが、チューベローズの香りの元祖であり、最高のものと考えるロベール・ピゲの「フラカ」を讃えた香りであり、あくまでも「フラカ」の物まねではない、チューベローズの生涯をひとつの香りにしてみようと試みたとんでもない香りです。

そのためマルは、ヘッドスペース分析により、チューベローズの一生に渡る香気成分を丹念に観察するところからすべてをスタートしたのでした。

ちなみに、1999年にセルジュ・ルタンスが「テュベルーズクリミネル」(クールなチューベローズの香り)を生み出すまで、ほとんどのチューベローズの香りは「フラカ」の延長線上にある香りでした。

ドミニクは現在、最もスキルの高い調香師のひとりだろう。そして、彼はいつも新しい考えに対してオープンだ。他のトップ調香師たちは、常に柔軟な考えを持っているとは限らない。

フレデリック・マル

新たなるチューベローズの香りの創造を、〝香りの世界におけるチョモランマだ!〟と考えたマルは、ドミニク・ロピオンに調香を依頼しました。その理由は、彼こそが、花の香りを創造することが最も巧みな調香師の一人だと考えていたからです。

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18ヶ月の歳月と、690回の試作の果てに生み出された香り

チューベローズの香りは、人生経験を積まないとマスターできない香りだと言えます。それは愛についての詩を作ることに似ています。

この香りでは、チューベローズのさまざまなファセットを万華鏡のように映し出すことにより、チューベローズの幻想を再現しています。

ドミニク・ロピオン

「信じられないほど本物に近いチューベローズの香りを作る」というこの香りの壮大なテーマは、2003年に、ドミニク・ロピオンがマルのもとに持って来た、開発されたばかりのチューベローズ・アブソリュート(IFF)からはじまりました。

このアブソリュートはインドで1年に1回、決まった時間帯にのみ採取されるチューベローズを最新の分子蒸留で、マルのためだけに抽出したスペシャルブレンドでした。

最初のころの試作品は、感覚に訴える必要のないルームスプレーとしては素晴らしいチューベローズの香りだったのですが、肌に馴染み、感情を語るものではありませんでした。

マルのアドバイスを受けて、ドミニクは、チューベローズの生涯の各ステージにおいて蒸発している成分をヘッドスペース分析で解析し、「写真的リアリズム(現実をありのまま描き出す)」の香水をパズルのピースを埋めるように作り出していったのでした。

そのため、天然のチューベローズの四つの側面を描き出しています。

  1. 太陽のような側面・・・オレンジブロッサム・アブソリュートサリチル酸メチルの使用。
  2. 葉を含めたグリーンな側面・・・マルがパリに住んでいたとき、毎週お花屋さんからイタリアのチューベローズを配達させていました。そして、ドミニクの試作品と香りを比較した際、大量のグリーンノートが必要だと感じました。しかし、非常に興味深いのは、その事実に気づくのに1年かかったということです。
  3. セクシャルな側面・・・カンファーにも似た香気を放つシネオール(別名ユーカリプトル。ユーカリを構成する香りのひとつ)をユーカリ・アブソリュートでさらに強調。
  4. フルーティーな側面・・・ラクトンをメロンとココナッツで強調することによって。
大量のグリーンノートが必要だと感じたきっかけは、マルが異母姉妹の結婚式でサントロペに行った時のことでした。フレッシュなガーデニアを母の庭から採り、ラペルに挿しました。そして、マルの隣に座った女性が扇子をあおぐと、そのガーデニアの香りがマルの顔にまで飛んできて、マルは30分もの間、ガーデニアのグリーンノートがいかにして働くのかを考えるきっかけになったのでした。やがて、式の最中に教会から抜け出し、ドミニクに「君がここに何を入れるべきかが分かった!」と電話したのでした。

累計690回もの試作が行われ、18ヶ月かけて調香されたこの香りのために、フレグランス史上最高のクオリティの天然のチューベローズ・アブソリュート(50%の高濃度)が使用されました。

ちなみに690回の試作とは、フレデリック・マルのフレグランスの中でも記録的な回数でした。それは香りの組み合わせを確認するための作業ではなく、ほとんどは、無駄な香料を削ぎ落としていくための作業(でありながら、香りの持続とバランスを保つため)に費やされていました。

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天国と地獄を引き寄せるチューベローズの香り

©FREDERIC MALLE

偉大なる香りに共通しているのは、矛盾を具現化することに成功しているということです。

フレデリック・マル

私は彫刻家や建築家のように香水を生み出すという考え方が好きだ。天然香料で構築することを科学的に研究し、その核心に向かっていくと、突然、魅了されるような美しさが現れるのです。その瞬間、私は天にも昇る思いになるのです。

ドミニク・ロピオン

ツンと澄ましている美女を遠巻きに眺めながら、「ああいう美人は嫌いです」と言っていた男性が、思いがけず、彼女から笑顔を振りまかれた瞬間に、その美女の魔性にやられてしまう感覚。

気品があり、扇情的で、野生の本能で生きているような恐ろしさもあり、男を蕩けさせる甘さもある、そんな〝填まり込んでしまうと、骨の髄までしゃぶりつくされてしまう〟天国と地獄を引き寄せる美女の香り。このチューベローズをそんな美女が身に纏うと、世界は明らかに良い方向に進まない気がします。

ドミニク・ロピオンが、私が調香した中で、「エレガントでありながら、最も官能的な花の香り」と断言したこの香りは、朝露にきらめくベルガモットが苦々しく弾け、砕かれた葉や茎のようなフレッシュグリーンに包み込まれるような、透明感からはじまります。

すぐにユーカリとメロンというこの香りのチューベローズの共犯者が登場します。

バナナのようなイランイランが到来する中で、メロン(オスマンサスのようでもある)が、フルーティーな側面を優しく照らします。一方で、現われしジャスミンに対して、ユーカリは、アロマティックなアクセントによってグリーンノートのみずみずしさを演出してゆきます。

舞台は整えられました。いよいよ壮大なるチューベローズの光臨となります。グリーンノートとカンファーとサリチル酸メチルが結びつきながらも、キャンディのような甘ったるさが出ないように細心の注意が払われています。

そこに、オレンジブロッサム・アブソリュートが加わることにより、ユーカリによるグリーンノートの多面性がチューベローズを支配するようになるのです。この香りの天才性は、ユーカリこそが、本当の魔性の源であるところにあるのです。

そして、メロンとココナッツとムスクが、チューベローズに、母性の象徴ともいえるミルクの側面を開花させながら、肌の中にゆっくりと溶け込んでいくように篭絡していくのです。マルは、これを身に纏うと女性はこう言いたくなるはずだと言っています。

さぁ来て、私にキスしてちょうだい」と。まさにこの最後の言葉のためにある香りです。

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キャンディス・バーゲンとシャロン・ストーン


ちなみにフレデリック・マルにとってのこの香りのインスパイア源は、叔母で女優のキャンディス・バーゲン(1946-)でした。1971年に彼女がジャック・ニコルソンと競演した『愛の狩人(カーナル・ナレッジ)』こそが、この香りの解説書なのです。



そして、フレデリック・マルがこの香りから連想するのは、「金髪で、洗練されていて、カリフォルニア風で、性的な魅力を隠そうともしません」とマルが表現した『氷の微笑』(1992)のシャロン・ストーンです。

ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「カーナル フラワー」を「きらめくフローラル」と呼び、「カーナル フラワーのトップノートは幸福感にあふれたすばらしいもので、健全な俗っぽさのチューベローズと、豊かで誘うように新鮮なジャスミンの間で、完璧に計算されたフローラルのアコードがきらめいている。」

エレナとは違い、ロピオンは古典的な作風の調香師で、基調の作りが非常に堅固で、持続性があり、豊かで、合成香料でしっかりと支えられている。つけたての最初の突風がおさまると、カーナル フラワーはおもしろいことに、忘れ去られようとしている80年代の大作である「イザティス」(ジバンシィ)や「ビザーンス」(ロシャス)へと近づいていく。真面目で贅沢で一日中香りの続く、名人の作品。」と4つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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香水データ

香水名:カーナル フラワー
原名:Carnal Flower
種類:オード・パルファム
ブランド:フレデリック・マル
調香師:ドミニク・ロピオン
発表年:2005年
対象性別:ユニセックス
価格:10ml/10,890 円、30ml/27,720円、50ml/37,290円、100ml/53,130円
販売代理店ホームページ:ラトリエ デ パルファム


トップノート:ベルガモット、メロン、ユーカリ
ミドルノート:イランイラン、ジャスミン、チューベローズ、サリチル酸メチル
ラストノート:チューベローズ、オレンジブロッサム、ココナッツ、ムスク